[令和2年7月豪雨]被災者生活再建支援金を忘れずに 支援内容と課題を解説

被災者生活再建支援法の適用(筆者撮影)

■被災者生活再建支援制度

 令和2年7月豪雨で「被災者生活再建支援法」の適用が決定されました。現在のところ熊本県全域の45市町村、福岡県大牟田市、大分県九重町・日田市・由布市・玖珠町、島根県江津市、岐阜県下呂市、鹿児島県鹿屋市・垂水市が対象です(7月15日公表→7月22日公表→7月28日公表→7月31日公表)。今後被害状況の確認が進めば、適用地域は増える可能性がありますので内閣府のホームページをチェックしてください(「被災者生活再建支援法の適用状況について」)。

 被災者生活再建支援金は、(1)一定規模の自然災害がおきた自治体で、(2)全壊などの大きな被害を住宅に受けた被災世帯に支払われる給付金です。実際に住んでいる住宅が支援対象であり、所有しているかどうかは問われません(賃貸物件でもよい)。ただし、自ら期限内に申請することが必要です。

 阪神・淡路大震災をきっかけに成立した被災者生活再建支援法が根拠です(内閣府「被災者生活再建支援法の概要」)。

 支援金は、基礎支援金(最大100万円)加算支援金(最大200万円)に分けられています。被害程度や選択した住宅再建の方法によって金額が異なっていますが、最大300万円の支援を受けることができます。

 

支援金の支給額(内閣府「被災者生活再建支援法の概要」より抜粋)
支援金の支給額(内閣府「被災者生活再建支援法の概要」より抜粋)

 基礎支援金とは、被災者生活再建支援法が適用された場合に、全壊や大規模半壊の被害を受けた住宅の世帯に支払われるお金で、世帯につき最大で100万円です。罹災証明書の被害認定の記述に基づいて全壊などを判定することが通常です。また、基礎支援金の使い途は自由であり、大変使い勝手のよい制度です。

 加算支援金は、世帯につき最大で200万円です。加算支援金は、基礎支援金と異なり、特定の再建手法をとる場合に支給されるものです。受け取るためには、新しい家の契約書や見積書などを資料として提出するなどが必要です。自治体にどのような資料が必要かを確認するようにしましょう。なお、再建時の世帯数は、災害発生当時の世帯数を基準にして判断されることになっています。

 基礎支援金も加算支援金も、「差押禁止財産」になってますので、たとえば、「自然災害被災者債務整理ガイドライン」を利用した場合でも、手元に全額を残すことができます。

■住宅がどのような被害を受けると支援されるか

 被災者生活再建支援法の適用対象地域になったとして、次に住宅が相当の被害を受けている場合に限り、被災者生活再建支援金の「基礎支援金」の支給対象になります。なお、基礎支援金の要件を満たさない場合には、加算支援金も受け取れません。要件を満たす被害は、次の4つの類型です。

(1)全壊世帯:住宅が「全壊」した世帯(損害割合50%以上)

(2)解体世帯: 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯

(3)長期避難世帯:災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯(県が一定エリアを長期避難世帯に認定する必要があり、自宅を長期間不在にしていたというだけでは該当しません)

(4)大規模半壊世帯:住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(損害割合40%以上50%未満)

■申請が必要でかつ期限がある

 被災者生活再建支援金を受け取るためには、被災者から、自治体の窓口へ申請しなければなりません。申請主義がとられていますので、決して忘れることがないようにしてください。

 申請すべき期限は、

 基礎支援金  災害発生から13か月以内

 加算支援金  災害発生から37か月以内

となっています。なお、東日本大震災など、被害が甚大な場合には、延長の特例措置が取られています。実際にはいつまで申請できるのか、自治体のウェブサイトや窓口を通じて確認するなど、常に注意しておく必要があります。

