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5回目のクラブチーム日本一!マツゲン箕島の宿題は日本選手権での1勝

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
メットライフドームに掲げられた、新しい名称『マツゲン箕島硬式野球部』の横断幕。

 8月29日までメットライフドームで行われていた『第44回全日本クラブ野球選手権大会』は、西近畿地区代表のマツゲン箕島硬式野球部が優勝しました。元阪神タイガースの穴田真規さんが2017年まで4年間在籍していた和歌山箕島球友会が、ことしチーム名を変更したもの。新しい名前で、令和最初のクラブチャンピオンとなったわけですね。

 優勝は2年ぶり5回目で、これは全足利クラブの10回についで2番目の多さ。しかも出場9回のうち優勝が5回、準優勝も2回という成績です。優勝確率は.556で、決勝進出確率は.778ってことになりますか?すごいなあ。この6年間を見ると2013年、2015年、2017年、2019年と1年おきに優勝しています。

 優勝確率が5割を超えたこともですが、ことしの大会では4試合すべてで先取点を挙げ、4試合すべてで計11個の盗塁を決め、4試合すべてで計8個の併殺というのもすごい。守備走塁に関しては、元西武ライオンズ・原井和也ヘッドコーチが鍛えた成果だと西川忠宏監督は言われました。これがうちの野球だと。

 また4試合の得失点合計を見ると、24得点に対し失点は4。登板したのは3投手で、和田拓也投手(25)が2試合14イニングで失点1、松尾大輝投手(22)は2試合16イニングで失点3、梅原隆斗投手(23)が2試合4イニングで無失点でした。前年までチームを引っ張っていた寺岡大輝投手が引退し、おまけに先発陣も春先はケガに泣いていた中、よくぞここまで戻ってきてくれたものです。

昨年で引退、来春から警察官となる寺岡さん。1回戦の応援に一家揃って駆けつけました。
昨年で引退、来春から警察官となる寺岡さん。1回戦の応援に一家揃って駆けつけました。

 さて和歌山箕島球友会と、これも出場18回で優勝4回、準優勝7回という東近畿地区代表・大和高田クラブとの決勝が3年続いていましたが、ことしは準決勝で東近畿同士が当たり、大和高田を破ったOBC高島との決勝戦になりました。OBC高島は、元阪神の野原祐也監督(34)が就任して3年目。その戦いぶりはこちらからご覧ください→<OBC高島がクラブ選手権準優勝!元阪神・野原祐也監督「選手に感謝しかない」>

 マツゲン箕島硬式野球部にもう阪神OBはいませんが、引退後も和歌山へ行ったら練習に顔を出したり、いつも気にかけている穴田さんのためにも、今回の記事を書かせていただきました。穴田さんからはメッセージももらったので、最後にご紹介します。

【1回戦】松尾投手が1失点完投勝利

 では1回戦から振り返りましょう。初戦は大会2日目、8月27日の第4試合で東海地区代表・矢場とんブースターズが相手でした。なお4試合とも個人成績はマツゲン箕島のみです。ご了承ください。

《8月27日 第4試合 1回戦》

矢場とんブースターズ-マツゲン箕島

 マツ 001 003 011 = 6

 矢場 001 000 000 = 1

 

◆バッテリー

【マ】○松尾 / 中原

【矢】●納谷(5回2/3)-原井(2回1/3)-松元(1/3回)-東(1/3回) / 金丸-名越

◆打撃  (打-安-点/振-球)

1]中:黒岩  (5-0-0 / 1-0)

2]遊:池島  (4-2-0 / 1-1)

3]二右:夏見 (3-3-2 / 0-2)

4]一:岸   (3-0-0 / 1-2)

5]指:渡部  (3-0-0 / 2-1)

6]左:小邨  (3-1-0 / 0-2)

〃左:古川  (0-0-0 / 0-0)

7]右:小窪  (4-1-4 / 1-0)

〃二:富樫  (0-0-0 / 0-0)

8]捕:中原  (4-0-0 / 1-0)

9]三:山口  (3-0-0 / 1-0)

〃三:池淵  (1-1-0 / 0-0)

◆投手 回 (安-振-球/失-自)

松尾 9回 (5-5-5 / 1-1)

<試合経過>※敬称略

3回、夏見選手の中前打で二塁から生還する池島選手。
3回、夏見選手の中前打で二塁から生還する池島選手。
池島選手の続きです。渡部選手とタッチしてベンチへ全力疾走!
池島選手の続きです。渡部選手とタッチしてベンチへ全力疾走!

