早生まれの吉田輝星を招集しない高野連に、本気でU18W杯を戦う気はあるのか?

春夏連覇を達成した大阪桐蔭・西谷監督も議論に参加(写真:岡沢克郎/アフロ)

名将を招集して国際大会対策を議論

日本高校野球連盟(高野連)は26日、国際大会に向けた対策を考えるプロジェクトチームのメンバーを発表した。そこには横浜高の前監督である渡辺元智氏、春夏連覇を果たした大阪桐蔭高の西谷浩一監督といった「名将」もそこに加わる。10月4日に第1回の会議を開き、来年のU18ワールドカップ(W杯)などに関する対策を議論していくという。

自分の理解が正しければ高校野球は教育の一環であり、プロ選手の育成や「大会に勝つ」ことを目的とする性質のものではない。よき人間を育てるプロセスであり、甲子園大会や国際大会の勝利自体は目的にならない。「高校生の大会に勝つことだけ」を考えて選手に接すれば、一流のプロを目指す上での遠回りにもなりかねない。

一方で勝利を真剣に追求するプロセスは人間を成長させる。大目的を踏まえた上で「U18侍ジャパン高校日本代表が国際大会でいかに勝つか」を議論するならば意味はあるだろう。

「高校選抜」で挑む必要はあるのか

ただし国際大会を日本が戦う上で、見過ごされ続けているポイントがある。先に結論を言おう。日本が来年のU18W杯でより良い結果を得るために取るべき行動はシンプルで、それはプロと大学生の招集だ。

今夏の選手権で準優勝に輝いた金足農業のエース吉田輝星は2001年1月12日生まれ。昨秋の明治神宮大会高校の部で明徳義塾を優勝に導いた右サイドハンド市川悠太は2001年3月29日生まれだ。この二人は先日のU18アジア選手権に出場した現在高3のメンバーだが、来年のU18W杯にも出られる。高3の有力選手をチェックすると他にも太田椋(天理)、峯圭汰(創成館)など、他にも2001年の「早生まれ」が何人かいる。

育成年代の代表チームは野球に限らず「1月1日以降生まれ」を区切りにする場合が多い。2019年に韓国で開催されるU18W杯の出場資格も「2001年1月1日から2003年12月31日の出生」だ。つまりプロ野球の高卒新人や大学1年生でも、早生まれならば出場資格はある。にもかかわらず日本球界は原則的にこの大会へ高校選抜を送っている。

そもそも国際大会や有望選手の育成に関する議論をするなら、高校野球の枠内に止まった議論をしてもすぐ行き止まりになる。高校野球の枠内で意見を求めるにしても、英語が堪能で韓国プロ野球の経験を持つ山本セキ監督(大阪偕星学園)のような“他人と違うバックグラウンド”がある人に接触した方がいい。

選手が戦う相手は世界だし、U18W杯が終わった後も決して短くない野球人生が続く。となれば議論にも広い目配り、新しい視点が必要になる。そして「本気で世界大会に勝つ」意思があるならば、能力の高いプロや大学生を呼ぶべきだ。

他競技はプロ、大学生との混成が常識

プロや大学で揉まれた選手がと共にプレーすることは、現役高校生にとってもいい刺激になる。野球以外の競技ならば常識に類する、代表チームのオーソドックスな有りようだ。

野球界はプロ、社会人、大学生、高校生とそれぞれに組織が別建てで、混ざり合った活動を好まない。ただし球界は1984年のロサンゼルスオリンピックでまず「社会人と大学生の壁」を崩し、広沢克己(広澤克実/明治大)、和田豊(日本大)らを日本代表入りさせた。アマチュアの大会だったとはいえ、マーク・マグワイア擁するアメリカを下して世界一に輝いた。また2000年のシドニーオリンピックは、プロアマ混成の編成で参加している。「日本の野球を盛んにする」という目的は同じなのだから、高野連がもし本気ならば、他のカテゴリーと協力できるはずだ。

球団や大学が「選手を出したがらない」可能性は当然ある。それはサッカー、バスケットボールなど他競技でもしばしば起こる現象だ。しかしバスケの男子日本代表ならばゴンザガ大に在学する八村塁を招集するため、強化委員長がアメリカまで飛ぶ。どの競技も今は日本国籍の有望選手を発掘するため、海外で生まれ育った選手にまでアンテナを張っている。会議室の議論で満足しているならば、野球界に未来はない。足を動かし汗をかき、人と接して信頼関係を築く泥臭さこそが育成や強化を成功させるカギになる。高野連がもし本気ならば、そういう行動に踏み切れるはずだ。

プロアマの壁は徐々に崩れつつあり、フル代表からU12まですべての年代が「侍ジャパン」のブランドを共有して戦う時代になった。このいい流れが、U18W杯の活動にも反映されて欲しい。「吉田輝星、早生まれを来年のU18W杯に呼ぶかどうか」は高野連が本気で国際大会にチャレンジするのか、日本野球が変わるのかという試金石になる。