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Bリーグのベスト5、新人賞はどうなる? 各賞の候補と「推し」を考えた

大島和人スポーツライター
ベスト5の候補に挙がる富樫勇樹(左)と馬場雄大(右)(写真:松尾/アフロスポーツ)

4つの賞が投票で決まる

Bリーグの2018-19シーズンは、4月20日(日)にレギュラーシーズンの全日程を終了する。その後はいよいよ「令和最初の王者」も決まるポストシーズンの開幕だ。B1チャンピオンシップシップ、B1残留プレーオフは4月26日(金)からスタートする。

B1のファイナル(決勝)は5月11日(土)に開催される。5月15日(水)には都内で「B.LEAGUE AWARD SHOW」が行われる。

そこで発表されるのが各賞の表彰者だ。選手、メディアなどの投票によって決まる個人表彰の項目は4つある。

(1)レギュラーシーズンベストファイブ

(2)ベスト6thマン

(3)ベストディフェンダー賞

(4)新人賞

2季連続で同じ5人が選出

最大の注目はMVP、ベスト5だろう。実は16-17シーズン、17-18シーズンはベスト5が全く同じ顔ぶれだった。

・ニック・ファジーカス(川崎)

・金丸晃輔(三河)

・比江島慎(三河/現栃木)

・田中大貴(A東京)

・富樫勇樹(千葉)

MVPは16-17シーズンがファジーカス、17-18シーズンは比江島慎だった。彼らは間違いなくBリーグを代表する選手たちだ。川崎ブレイブサンダース、シーホース三河、アルバルク東京、千葉ジェッツはリーグを代表するビッグクラブ。ただ千葉以外の3クラブは企業色が強く、旧リーグ時代の実績や知名度を引きずった人選にも思えた。

今季は千葉が東地区、新潟アルビレックスBBが中地区、琉球ゴールデンキングスが西地区を制している。いずれもbjリーグを経由した「叩き上げ」のクラブだ。特に新潟は川崎、三河という企業チームの名門を上回って中地区の頂点に立った。

インサイドの「主役」は新潟ガードナー

選考基準は「勝利への貢献」に尽きる。代表での活躍もBリーグに対する貢献で、そこは筆者の判断で加味している。各賞の候補として浮かぶ選手を挙げ、根拠を述べたい。まずベスト5だ。(※記録はすべて4月14日時点)

★C/PF(センター/パワーフォワード)

得点こそはチームにとって最大の貢献だ。ダバンテ・ガードナー(新潟)は1試合平均27.8得点を記録していて、2位以下を引き離している。リバウンドも1試合平均11.0本と高水準だ。

ガードナーは203センチ・132キロの巨漢センター。3ポイントシュートも打てるタイプだったが、今季は成功率が落ちている。ただポストプレーからの1対1は圧倒的で、スムーズなステップからゴール下に切れ込む上手さもある。中学時代まではポイントガードを務めていたというスキルがあり、直線的な突進ではなく「ズレ」を作ってから仕掛けていける。

ベスト5の選出は「チームを勝たせたかどうか」も材料になる。その点でも中地区制覇に貢献したガードナーの評価は上がる。したがってインサイドの一人目はガードナーを推したい。

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ガードナー選手(中央)写真=B.LEAGUE

数字に出ない貢献を重視する視点もある。昨季ならばA東京のB1制覇に寄与したアレックス・カークの総合的な働きはMVPに値した。千葉の快進撃はギャビン・エドワーズの献身性があってこそだろう。ライアン・ロシター(栃木)も得点、リバウンドの両面で高水準な記録を残し、なおかつリーダーとして存在感を見せている。

A東京、千葉、栃木は他にも得点を取れる選手がいるので、彼らのスタッツがどうしても抑えられている。しかしそういう事情を考慮しつつ、誰かを落とす必要がある。

インサイドの二人目は京都ハンナリーズのジュリアン・マブンガを挙げたい。ジンバブエ生まれ、アメリカ育ちで203センチ・106キロのパワーフォワードだが、ポイントガードのようにボールを運び、試合を作り、オフェンスのあらゆる部分に関わるこの男は型破りなオールラウンダーだ。

