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PTAで考える「忖度」問題 良きに計らう保護者の側だけが悪いのか?

大塚玲子ライター
忖度する側にも、される側にも、罪があるはずです(写真:アフロ)

 明確な指示の有無にかかわらず、しもじもの者たちが「えらい人」の意向を汲み、良きに計らってしまう――。国家レベルで再び大問題となっていますが、忖度はPTAにも大変よく見られる現象で、しばしば現場の足かせとなっています。

 PTAにおける忖度はさまざまな場面で見られますが、とくに多いのは、保護者から学校長、OB・OG(元役員、町内会の重鎮だったりもする)、教委(教育委員会)やP連(PTA連絡協議会)に対して行われるものでしょう。※

 たとえばあるPTAでは、広報紙の発行回数について、委員会の中で「年3回から1回に減らそう」という話になりましたが、役員さんたちは「いつも口をはさんでくるOGのAさんが、絶対に反対するはず」と忖度して、却下していました。

 ところが後日、このAさんに直接会った際に意見を聞いてみたところ、あっさり賛成してくれたそうです。

 これはたまたま、忖度「する側」と「される側」の意図が異なっていたケースですが、実際には、両者が一致するケースのほうが多いでしょう。

 よく見られるのが、地域や学校の手伝い、講演会などにおける「強制動員」です。

 校長先生や教委、P連等から「〇人くらい、保護者に来てほしい(行ってほしい)」と言われると、PTA役員さんたちは忖度して、「〇人必ず動員する」と解釈し、一般会員の母親たちに対して「この日は絶対、来てください!」と強制動員してしまうことがよくあるのです。

 「会費の値下げ」や「加入届の配布※」など、PTAの予算減につながるような話も、役員さんが学校(校長先生)に忖度して反対するケースは、少なくないように思います。(※加入届を配布すれば強制加入ではなくなるので、会員減=つまり学校に入るお金が減ることにつながる可能性があります)

 なお、難しいことに、当の役員さん自身は、自分が忖度していることに気づいていないことも多く、そのためにより問題が見えづらくなっている面も感じます。

*する側にも問題はあるが

 こんなふうに、PTAを取材していると、忖度が生む問題について考えさせられることがよくあります。

 たしかに忖度する保護者の側も、悪いとは思うのです。「必ずこうしなければいけない」と勝手に解釈して、且つそれを他の保護者に押し付けてしまうために、パートを休んで食い詰めるなど、苦しむ保護者が出てきてしまうのです。

 しかしやはり、より罪が大きいのは、「忖度させる側」ではないのでしょうか。

 たとえ、学校や教委等に強制動員の意図がないとしても、「何人来てほしい」と言われれば、保護者は「必ずその人数を調達(強制動員)せねば」と思ってしまうのです。

 なぜなら、学校や教委等は、保護者に対してそのような力をもっているからです。そしておそらく、学校や教委等は、そのことを本当はよくわかっているはずです。

 それを「いや、それは保護者が勝手にやっていることなので……」と言われてしまうと、なんとも辛い気持ちになります。

 忖度する側も、もちろんよく気をつけなければなければなりませんが、される側、つまり力をもっている側は、そのことにより自覚的であるべきではないでしょうか。

  • ※ 学校のほうも、地域、OB・OG、保護者等に対して忖度していることはあります(相互忖度)
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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