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幼保無償化が明日よりスタート!同じ園内に無償化対象のママとそうでないママが混在し女女格差を生む

小酒部さやか株式会社 natural rights 代表取締役
(写真:アフロ)

10月1日から増税とともに、その使い先として、3歳から5歳までの幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が無償化となる。(0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供たちも対象。)

先日、横浜市の認可外保育園に子どもを通わすママから、「認可外では無償化の対象になるママとそうでないママがいて、対象外のママたちが急きょ就活を始めている」という話を聞いた。私の子どもたちは対象となる3歳になっていないため、認可外で起きていることを聞いて、驚いた。

どういうことか、以下の表をもとに話をしたい。

以下の表は「幼児教育・保育の無償化対象の範囲」を表す。赤※印の対象者においては、「保育の必要性の認定」を申請しなければならない。

幼児教育・保育の無償化対象の範囲
幼児教育・保育の無償化対象の範囲

◆出典:横浜市こども青少年局 10分でわかる幼児教育・保育無償化

(※横浜市の表を参考に掲載しました。)

「保育の必要性」というのが以下図の項目になる。

保育の必要性の認定要件
保育の必要性の認定要件

◆出典:横浜市こども青少年局

(※横浜市の表を参考に掲載しました。)

私学助成幼稚園では、働いていない専業主婦でも「教育」にあたる時間内であれば上限25,700円まで無償だ。それ以上の時間は「預かり保育」にあたるとして「保育の必要性の認定」が必要になる。

一方、認可外保育園では一律全員に「保育の必要性の認定」が必要になる。認可外保育園では働くママもいれば、そうでない専業主婦のママもいる。なので、無償化の対象になるママ(世帯)とそうでないママ(世帯)が出てしまうのだ。

これでは、働くママと専業主婦ママとの間に目に見える格差が出来てしまう。認可外保育園でも私学助成幼稚園同様に、一定時間までは専業主婦でも上限25,700円まで無償にすれば、不公平さは出なかったのにと思ってしまう。

なぜこのようになったのか、内閣府の子ども・子育て本部に問い合わせてみた。

そもそも認可外保育園は、無償化の対象外だったことから話が始まっている、と担当者は話す。対象外だったが、認可保育園に落ちてしまい、仕方なく認可外保育園になったという人たちから無償化要望の声が上がったため、後から無償化の対象に含めた。

認可外保育園は国の規定に見合わない形で保育を行っている園も多いため、そういう園を一律で国が支援するということはできない。保育の質が担保されている園(国の規定に見合う園)があくまで今回の無償化の対象。なので「認可保育園に落ちてしまい、仕方なく認可外保育園になったという働くママ(保育の必要性のあるママ)」のみを支援の対象にしたとのことだった。

あとは「教育(文科省の管轄)」と「保育(厚労省の管轄)」の違い。「教育」はママが働く働かないに関わらず必要だが、「保育」は働かないママには必ずしも必要ではない、ということでの線引きだった。

たしかに、国としてはどこかで線引きしないとならないのだろう。

けれど、私にこのことを教えてくれた認可外保育園に子どもを通わすママは、あえて認可外保育園を選んで子どもを通わせていた。その認可外保育園の方針や子どもへの接し方が素晴らしいからだという。こういうママは、今回の無償化では、マイノリティとして国から存在を認めてもらえない状態になってしまった。

このママが子どもを通わす認可外保育園に話を聞くと、「消費税10%というのは、みんな同じように払うものなのに、同じ園で恩恵を受ける人と受けられない人が出てしまい、園としては、やりきれない思いだ」という。そこで、働いていないママたちには、ほぼ全員就労証明を取るよう促した。なかには起業したママもいるという。

女性活躍とはいうけれど、自らの意思で専業主婦を選んだり、認可外保育園を選んでいる女性たちもいる。

私は、「選択肢の多い社会は豊かな社会」と考える。

今回の無償化が、女性たちの選択肢を狭めることになっていかないか、思いを巡らせてしまった。

【2019/10/01/7:30に以下補足】

なお、自治体によっては条例を定め、基準を満たさない認可外を無償化の対象から除外できるようにしているところもある。

◆参考記事

幼保無償化「認可外」除外は江戸川など15市区

株式会社 natural rights 代表取締役

2014年7月自身の経験から被害者支援団体であるNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より「マタハラ問題」、11月花伝社より「ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~」を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rightsとなるよう講演や企業研修、執筆など活動を行っている。

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