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2023年12月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
画像は筆者作成

2023年11月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポートに引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、モーニングコンサルト社の調査や、その他の調査機関の数字などから、内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。

岸田内閣の支持率は低空飛行のまま年末へ

モーニングコンサルト社
モーニングコンサルト社

世界の指導者の支持率を調査、公開しているモーニングコンサルト社が行っている内閣支持率調査では、12月31日時点で、支持率が16%、不支持率が73%となりました。先月の調査からほぼ変わっておらず、不支持率が支持率を大幅に上回る状態が続いています。G7各国と比較しても極めて低い状況であることがわかります。

岸田内閣の内閣支持率を一年分振り返る

内閣支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
内閣支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 グリーン・シップの行っている調査でも、内閣支持率の下落傾向は続いています。今年一年を振り返ると、春の衆参補欠選挙の行われた4月前後は上昇傾向にありましたが、5月以降は大きく下落し、9月前後には一時持ち直す時期もありましたが、結果として10月以降も下落傾向が続き、もっとも低い値で年末を迎えることとなりました。

 これらの原因は各月の記事に詳細を解説していますが、何より5月のG7終了時点が上昇のピークとなり、首相公邸における岸田首相秘書官の行動や、6月には衆議院解散に関連する岸田首相の反応で与野党が動揺した事案、政府のマイナンバーカードを巡る対応によって内閣支持率が低下基調に入ったとみられています。夏にはいったん底打ちをしたとみられていましたが、物価高の影響が如実に表れた時期でもあり、経済的な対策が後手に回ったとみられることなどから、大きく支持率を回復するに至りませんでした。秋の組閣では新たな政務三役から不祥事による辞任ドミノが発生し、更には年末に自民党派閥におけるパーティー券問題が強制捜査となったことで、内閣支持率は岸田政権では過去最低を記録したことになります。この間、わずかながら「わからない」と回答する人の数も減っていることから、ピークであった夏以降、政治無関心層においても「不支持」の態度がより鮮明になったとみられます。

各政党の政党支持率を一年分振り返る

政党支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 次に政党支持率です。年間を振り返ると、自民党の支持率が下落傾向にある一方、「特に支持する政党はない」と回答する無党派層がわずかに増えました。また日本維新の会、れいわ新選組などの支持が増えています。国民民主党の支持もやや増えた一方、立憲民主党の支持は下落と上昇を辿っています。

 自民党の支持率は、内閣支持率の下落しはじめたタイミングと同じ時期である5月下旬から下落を始めています。この時期以降、無党派層も増える傾向にありますが、11月頃から無党派層も横ばいとなっています。11月以降、自民党支持と相反するように立憲民主党やれいわ新選組の支持が増えているのは、自民党派閥パーティー券問題などに対抗した野党第一党としての立憲民主党の存在感や、消費税廃止を訴えていたれいわ新選組が支持を獲得しつつあることを示唆しています。日本維新の会は春の統一地方選挙で多くの地方議員を獲得したことから一定の支持層を確保し、携帯電話も入れた調査や若い世代を対象とした調査では立憲民主党を上回る支持を獲得していますが、秋以降は野党としての存在感に欠ける場面もあり、支持率は伸び悩みました。

今年の内閣支持率、政党支持率の展望は

今年の内閣支持率は横ばいからやや上昇か
今年の内閣支持率は横ばいからやや上昇か写真:つのだよしお/アフロ

 2024年の内閣支持率、政党支持率の展望はどうでしょうか。

 まず内閣支持率は、年明けから自民党派閥パーティー券問題の捜査が進展し、関係者が立件される流れとなれば、支持率が下落する要因となるとみられています。ただ、既に清和政策研究会の主要議員が閣僚から外れたり、党役員から外れていることを踏まえれば、これ以上の大きなダメージになるかと言われると微妙なところではあります。また、通常国会開会後は1月1日に発生した令和6年能登半島地震の復興などが議論されることとみられ、これらの動きが国民の支持を得られれば、支持率は緩やかに回復することも考えられます。

 それでは、政党支持率についてはどうでしょうか。

 自民党の支持率は低調に推移していますが、この理由も内閣支持率の低調の理由もほぼ一緒であり、自民党支持率は内閣支持率と連動する形で当分は推移するとみられます。立憲民主党は、岸田政権への対立姿勢を強めていますが、今後「救国内閣」を構成すべく野党各党との連携をする方向としており、この方向性が受け入れられるかがまずは試されます。加えて候補予定者の擁立が順調に進むかや、衆議院議員総選挙が近いと観測されれば、野党第一党としてのポジションから、支持を増やす可能性があります。

 日本維新の会の支持率にも注目です。昨年は統一地方選挙で多くの地方議員を誕生させたことで、若い世代などからの支持が強まっています。一方、地方議員の離党なども出てきているほか、直近では大阪万博に関する問題などを抱えており、「身を切る改革」から始まる党の方針を徹底し、適切な候補予定者を擁立できるかなど、党内のガバナンスをまずは整理できるかどうかが鍵を握っているとみられます。国民民主党は前原議員らが離党したことで「玉木色」が強くなったことを踏まえ、連合との関係性を強化できれば支持率は一定を維持することができるとみられています。れいわ新選組は消費税廃止などの政策が一部の層に届いて支持を獲得し始めており、物価高騰が続く中で同様の取り組みを行い続けることで支持率がどこまで伸びるかにも注目です。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。

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