 マツゲン箕島は3回、2死から池島が右前打、捕逸で二塁へ進むと夏見の中前打で生還!しかしその裏、松尾は先頭に三塁打を浴びるなど1死一、三塁とされ犠飛で同点になります。その後、6回の攻撃で池島の中前打と夏見の四球、小邨の死球などで2死満塁。続く小窪が右中間へのタイムリー三塁打!満塁の走者を一掃しました。

 8回には夏見の内野安打と2四球などで1死満塁となり、小窪の遊ゴロで1点。9回にも池淵の左前打と四球などで1死一、二塁として夏見が左前タイムリー!計6点を奪っています。一方、松尾は4回以降に2安打と2四球、味方エラーの走者のみ。守備陣が4つ併殺で締めて追加点を与えず、試合終了です。

ルーキー小窪選手が満塁で三塁打!

6回2死満塁で三塁打!ルーキーの小窪選手。
6回2死満塁で三塁打!ルーキーの小窪選手。
三塁上で、ベンチに向かってこの笑顔。
三塁上で、ベンチに向かってこの笑顔。

 この試合について、まず西川監督の談話をご紹介します。「松尾は春先に故障があったけど、走り込んだりして力をつけた。大学でいうと4年生のシーズン。3年から4年が一番伸びるところなんですよ。子どもの体から大人の体に変わってきたかな、ようやく。この前、日本生命を抑えましたからね。小窪はよく打ってくれた。会心の当たり。新人で唯一(スタメンで)使っています」

 1対1の6回に、満塁の走者を一掃する勝ち越し三塁打を放った小窪教照選手(22)は「とりあえず(ランナーを)還そうと思っていました。抜けると信じて三塁を狙った。ピッチャーを助けられてよかったです。2打席目まで打てなくて…。緊張はしていなかったけど、周りには硬い、硬いと言われましたね」と少し苦笑。

同点の場面、ベンチ前で勝ち越しを祈る岸選手。
同点の場面、ベンチ前で勝ち越しを祈る岸選手。

 4番の岸翔太選手(26)はノーヒットですが2四球。「初戦に勝ったので、よしとします。調子はメッチャいい。日生との試合は2安打3打点やったんですよ。チームも調子よくて勝った。みんな自信ついたと思う」。監督の話に出てきた8月21日の日本生命とのオープン戦を、岸選手も挙げました。なんせ打線が、あの日本生命から16安打して10対4で勝ったんですもんね。1週間後のクラブ選手権への弾みになったはずです。

本大会初登板でも「いつも通り」

 松尾投手は京都府立鳥羽高校から和歌山箕島球友会に入団。2年目の2017年から3年連続でクラブ選手権に出場していますが、登板するのは今回が初めてです。しかも大事な初戦の先発を任されるも「緊張はなかったです。いつも通り」とサラリ。“全国大会”で投げるのは、いつ以来?「久しぶりですよ。高校3年夏の国体以来、ですかねえ」

初戦の先発を任され、見事1失点完投の松尾投手。
初戦の先発を任され、見事1失点完投の松尾投手。
ピンチをしのいで戻り、タッチで迎えられる松尾投手。
ピンチをしのいで戻り、タッチで迎えられる松尾投手。

 1回のピンチも「いつも立ち上がりが悪い方なので、そんなに慌てることはなかった」と言います。唯一の失点は3回でしたが「取られてもまだ同点なので、アウトをもらっての最少失点と思って投げました。あれも想定内ですね」とサラリ。以降もほぼ毎回ランナーを出して食い下がってきました。「ランナーを出すことが多かったですけど、僕のピッチングはあんな感じなので」。これまたサラリと松尾投手。

 「春先に右肩を痛めて4月の都市対抗の1次予選に間に合わず、その間にBP(フリー打撃の投手)をしていました。5月の2次予選も投げられなくて、やっぱりBPを。でも感覚がよかったんです。思ったより打たれない感じがあった」。本来はバッターに“打たせる”BPで?「こういうふうに投げたらバッターは打ちにくいんだな、力を入れて放らなくてもいけるな、というのがわかりました。それで、ここまでうまくいっています」

大きくなった体も好投の要因

 実戦に復帰したのは6月半ば、クラブ選手権の1次予選からでした。でも昨年まで見え隠れしていた不安感がまったくありません。ボールが続いても、ランナーが出ても落ち着いて自分の間合いで投げているように見えます。「2段モーションがよくなった(反則投球でなくなった)こともありますね。“ため”が作れるようになった」

