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保護者会を欠席した人に「PTAの委員をやってください」と保護者や先生が電話することは許される?

大塚玲子ライター
PTAが直接個人情報を集めているか学校が第三者提供の同意を得ていればOKですが…(写真:アフロ)

 母親たちの心をざわつかせる春のクラス委員決め。PTAの加入や活動は本来任意ですが、「1クラスから必ず何人出す」「6年間のうちに必ず1度はやること」など強制を求める不文律があるため、毎年泣く人が出ます。

 そのため委員をやらなくて済むように、あるいは委員決めの教室の雰囲気が耐えがたくて、保護者会を欠席する人も大勢います。

 すると役員さんや担任の先生が後から欠席者に電話をして、「クジで○○委員に決まったのでやってください」「○○委員を引き受けてもらえませんか?」などと連絡することになりがちですが、これはじつは法令に背く可能性があります。

 入会届を整備してPTAが直接保護者の個人情報(連絡先)を収集している場合や、学校がもつ個人情報をPTAの用途で使うことについて各保護者の同意が取れている場合、その連絡先に電話しても問題ないですが、そうでなければ、学校は自治体の個人情報保護条例に、PTAは個人情報保護法に違反してしまうことが考えられます(*1・2)。

 先生はPTA会員でもあるので問題ないのでは? と思われるかもしれませんが、学校がもつ個人情報を保護者の同意なくPTAの用途に使うのであれば、役員さんが電話するのと同じことです。

 「そんなことを言ったら“逃げ得”になって、みんな委員決めを休んでしまう。出席した人が損をするだけではないか!」

 そうお怒りの方もいるかもしれません。これまでやりたくないのに仕方なくやってきた方たちのやるせない気持ちもわかるので、心苦しいですが、しかしPTA活動は本当は義務ではなく、保護者会に出席していようがいまいが、無理にやらせていいものではありません。

 「委員が決まらなかったら、どうするんだ?」と心配されるかもしれませんが、先日の記事(*)にも書いた通り、委員が出ないときは「ゼロ人」でもいいのです。

 「“例年通りの活動”をするために人数をかき集める」のでなく、「集まった人数でできる活動をする」というふうに発想を転換をすれば、成立するはずです。

 委員会制をやめて、プロジェクトごとの手挙げ方式にするPTAも、少しずつではありますが確実に増えています。

 話を聞くと、学校がもつ個人情報をPTAの用途で無断使用したために、保護者が教育委員会等に問い合わせて大問題になることもときどきあります(そういったことが起きた自治体では入会届や個人情報の取り扱いが整備されている傾向があります)。

 どうかこれまでの委員決めのやり方を、この春こそ、見直してもらえたらと思います。

 先生たちも、これまでPTAの委員探しにあてていた時間を、子どもたちに直接役立つことに使えるようになるはずです。

  • 第十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
  • 第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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