なぜ必要? 保護者の要望を伝える「特別支援学校のPTA」活動

「陳情団体としての機能」があるといいます(ペイレスイメージズ/アフロ)

 PTAは今でも本当に必要なのか? 昨今は「PTA不要論」も俎上に上げられ、もう存在意義がないのでは、という声も聞かれます。

 そんななか、筆者が最近あちこちで耳にするのが、「PTAは行政や学校に対して、保護者の要望をまとまったものとして伝えるために必要なんだ」という意見です。

 これについては、少々考えるところです。

 正直な話、筆者がこれまで取材してきた実感として、いわゆる一般の公立小中学校のPTAで、保護者の要望をまとめて行政や学校に伝える活動をしているところは、現状あまりありません(※1)。むしろ、学校や行政のサポートに徹する姿が断然多く見られます。

 ただし筆者自身、PTAではないのですが、学童保育の父母会では、保護者の意見をとりまとめて行政等に交渉する場面に居合わせたことがあり、それはそれなりに役立っていたのでは、という印象があります(有志でも可能とは思いますが)。

 同様の印象を抱くのが、特別支援学校のPTA、あるいは保護者のつながりについてです。学童保育と同じように特別支援学校も、制度や予算が整っていない部分がまだまだ多いため、保護者がある程度数の力をもって声をあげないと、改善しづらいところがあるようです。

 特別支援学校のPTAは、通常校のPTAとどんなところが違うのか? 今回、都内にある特別支援学校でPTA活動を経験してきた広田さん(仮名)のお話を聞かせてもらったので、あくまで一例としてですが、紹介させてもらいます。

*「親にとっての情報源」という側面

 先に基本的な説明をしておきましょう。「特別支援学校」というのは、ざっくり言うと、障害をもつ子どもたちが学ぶ場です。昔は「養護学校」と呼ばれていました(※2)。

 たとえば東京都の場合、「視覚障害」「聴覚障害」「肢体不自由」「知的障害」「病弱」という5区分の特別支援学校があります。全国的には「小中高一貫」が多いですが、東京都では一時期入学者数が急増したことなどから、「小中」と「高等部」に分かれていることが多いそう。

 広田さんはお子さんが自閉症で、東京都内にある「知的障害」の特別支援学校のPTAをいくつか経験してきました。

 「通常の学校のPTAと一番違うのは、特別支援学校では高等部卒業後の子どもの“行き先”を保護者が考えなければならず、PTAはそのための情報提供を行っている点だと思います。

 たとえば知的障害の場合、卒業後の“行き先”は大枠で3つあります。ひとつは障害者雇用枠での企業就労、もうひとつは就労支援(障害者福祉サービス)、そして生活介護事業所(就労はしない、福祉施設)です。どの“行き先”を選ぶか、子どもだけでは決められないため、親がサポートします。親は子どもの力や状況を見ながら、自分で施設を探したり、実習に付き添ったり、企業と相談したりしなければなりません。

 その地域に、どんな施設や事業所があるのか? 障害者を受け入れてくれる企業があるのか? 学校(進路指導部)もいろいろ手助けはしてくれますが、実際に自分の目で見ないとわからないこともたくさんあります。そこでPTAが、さまざまな進路先の“見学会”を主催しています。

 個人で見学を申し込める施設や事業所等も徐々に増えていますが、まだ複数の保護者がまとまらないと対応してくれないところもあるし、保護者同士の貴重なクチコミ情報も得られるので、PTAで見学を希望する人は多いですね。

 そんな背景もあるので、特別支援学校では通常校よりもPTAの必要性を感じている保護者が多いのではないかと思います」

 いわゆる通常校の保護者たちも、子どもの進路や受験についてはいろいろ調べる必要に迫られますが、ネットで検索したり、市販の本(受験案内)を購入したりすれば、まあまあ簡単に情報を手に入れることができます。

 これに対し、特別支援学校の場合は、卒業後の進路に関する情報が少なく、また入手しづらいため、PTAなど親のネットワークが提供する情報が、より大きな役割を果たすのでしょう。

*「要望をあげる団体」としての側面

 そもそも障害者の世界では、親たちがまとまって要望をあげなければならない場面がたくさんありました。そのため、ひとつの団体ではすべてを担いきれず、教育行政についての要望はPTA(P連)、福祉行政についての要望は「親の会」(手をつなぐ会、育成会)、という大まかな住み分け、分担があるのだそう。

 最近実現した要望としては、たとえば「放課後等デイサービス」があります。これは放課後に障害児を預かり、療育してくれる学童のようなもの。親の会などの運動により、2012年にようやく仕組みが整えられました。