SNS上での審判批判など疑問符のつく行動もあり、セルフィッシュなプレイヤーと思われがちなタイプではある。しかし今季は得点ランク2位のディビッド・サイモンという相棒を得て、素晴らしいコンビプレーを見せていた。無謀に思えるロングシュートを涼しい顔で決めたりもする「異世界」の住人だ。

1試合当たりのプレータイムは平均38.3分でB1最長。8.6アシストはB1最多で、21.8得点とスコア能力も高い。それがマブンガの選考理由だ。

遠藤は守備とシュート力が光る

★SF/SG(スモールフォワード/シューティングガード)

昨季のMVP比江島慎(栃木)は間違いなく実力者で、日本代表でも活躍を見せていた。今季の前半はブリスベン・ブレッツでプレーし、Bリーグの出場試合が少ない。ベスト5は得点王、リバウンド王などと違い「51試合以上出場」のハードルはないが、今回は他の選手をチョイスしたい。

栃木は全体2位の勝率を記録しているが、遠藤祐亮の活躍が大きい。彼はセカンドチームからの叩き上げで、元々は守備を売りとしていたアウトサイドプレイヤー。今季は3ポイントシュートの成功率が45.7%でリーグ最高の数字を出し、シューターとして攻撃面の貢献が大きかった。その遠藤をまず「一人目」に推したい。

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遠藤祐亮選手 写真=B.LEAGUE

日本人最高シューターといえば何と言っても金丸晃輔(三河)で、今季も遠藤に匹敵する試投数と成功率を記録している。また彼はスリーを警戒されてもドライブ、ゴール下への飛び込みなど「他の選択肢」も持てるオフェンスの名手だ。1試合平均18.0得点はB1の日本人で最多でもある。ただ今季の三河が中地区3位に留まっていること、守備面の差を考え、この両者の比較では遠藤祐亮を優先する。

他にも候補は多くいる。安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)や川村卓也(横浜ビー・コルセアーズ)は得点という結果を残している。古川孝敏(琉球)や田中大貴、馬場雄大(A東京)も上位チームの主軸として欠かせない働きを見せた。

他にもライアン・ケリー(サンロッカーズ渋谷)を3番で起用すれば魅力的な陣容となるだろう。しかし「外国籍選手は2人以内」という選出の規定がある。

自分が見た試合の印象としか言いようはないのだが、田中をSF/SG枠の二人目に推したい。彼は勝負どころでしっかり決めるシューターであり、守備力が高く、全体を見た判断のできる選手。日本代表でも主力として活躍し、PGとして好プレーを見せた試合もあった。

富樫は千葉、代表で大活躍

★PG(ポイントガード)

素直に富樫勇樹(千葉)を推したい。「チームを勝たせられるPGがいいPG」ともいうが、千葉はB1全体の最高勝率を記録していて、1月の天皇杯も制した。また彼は日本代表の正PGでもある。MVP候補としても彼の名を挙げたい。

富樫は167センチの小兵で、守備面では千葉の高度な連携に助けられている部分もあるだろう。とはいえ攻撃のスキルはドライブ、パス、スリーポイントと非の打ちどころがなく、取ってよし取らせてよしの司令塔だ。英語が堪能で、コミュニケーションやリーダーシップも千葉の大きな助けとなっている。

他に日本代表の主将・篠山竜青(川崎)や並里成(琉球)、五十嵐圭(新潟)も候補に入るだろう。特に五十嵐は5月には39歳を迎えるベテランながら、今季は特筆すべき活躍を見せた。ただ「一人」を選ぶなら富樫だ。

★18-19シーズンBリーグベスト5案

・ダバンテ・ガードナー(新潟)

28歳 203センチ・132キロ C

・ジュリアン・マブンガ(京都)

29歳 203センチ・106キロ PF

・遠藤祐亮(栃木)

29歳 185センチ・88キロ SF/SG

・田中大貴(A東京)

28歳 192センチ・93キロ SF/SG

・富樫勇樹(千葉)

