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要介護の母親のケアマネジャーが頼りない!「穏便に変更」するためのとっておきの言葉

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
(提供:イメージマート)

 介護保険で、どのようなサービスを、いつ、どれだけ利用するかの計画を「ケアプラン」と呼びます。要介護1~5の場合には、通常、ケアマネジャーという介護の専門家に作成してもらいます。作成時だけでなく、その後も、ケアマネジャーとは二人三脚で介護を行うことになります。しかし、頼もしい味方のはずが、しっくりいかず、ストレスとなってしまうことも……。

お願いしても耳を傾けてくれない

 トウコさん(50代)の近所で暮らす母親(80歳)は、「要介護2」です。デイサービスを利用していますが、他の利用者と人間関係のいざこざがあったらしく「行きたくない」と休んでばかり……。ケアマネジャーに、別のデイサービスに変えてほしいと相談するのですが、「もう少し様子をみましょう」と取り合ってくれません。「『もう少し』って、もう半年になります。そのくせ、要らないと言っているのに、福祉用具をおしつけてきたり……」とトウコさんはため息をつきます。

 筆者はそのケアマネジャーと話したわけではないので、実際のところはわかりませんが、とにかくトウコさんはイライラしていました。

ケアマネジャーは変更できる

 親や配偶者の介護を行うためには、ケアマネジャーと話し合いながら進める必要があります。多くのケアマネジャーは、知識も気持ちも備えた頼りになる存在です。ただ、なかには「んっ!?」と首を傾げたくなったり、イライラさせられたりするケースも……。

 家族の要望に耳を傾けてくれない、知識が乏しいなど、信頼関係を築くことが難しい場合は、文句を言っていてもストレスがたまるばかりなので、思い切って変えるのも手。ケアマネジャーは変更可能なのです。

スムーズに変更するための言い方

 ケアマネジャーを変更する方法は、大きくわけて2種あります。

①同じ事業所に所属する別のケアマネジャーに変わってもらう。

②事業所ごと、別のところに変更する。

 まず、①の場合は、所属する事業所に連絡をして、別のケアマネジャーに変えてほしいと伝えます。

 けれども、「断る」とか、「変える」ということが、日本人の文化にはそぐわないのか、「言いにくい」という人が圧倒的に多い印象です。

 そんなときには、とっておきの言葉があります。「相性が悪くて」と言ってみましょう。それでも言いにくいときは、要介護者を“悪者”にして、「親(配偶者)がわがままで、相性が悪いと言うのです」と言えばいいでしょう。

 まだ言いにくいですか? それなら、頭に「一生懸命やってくださって感謝しています」とつければ、どうでしょう。

一生懸命やってくださって感謝しています。それなのに、本人(親、あるいは配偶者)がわがままで相性が悪いと言うので、別の方に変えていただけますか

 ケアマネジャーとは、福祉や医療の基礎となる資格を持っています。例えば、基礎資格が介護福祉士か、看護師かでは、知識や考え方などが異なるのは仕方ない面もあります。どちらが良い、悪いではなく、性格を含めて相性が生じるのは、ある意味、当然だと言えるでしょう。

事業所ごと変更したい場合

 事業所ごと変更したい場合は、最初に事業所を探したときのように、一覧表やクチコミなどで新たに居宅介護支援事業所を探します。そして、「現在ケアマネジャーを利用しているけれども変更したい」と相談します。利用の合意ができれば、新たなケアマネジャーから利用中の事業所に連絡して、手続きを進めてくれます。

 新たなケアマネジャーがみつからないときには、地域包括支援センターに相談しましょう。中立的な立場なので「〇〇さんが良い」といった直接的なアドバイスは期待できません。しかし、例えば「もう少し医療面に詳しいケアマネさんを希望」と相談すれば、看護師出身のケアマネのいる事業所を教えてくれるでしょう。

 ケアマネジャーを変更しても、利用中のサービスはそのまま使えます。継続したい場合は、新たなケアマネジャーにそのように伝えましょう。

変更する場合に注意したいこと

 ケアマネジャーを変更するのは良いのですが、ドクターショッピングならぬ、ケアマネショッピングにならないように注意したいものです。よりよい介護を求めていろいろなケアマネジャーを渡り歩いても、必ずしも、自分好みのケアマネジャーに出会えるとは限りません。自分自身が過剰な期待をしていることもあるかもしれません。

 それにケアマネジャーが変われば、自分はもちろん、要介護者本人も、人間関係を再構築する必要が生じます。ケアマネジャーに対して希望があったら、まず冷静に伝えてみることが大事です。コミュニケーションを取る努力をしても、やっぱり難しい場合は変更するのが良いと思います。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第2版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(共著,KADOKAWA)など。

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