■そもそも適用対象地域かどうか

 被災者生活再建支援法は、一定規模の自然災害があった市町村又は都道府県の単位で適用されます。同じ災害の被災地であっても、適用される自治体とそうでない自治体があります。

 一定規模の自然災害とは、「10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村」「100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県」など、政府が決めた被害規模の要件を満たした自然災害です。このほかにも詳細な要件が定められています(内閣府「被災者生活再建支援」参照)。これらに該当してはじめて、市町村単位や都道府県単位で、被災者生活再建支援法が適用されます。熊本県は「100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県」という要件を満たしたことが確認されたので適用されました。

 そもそも被災者生活再建支援法が適用されているのかどうかは、内閣府のウェブサイト(被災者生活再建支援法の適用状況について)などでチェックできます。被害が確認されてから適用を判断するので、災害発生からある程度期間を経てから発表されます。

 注意しておきたいのは、「災害救助法」の適用地域と「被災者生活再建支援法」の適用地域は一致するとは限らないという点です。何らかの被害を受けている自治体でも、前者のみ、後者のみ、両方適用なし、両方適用あり、のパターンがあり得ます。

■被災者生活再建支援制度の課題

 被災者生活再建支援金は、住宅に大きな被害を受けた場合に現金給付支援を受けられる画期的な支援です。しかし、法案成立から20年以上が経過した現在、多くの課題が指摘されています。

(1)世帯問題

「被災世帯」という単位で支給されるお金であり、運用上は世帯主の口座にお金が振り込まれます。このため、DVなどを受けている他の家族等への支援にならないケースがあります。あくまで被災した個人への支援金に変更すべきではないでしょうか。被災者生活再建支援法の改正が必要です。

(2)半壊の涙

罹災証明書などで半壊、準半壊、一部損壊といった被害認定を受けた世帯は、被災者生活再建支援制度の対象になりません。床上浸水であっても、半壊程度にしかならないケースは多数あります。実際に住めないほど被災しても、半壊は半壊であり、被災者生活再建支援金の対象にならないというギャップがあるのです。私はこれを「半壊の涙」問題と名付け、半壊世帯へも支援を拡大するよう被災者生活再建支援制度の拡充を提言しています。全国知事会も同様の見解を述べています。この提言を実現するには、被災者生活再建支援法の改正が不可欠です。

(3)境界線の明暗(同一災害同一支援ではない)

 被災者生活再建支援法は、市町村又は都道府県単位で適用されます。特に問題となるのは、同じ県でも、市町村によっては「全壊」や「滅失」に至る建物が少なく、被災者生活再建支援法の適用に至らない市町村があり得ることです。市町村をまたぐ竜巻被害などで顕著に問題が顕在化したりします。西日本豪雨でも、広島県・岡山県・愛媛県以外の県では、支援対象となる市町村とそうでない市町村に分かれてしまっています。被害があっても、そこに市町村ごとの要件がある以上、同一災害でも、「境界線の明暗」という問題が発生するのです。同一災害同一支援ではないのです。同一災害同一支援という、いわば当たり前を実現するには、政令である被災者生活再建支援法施行令1条を改正することで足ります。自治体単位で適用要件を記述するこの条項を改正すればよく、国会での法改正は不要ですので、速やかに改正されることを望みます。なお、全国知事会でも同様の意見が出ています。

参考文献

岡本正『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』(弘文堂2020年)

岡本正『災害復興法学2』(慶應義塾大学出版会2018年)第2部第6章「家族の生活(3)半壊の涙、境界線の明暗」

岡本正「令和2年7月豪雨が特定非常災害に 行政手続や相続放棄の熟慮期間の一括延長」(Yahoo!ニュース個人)

岡本正「[令和2年7月豪雨]生活再建の一歩を踏み出す「希望」の法制度情報を得よう」(Yahoo!ニュース個人)

岡本正「半壊の涙、境界線の明暗~全国知事会が被災者生活再建支援法の改正を提言」(Yahoo!ニュース個人)