 「それまで障害児は、学校と家以外に居場所がありませんでした。学童のなかには“加配”という形で、自治体からお金を受け取って障害児を預かるところもありましたが、ちゃんと面倒をみてくれないことが多かったため、実際にはほとんど預けられませんでした。ですから、保護者はなかなか働きに出ることもできなかったわけです。

 そこで親の会などが努力してきた結果、『放課後等デイサービス』という仕組みができ、ようやく障害児の親も就業が可能になってきたんです」

 いまもまだまだ、親たちが要望をあげなければいけない課題はあります。たとえば「夕方支援サービス」。子どもが高校にいるときまでは「放課後等デイサービス」で夕方も預かってもらえますが、卒業後、生活介護事業所や就労支援に進んだ場合、15時位には家に帰されてしまいます。その後の居場所がないため、親は仕事をやめざるを得なくなることがあります。

 そこで親の会が声をあげ、最近は「夕方支援サービス」として、15時以降の2、3時間、障害のある人を預かる事業を行う自治体もちらほら出てきました。今後はこのサービスを各地に広げていく活動が、親の会のなかで重みを増すだろうと、広田さんは予想しています。

 他方、教育行政についての要望は、特別支援学校のP連(各校のPTAの連絡組織)が各校から上がってきた陳情をまとめて、毎年教育委員会に交渉しているということです。

 「それこそ“トイレのドアを直してください”から“もう少し知識や力のある先生をよこしてください”まで、各校からいろんな要望があがってくるので、P連はそれらをまとめて教育委員会に伝えて交渉し、回答をもらっています。

 P連は陳情団体であり、啓蒙団体でもあるんです。さまざまな課題が全部解決されてしまえば、こういった活動は不要になるのですが、課題が残っている限りは、おろそかにできません」

*障害の知識を子どもにも伝えてほしい

 話を聞くと、障害児の親たちは、通常校の親たちと比べ、まとまって活動をする場面がとても多いことに驚かされます。

 P連だけでも、障害の種類ごとのP連(例/全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会)もあれば、各種合同のP連(例/東京都特別支援学校PTA連合会)もありますし、そのほかに、親の会(例/東京都手をつなぐ親の会)とか、その全国組織(全国手をつなぐ育成会連合会)など、一体いくつの会があるんだろう? と思うほどです。

 いまはどれも必要なのでしょうが、それにしてもあまりにも多いので、親たちの身体がもつのか? 心配になってしまいます。

 ただしやはり、必然性の薄い活動は少ないようです。たとえば、通常校のP連でよく聞く“バレーボールサークル”。やはり、特別支援学校の親たちには「そんなことをやっている余裕はない」ため、聞いたことがないそう。(※PTAにもよるようです)

 最後に、今回のテーマからはやや外れますが、特別支援学校の親たちが、通常校や通常級の親にしてほしいと感じることは何かあるか? と広田さんに尋ねたところ、「障害を知って、お子さんに教えてほしい」とのことでした。

 「もし健常のお子さんを育てている方にお願いするとしたら、いろんな障害についての知識を得て、それをお子さんに教えていただけると、ありがたいですね。よく特別支援学級の子が、交流級(通常級の子どもとともに過ごす時間)に行ったとき、いじめられる話などを聞くので。

 一口に障害といってもいろんな子がいて、それぞれに特徴があり、一人ひとりにできること・できないことがあります。たとえば自閉症の子が、急にわーっと騒ぐのはなぜか? “感覚過敏”という特徴のことを知って、お子さんにも教えてもらえたら、いじめも防げるかもしれません。

 特別支援学校や支援学級だからといって、必要以上に優しくされたり、過剰に特別扱いされたりはしたくないし、かといって排除もされたくない。必要なのは、“理解と受容”、というところですかね」

 なるほど、今後、筆者も心がけていきたいと思います。

*制度や仕組みを整えていくために

 今回話をうかがって考えさせられたのは、保護者がまとまって要望することの意味と、同時に発生する保護者の負担です。

 いわゆる一般の学校のPTAでは、もはやこんなふうに集団で要望を出さなければいけないような共通テーマは、そうそうないように思います。それは戦後、PTAなどを通して行政にかけあい、学校環境を整えてきてくれた先達たちのおかげでもあり、ありがたい恩恵だと感じます。

 特別支援学校では、現段階ではやはりまだ、PTAや親の会などの活動が必要なのでしょうが、でも早くそれが不要になるくらいに、あるいはせめてもう少し組織数が減らせるように、制度や仕組みが整っていくことを願います。

  • ※1 PTAが学校や行政に要望をあげる際の問題点については、共著である『ブラック校則』(荻上チキ・内田良編/東洋館出版)11章「保護者から見た校則」に書かせてもらっています
  • ※2 いまも「養護学校」という名称を使うところも一部にあるようです