25歳 167センチ・65キロ PG

馬場は「途中出場」で大きな貢献

●ベスト6thマン

昨季は藤井祐眞(川崎)がこの賞を獲得しているが、今季は迷わず馬場雄大(A東京)を選ぶ。彼は57試合に出場して、そのうち47試合はベンチスタートだった。しかし1試合平均25.3分と十分なプレータイムを得て、10.6得点と先発以上の数字も記録している。

馬場は198センチ・90キロの体格を持つ日本代表のアウトサイドプレイヤー。抜群のスピード、跳躍力を持ち、スキルも高い。ベスト5に入れても良い活躍だったが、彼は「ベンチから出てきて流れを変える」「チームに勢いを与える」というシックスマンの適性を誰よりも持っていた。

●ベストディフェンダー賞

過去2季はアウトサイドプレイヤーから選出されていて、遠藤と橋本竜馬(三河/現琉球)がこの賞を獲得していた。守備のアグレッシブさ、泥臭さ、ブロックショットの迫力といった部分の印象で、カディーム・コールビー(秋田ノーザンハピネッツ)を推したい。206センチ・114キロのバハマ人PFだ。

拓殖大を中退した20歳の岡田がブレイク

●新人賞

新人賞の対象はリーグ登録2季目までなら、「1試合でも登録から外れている」「受賞歴がない」選手は選考の対象となる。寺園脩斗(三遠ネオフェニックス)のように、実業団などからプロに転じた選手に対する年齢制限もない。また大学在学中の特別指定などで初登録が22歳以下の場合、1季あたり30試合以下の登録なら新人賞の資格に影響しない。なお外国籍選手は今季から「対象外」と明文化された。

Bリーグは秋に開幕するため、4年冬の試験を終えた後にシーズン中のチームへ合流するケースが一般的だ。保岡龍斗(秋田)、森井健太(新潟)、杉浦佑成(渋谷)は有力な新人賞候補だが、いずれも16-17シーズン中にBリーグデビューを済ませ、17-18シーズンも半シーズンの「プロ生活」を送っている。

今のシーズンは「U-22」の特別指定選手が大活躍を見せた。吉井裕鷹(大阪エヴェッサ)、熊谷航(三河)、岡田侑大(三河)、盛實海翔(渋谷)といった顔ぶれである。ただし吉井は大阪学院大、盛實は専修大の現役大学生。選出には「4/8時点で契約解除/満了、特別指定選手の活動期間終了選手は除く」という条件があり、既に大学チームへ戻った吉井と盛實は投票対象から外れる。

個人的にインパクトが強かったのは三河のガードコンビだ。熊谷、岡田のふたりは後半戦からチームのファーストチョイスとなり、チャンピオンのシップ出場圏内への浮上に大きく貢献した。

大東文化大をこの3月に卒業した熊谷は、172センチのポイントガード。3月16日の千葉戦で16得点を挙げる活躍を見せ、翌日から12試合連続で先発中だ。

岡田はまだ20歳で、拓殖大を2年で中退してプロの世界に飛び込んだ。188センチのシューティングガードで、3月以降の18試合に限ると1試合平均で14.0得点を記録中。比江島や橋本の抜けた三河だが「次」への期待感が大きく広がっている。

最終的にはコンスタントな活躍を見せた保岡と、岡田の比較で考えたが、終盤戦の活躍や得点力を理由に、岡田を新人賞に推す。

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岡田侑大選手(右)写真=B.LEAGUE

議論と集合知でより良い結論を

百人の投票者がいれば、百通りの意見がある。ただし現状だと投票者も含めて、選出の前提となる知識や比較方法の共有が乏しい。実際にプレーして対戦した選手の評価は尊重されるべきだが、昨季は選手の投票率が低かったとも聞く。

叩き台が出れば、それに次ぐ意見が出やすくなるはずだ。メディアはもちろんだが、ファンの皆様もぜひ「自分ならこう選ぶ」と発信して欲しい。そういう議論が盛んになることで偏りは消え、賞の権威も高まる。せっかくこのような表彰があるのだから、集合知を築き上げるカルチャーが生まれることを願いたい。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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