これってマタハラ?相談事例に対する解決策を解説する

妊娠中に思い悩む女性のイメージ(写真:アフロ)

夫も同じ会社に勤務している女性から以下のような相談があった。

現在第二子を妊娠中で、第一子は認可保育園に通っています。

もうすぐ出産にもかかわらず、夫が通勤1時間半かかる場所に転勤になりました。

そのため、保育園の送迎は私が行っています。保育園までは車で片道20~30分。

送迎を頼める親族は近くにおらず、出産直前まで私が送迎したとしても、出産のための入院中や退院後の産後すぐなどは、現実的に送迎ができません。

せめてその期間だけでも夫に送迎してもらいたいのですが、保育園の開園が7時からで、7時ちょうどに子どもを保育園に預けたとしても、夫は会社の始業時間に間に合いません。

間に合わせるためには、特急の電車に乗るしかなく、それでも始業ギリギリです。

通常の交通費プラス特急代金を出してもらえないかと申請しましたが、全く取り合ってもらえませんでした。

「産んだ直後からすぐに運転して保育園への送迎をしろ!」と会社に言われているようで辛いです。まるで「子どもを作るな」と言われているように感じます。

これはマタハラにはならないのでしょうか?

会社からは、「マタハラとは言わない」と言われました。

会社は解雇や雇い止め、自主退職の強要といった会社側からの圧力行為をしているわけではないので、「マタハラとは言わない」と言っているのだろう。

2017年1月マタハラ防止が会社に義務付けられ、妊娠・出産・育児を理由にした解雇や雇い止め、自主退職の強要は不法行為でマタハラに当たるという常識は広まった。しかし、この相談事例のような「分かりやすいマタハラ以外のマタハラ」はまだまだあるように思う。

この相談事例の場合、どう対応していけばいいか、私なりの考えを以下に解説したい。

まず、相談者は「交通費プラス特急代金を出してもらえないか」と金銭解決しようとしているが、それより「必要な期間だけ夫の勤務開始時間を遅らせてもらえないか」と交渉した方がいいように思う。

もしこの交渉に会社がNOと言えば、旦那さんの育児参加を妨げる「パタハラ(パタニティハラスメント)」に該当する可能性が高いので、金銭交渉より会社が誤った対応をしているということが分かりやすい。問題を各論から総論に切り替えた方が、第三者に相談する時もシンプルで伝わりやすい。

育児介護休業法第24条は、小学校就学の始期に達するまでの子どもを養育する労働者に関する措置を講じるよう努めなければならないと規定している。

また、同法第26条は、配転について、子の養育状況に対する配慮を事業主の義務としている。

なので、会社がNOといえばパタハラの可能性が高くなる。

夫の勤務開始時間を遅らせてもらえないかという交渉にも会社がNOと言った場合、通常ならまずは社内のハラスメント相談窓口に行くのだが、この場合は人事部が判断を下しているようなので、社内の相談窓口が機能していない可能性が高いだろう。

そこで、外部の第三者機関(会社所在地を管轄している労働局均等部もしくは弁護士など)に相談することになるのだが、その際のポイントは、最初は会社名を出さないこと。最初から会社側に過剰な攻撃を仕掛けるのは得策ではなく、穏便にまとまるものもまとまらなくなってしまう。働き続けたいのであれば、また自分の言い分を会社に叶えてもらいたいのであれば、あくまで段階を踏んで交渉を繰り返すこと。

外部に相談はしつつ、会社と再度の交渉に入る。「なぜダメなのか」理由を聞いてそれを録音したり、文書でもらったりして証拠を残しつつ、「じつは、まだ会社名は伏せているのですが、外部の必要な機関に相談しています」と告げる。そして、「私はこの会社が大好きで働き続けたいので会社名は伏せておきたいのですが、必要に迫られれば言わざるを得なくなってしまいます」という。

ポイントは、自身の態度は平身低頭に。「自分は知識がないので、外部に相談しました」というように、会社を訴えるためではない、会社を攻撃したいわけではない、という姿勢でいくこと。これは処世術だ。

多くの会社が企業イメージを大切にしているので、常識的な会社であれば、この段階で「会社名を言われるのはヤバい!」と気づき、歩み寄ってくれる。

これでもNOの一点張りであれば、録音や文書など集めていた証拠たちの出番となる。証拠がないと相手は「そんなことは言っていない・やっていない」と認めないことが多いため、証拠が自身を守ってくれることになる。

大変かもしれないが、録音は書き起こして第三者機関に提出する。そして第三者機関から「これは不法行為だ」「これはパタハラだ」という判断をもらうこと。録音書き起こしのどこが問題発言か、マーカーなど引いてもらうとさらにいい。

これをもって、三回目の交渉に入る。「会社との会話や文書を第三者機関に提出したところ、不法行為と言われました」と会社に突きつける。これでも会社が理解しなければ、もうその会社はブラック会社だ。裁判や労働審判※1でさらに闘うか、転職するか、自身の要望を諦めるかになってしまう。

今回の相談の場合は、「必要な期間だけ」という極めて短期間のライトな要望のため、普通なら会社側が承諾してくれるはずなのだが…。

会社との交渉は緊張したり、ストレスを感じたりするかもしれないが、交渉が上手く行けば、その経験は自身の仕事面の交渉でも活かせるに違いない。諦めずにがんばって欲しい。

※1労働審判とは、

2006年(平成18年)4月に運用が開始された日本の法制度の一つ。職業裁判官である労働審判官と民間出身の労働審判員とで構成される労働審判委員会が、労働者と使用者との間の民事紛争に関する解決案をあっせんして、当該紛争の解決を図る手続き。三審制で裁判より短期間での解決を図るためにできた制度。