左が2016年、ルーキーの松尾投手。右は今大会、ひと回り大きくなった松尾投手です。
左が2016年、ルーキーの松尾投手。右は今大会、ひと回り大きくなった松尾投手です。

 会うのは1年ぶりくらいだけど、すぐに松尾投手だとわからなかったほどで、太った?と聞いたら「いえ、大きくなったんです!」と即座に訂正されました。体はもちろん顔の輪郭も別人のようです。聞けば「高校を出てから10キロ増えた」とか。いやいや、入団してからジワジワ増量したわけじゃないでしょう?だって去年の今ごろは、そんなに大きくなかったはず。チームの人に聞いたら、この1年で一気に増えたという証言でした。やっぱりね。

 「ウエートトレーニングをし始めたのもあります。ケガをしないように、体全体と肩周りも」。そして、しっかりご飯を食べるようになったという情報も得ていますよ。西川監督が言われた日本生命とのオープン戦は大会の約1週間前、8月21日のこと。ここで先発して1回に2ラン、2回にエラーから犠飛で1点を失ったものの、5回を投げ4安打3失点(自責2)。手応えがあったでしょう。

【準々決勝】和田投手が5回まで完全!

 準々決勝は8月28日の第4試合。16時30分開始で予定を組まれていたのが、始まったのは19時08分で、21時54分終了でした。お昼すぎにはもう球場へ着いていたでしょうから、相手の横浜金港クラブ(関東地区代表)も同じく、相当な待ち時間だったと思われます。

《8月28日 第4試合 準々決勝》

マツゲン箕島-横浜金港クラブ

 マツ 100 003 010 = 5

 横浜 000 001 000 = 1

 

◆バッテリー

【マ】○和田-梅原 / 水田

【横】●秋田(6回)-田邉 / 高橋亮

◆打撃  (打-安-点/振-球)

1]中:黒岩  (3-2-0 / 0-2)

2]遊:池島  (2-1-0 / 1-3)

3]二右:夏見 (4-2-1 / 0-1)

4]一:岸   (3-1-0 / 1-2)

5]指:渡部  (2-0-0 / 0-0)

〃打指:小川 (1-1-2 / 0-0)

〃走指:平林 (0-0-0 / 0-0)

〃打指:矢野 (1-0-0 / 0-0)

6]左:小邨  (4-2-1 / 0-0)

〃左:古川  (0-0-0 / 0-0)

7]右:小窪  (3-0-0 / 0-0)

〃打二:富樫 (1-0-0 / 0-0)

8]捕:水田  (3-0-0 / 0-1)

9]三:山口  (3-1-0 / 0-0)

〃三:池淵  (1-0-0 / 0-0)

◆投手 回 (安-振-球/失-自)

和田 7回 (3-7-1 / 1-1)

梅原 2回 (2-1-0 / 0-0)

<試合経過>※敬称略

この試合でタイムリー二塁打を放った小邨選手。27日に中前打した時の写真です。
この試合でタイムリー二塁打を放った小邨選手。27日に中前打した時の写真です。

 マツゲン箕島が1回に夏見のタイムリーで先制すると、6回にはヒットと四球、相手エラーなどで無死満塁として捕手のエラーで1点、さらに代打・小川のタイムリーで2点を追加。8回は1死二塁で小邨がタイムリー二塁打!計5得点です。

 先発の和田は、なんと5回までパーフェクト!ところが6回、四球と二塁打などで1死二、三塁とし、二ゴロで1点を失いました。7回は2死から連打を浴びるも、自身の牽制で刺しています。8回からは梅原が登板。1安打と盗塁を許しますが無失点で、9回も1安打されながら遊ゴロ併殺打で片づけ、試合終了。

【準決勝】今大会“最多”の2失点

 大会最終日の8月29日は準決勝2試合と決勝が行われ、マツゲン箕島は第2試合の準決勝で沖縄のビッグ開発ベースボールクラブ(九州地区代表)と対戦しました。

《8月29日 第2試合 準決勝》

マツゲン箕島-ビッグ開発BC

 マツ 112 000 020 = 6

 ビッ 000 002 000 = 2

 

◆バッテリー

【マ】○松尾-梅原 / 中原-水田

【ビ】●小浜(0/3回)-宮城(8回)-天久(1回) / 照屋

◆打撃  (打-安-点/振-球)

1]中:黒岩  (4-2-1 / 0-1)

2]遊:池島  (4-2-0 / 1-1)

3]二右:夏見 (4-2-1 / 0-0)

4]一:岸   (5-3-1 / 0-0)

