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注目ドラマ『ぎぼむす』 元バリキャリの専業主婦に学ぶ“PTAの仕事のリストラ方法”

大塚玲子ライター

 今期注目のドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系火曜22時)。先週7月24日放送の第3話では「PTA問題」が取り上げられ、特に大きな話題を呼びました。

 綾瀬はるか演じる主人公・亜希子(元バリキャリ、退職して現在は専業主婦)がPTAに立ち向かい、役員らに代わって運動会の運営をとりしきるというストーリーだったのですが、現在のPTAや学校が抱える問題点が大変よく描かれていました。

 なかでも「運動会という学校行事においてPTAが何をしているか」という具体的な描写が丁寧で、またその業務をスリム化しようとする亜希子の試みには学ぶべき点が多くありました。ドラマの本筋とはやや離れますが、ふだんスポットがあたりづらい部分なので、今回はこの点を掘り下げてみたいと思います。

 たとえば、駐輪係の問題。駐輪スペースがある学校なら、自転車で来た保護者をそこへ誘導し自転車を整理する係が、駐輪スペースがない学校であれば、徒歩で出直してきてもらうよう保護者に伝える係が必要となるのですが、この人員をどう確保するかで悩んでいるPTAは多いでしょう。

 運用の仕方にもよりますが、この係になった保護者は、我が子の競技をちゃんと見られないこともあります。

 ドラマのなかで、亜希子は「そもそも公立の学校なんだから、自転車を禁止にすれば、係が不要になるのではないか」と指摘します。すると役員の母親が「事前に自転車は禁止だとお手紙を配っているが、それでも自転車で来てしまう保護者がいるから、係はやむを得ないのだ」と反論するのですが、この問題は「PTAあるある」でしょう。

 筆者も昔、運動会のときに校門の前に立ち、自転車で来た人に帰ってもらう係を担当したことがありますが、たしかに禁止をものともせず自転車で来てしまう人はたまにいました。放っておくとヘンな場所に駐輪してしまい近隣住民から学校にクレームが入ります。そのため、徒歩で出直してもらうよう伝える係が必要だったのです。

 こういった対応は学校や先生が行うべきだ、という声もありますが、それは違うでしょう。基本的に、学校がPTAの手伝いをあてにするのはよくないと思うのですが(PTAは社会教育関係団体です)、ただしこういった「保護者向けの行事で、保護者のために発生する仕事」については、学校や先生にやらせるのはおかしいと感じます。

 そこまで学校の仕事になるのなら、学校は保護者に遠慮などせず、運動会ごととりやめるといいでしょう。亜希子は運動会の最中、応援席を譲らない保護者への注意なども行っていましたが、こういった仕事も同様です。

 「じゃあやっぱり、PTAや保護者の手伝いは絶対必要なんだね」と思われるかもしれませんが、でも、それもちょっと待ってほしいのです。保護者がやってもいいですが、業務によってはほかのやり方もあるかもしれません。

 たとえば、このドラマで亜希子は「自転車で来た人へのペナルティを徹底する」方法を考え、警官のコスチュームをつけた人物を学校の近くに立たせ、自転車で来た保護者をスムーズに帰らせることに成功します。ここでは「警官もどき」でしたが、本当に警察の協力を得たっていいでしょう。

 PTAは日頃からよく不審者パトロールや子どもの安全見守りなど警察がするような仕事をやっており、みんな「それが当たり前」と思っていますが、違法駐輪の取り締まりは警察にお願いしてもおかしくありません。ドラマで描かれていたように、警官であれば一人いるだけで大きな威力を発揮するでしょう(ドラマでは警官でなく「警官もどき」でしたが)。

 わたしたちはどうも「学校か、保護者か」の二択で物事を考える癖がついています。「学校がやることではないから、保護者がやるべきだ」とか、「学校にはお金がないから、保護者が出すべきだ」などといった発想になりやすいのですが、冷静に考えれば、第三の選択肢もあるのです。

 上記のように警察の協力を得るというのも一つの手ですし、あとは実際に、地域住民の方にご協力いただいた、シルバー人材センターから人を派遣してもらった、といった例もあるのを聞いたことがあります(なお有償の場合は公費で出せるとベストでしょう)。

 

 こんなふうに、みんなが「PTA(保護者)がやらなければいけない」と思い込んでいることを、別の発想でクリアできないか考えてみることは、あらゆる場面で大切だと思うのです。

 ドラマでは、警官(もどき)を使い、手荷物検査のマシンを導入した亜希子のやり方を、役員たちは「ズルだ!」となじっていましたが、なぜそれがズルなのか。本来の目的を考えることを忘れ、「前例どおり」を目的化してしまうから、より合理的なやり方が「ズル」と言われてしまうのでは。(なお、現実の運動会で手荷物検査までは不要と筆者は考えます)

 今回はドラマのほんの一部分(しかも本筋外)しか取り上げられませんでしたが、ほかにもPTAを考えるうえで、是非多くの方に見てもらいたい要素が盛りだくさんでした。

 『義母と娘のブルース』第3話は、今日(31日)の21時59分までは無料で視聴できるので、興味のある方はぜひ見ていただければと思います。なお第4話は、同日22時から放送されます。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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