「PTAやめます」と言ったら「子どもに及ぶ不利益リスト」を読み上げた校長、教委には「誤解」とごまかす

校長は、PTAを退会すれば悪評が立ち、地域で義父の立場が悪くなることも示唆した(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

 加入届も整備されたし、個人情報の取扱い規則もあるし、任意加入はもはや当たり前――。都市部などでは、このように法令を遵守し、適正な運営をするPTAもだいぶ増えてきました。

 しかし一方では、いまだに全員自動強制加入(=個人情報保護法例に違反することで実現)を前提に、「やめたら子どもがこんなひどい目に遭う」と脅すPTAも残念ながら存在しています。

 しかも驚くことに、PTAに学校施設の利用を許可する立場の校長が「非会員の子どもに及ぶ不利益」を自ら是認し、退会を妨害した悪質な例も。

 昔の話ではありません。今回お伝えするのは、昨年末から今年の春にかけて、ある保護者が実際に経験した話です。

*義父が嫌がらせを受ける可能性も示唆

 2018年暮れ、ある地方都市の公立小学校に子どもを通わせるSさんが委員会の集まりに出ていたところ、来年度の本部役員を決めるクジ引きが急に始まりました。

 混乱しながら引いたクジは、みごと「当たり」。パニックになりながら、その場にいた会長に「引き受けられない」と伝えたところ、「これはあくまで候補。まだ決まりではない」と言われ、ひとまず引き下がります。

 しかし年が明けたある日、子どもが学校から「PTA新本部役員の皆様へ」という手紙を持ち帰ってきました。「候補」のはずが、いつの間にか本部役員に決まっていたのです。

 慌ててプリントに書かれた連絡先に「お引き受けできません」とメールを送ると、「そうはいきませんので、会長と話してください」という返事が。

 そうはいかないとは、どういうことか――。Sさんは夫婦ともフルタイム勤務で、夫は年中出張続きです。Sさんは持病も抱え、来年度は手術の予定もあります。PTAのためにまで仕事を休んでいたら、解雇されてしまいます。

 悩んだ末、SさんはPTAを退会することを決め、会長に手紙を書きその旨を伝えました。

 返信を待っていたところ、1週間ほど経ったある日、学校から電話が。かけてきたのはPTA会長ではなく、なぜか校長でした。

 校長いわく「会長から、あなたがPTAをやめたいと言っていることを聞いた。理由を聞かせてほしい」。PTAは任意で参加する団体ですから、退会理由を他人に説明する必要など本来皆無です。校長は「任意」の意味を知らなかったのでしょうか。

 やむなくSさんは、本部役員にされた経緯や、引き受けられない個人的な事情を説明しましたが、校長は聞き流したのみ。そして「PTAを退会するのはよいが、お子さんがかわいそうなことになるので、やめてほしくない」と告げます。

 “かわいそうなこと”とは何なのか。校長は「会長から受け取った」という書面を読み上げ始めました。そこにはPTAを退会した場合に、Sさん親子に及ぶ不利益が列挙されていました。特に驚かされたのは、以下の2点です。

1「PTAが外部講師を招く事業(授業時間中に実施)に子どもが参加できなくなる」

2「子どもが卒業記念品を受け取れなくなる、実費払いも不可」

 これらは明らかに、問題のある内容です。1は学校の授業時間中に行われるイベントから子どもを排除することを意味し、子どもの学習権を侵害するものです。まともな校長であれば、そのようなことは決して認めないはずです。

 2についても問題です。筆者もこれまで何度も伝えてきた通り、PTAは会員家庭向けのサービスを行う団体ではなく、学校に通うすべての子どものための活動を行う団体です。親が会員でも非会員でも、子どもは同様に扱うのが原則です。

 それをもし「ずるい」と考えるなら、校長は卒業記念品のお金の出どころをPTA会費ではなく、卒業対策費など学校徴収金(全保護者から徴収する)に切り替える必要があるでしょう。校長は、それをできる立場にあるのです。

 PTA問題にも詳しい憲法学者の木村草太さんは、「学校施設は学校教育のためにあるので、学校側が会員限定サービス団体に施設を優先的に利用させるのは、学校教育法に違反していることを管理者が認識する必要がある」と話しています(NHK「ニュース シブ5時」5月28日放送より)。

 校長はさらに、SさんがPTAをやめたら悪評が広まって、義理の父親が地域で嫌がらせを受ける可能性までちらつかせました。

 話は平行線のまま、40分が経過。ようやく校長が電話を切ってくれたのは、夜の20時をまわった頃でした。食べかけだった夕飯はすっかり冷たくなっていました。

*教育委員会による迅速で適切な対応

 翌日、Sさんの子どもは学校から、校長が電話で読み上げた退会者向けの文書を持ち帰ってきました(発行はPTA会長名)。そこには前述のとおり、子どもが授業の一部を受けられなくなることなどが明記されていました。

 Sさんはこの文書を添えて、県の教育委員会に問い合わせます。同じ日にPTAの退会届も2部作成し(校長と会長宛)、翌日子どもに持たせました。

 教育委員会から返信が来たのは5日後。最初は県の教育委員会から、翌日には市の教育委員会からメールが届き、校長にヒアリングを行う旨を伝えてくれました。

 市教委の動きは迅速でした。同日中にヒアリングの報告メールが来ましたが、校長は市教委に対し、説明不足で誤解が生じたという説明でごまかしたようです。

 さらに5日後。子どもが学校から、校長の手紙を持ち帰ってきました。そこには「電話でも話したように、親がPTA会員かどうかによって、子どもが不利益を被ることはない」という言葉が。正しい対応ですが、校長は電話では、真逆のことを言っていました。

 またSさんは退会届も出しているのに、これについては完全にスルー。手紙はすべて、SさんがPTAを継続することを前提に書かれており、「会長が役員をしなくてもいいと言った」という言葉もありました。

 これは一体、どうしたものか――。Sさんは再び悩みます。ここまでのやりとりで胃腸を壊し、体重は既に3キロ落ちています。筆者はこの春Sさんに会いましたが、もともと線の細い人です。3キロの体重比率は、彼女にとって決して小さいものではありません。

 Sさんは、ひとまずのところ、学校やPTAとこれ以上やりとりすることをあきらめました。もし再び生活を脅かすような強制を受けた際には、「退会届を出している」ことを伝え、断固戦うつもりだということです。

*録音や文書の保管を忘れずに

 ここまで酷いPTAや校長は、もはやごく少数だと信じたいです。とはいえ、最近実際に起きた話でもあります。地域や学校によっては、まだまだこんなことは起きているのかもしれません。

 運悪くこのような校長にあたってしまった場合は、Sさんのようにすぐ、教育委員会に連絡することをおすすめします。Sさんからは「録音や文書など、証拠となるものを保管しておいてください」というアドバイスが。

 黙っていれば、残念ながら、またほかの誰かが同じ目に遭うでしょう。

詳しい経緯はSさん本人がブログに綴っています。興味のある方はこちらをご覧ください「power5bbaのブログ」