5]指:渡部  (3-2-1 / 0-1)

6]左:小邨  (5-1-0 / 2-0)

〃左:古川  (0-0-0 / 0-0)

7]右:小窪  (3-0-0 / 0-0)

〃二:冨樫  (0-0-0 / 0-1)

8]捕:中原  (3-0-0 / 3-0)

〃打:小川  (0-0-1 / 0-0)

〃捕:水田  (0-0-0 / 0-0)

9]三:山口  (3-1-0 / 1-0)

〃三:池淵  (1-0-0 / 0-0)

◆投手 回 (安-振-球/失-自)

松尾 7回 (7-2-2 / 2-2)

梅原 2回 (2-4-0 / 0-0)

<試合経過>※敬称略

ルーキー・池淵選手は4試合とも途中出場ながら、果敢な守備を見せました。
ルーキー・池淵選手は4試合とも途中出場ながら、果敢な守備を見せました。

 打線は1回に黒岩の二塁打など3連打で1点(夏見のタイムリー)、2回は2死から山口の二塁打と黒岩のタイムリー三塁打で1点。3回には岸のタイムリー二塁打と渡部のタイムリー。4対0とします。一方、この日も走者を出しながら5回まで0点に抑えた松尾。6回にタイムリー二塁打と内野ゴロで計2点を返されました。

 しかし8回に2安打と敬遠の四球などで1死満塁として代打・小川が犠飛。ついで相手エラーでの1点を加え、6対2とします。8回から梅原と水田のバッテリーに代わり、9回に連打があったものの2イニングで4三振を奪って無失点。

【決勝】コールドで決めた優勝!

 同じ8月29日、マツゲン箕島が準決勝を終えた約40分後に決勝が始まりました。初めて決勝に進出したOBC高島との試合は、和田投手が1安打0点に抑え、打線が着実に加点して7回コールド勝ちしています。決勝でもコールドやタイブレークがあるんですね。

《8月29日 第3試合 決勝》

OBC高島-マツゲン箕島

 高島 000 000 0 = 0

 マツ 202 010 2x = 7

  ※7回コールド

 

◆バッテリー

【高】●吉井(2回1/3)-山下(4回) / 橋本辰

【マ】○和田 / 水田

◆打撃  (打-安-点/振-球)

1]中:黒岩  (3-0-0 / 0-1)

2]遊:池島  (2-1-0 / 1-1)

3]右:夏見  (3-2-2 / 0-1)

4]一:岸   (3-0-0 / 0-1)

5]指:渡部  (3-1-2 / 1-1)

6]左:小邨  (3-0-1 / 1-1)

7]二:冨樫  (4-0-0 / 1-0)

8]捕:水田  (3-1-0 / 0-0)

9]三:山口  (3-1-0 / 1-0)

〃三:池淵  (0-0-0 / 0-0)

◆投手 回 (安-振-球/失-自)

和田 7回 (1-7-0 / 0-0)

<試合経過>※敬称略

1回に先制の2点タイムリー二塁打を放った渡部選手(写真は27日)。
1回に先制の2点タイムリー二塁打を放った渡部選手(写真は27日)。

 先発の和田はまたしても4回までパーフェクトピッチング!5回1死で初ヒットを許し、続く打者を味方エラーで出しますが、次は併殺打。6回と7回は三者凡退。打線は1回、2四球などで2死一、三塁のチャンスに渡部が2点タイムリー三塁打!3回には1死一塁で夏見のタイムリー三塁打と、さらに暴投でもう1点。5回は振り逃げの池島が二盗を決め、続く夏見のタイムリーで生還。

 そして7回、ヒットと相手エラー、四球などで1死満塁として小邨の死球で押し出し。これで6対0となり、あと1点でコールドゲームというところ。なおも1死満塁で続く冨樫は二ゴロ、しかしセカンドからホームへの送球が高く逸れて、三塁走者の岸が還って試合終了です。

サイドスローは苦肉の策

 7点目が入った瞬間、ベンチの選手たちは少し戸惑い気味。「終わり?」「勝った?」という表情で出てきて、ホーム付近へ駈け出していきました。整列して挨拶をしたあと西川監督に続いて、夏見選手と和田投手がインタビューを受けたのですが、とにかく「サイコーです!」と叫び続けるもんで、インタビュアーが「そろそろ、最高です以外のコメントを…」と苦笑い。和田投手はガッツポーズつきで、また大ウケです。

2年ぶり2度目の最高殊勲選手賞を受賞した和田投手。
2年ぶり2度目の最高殊勲選手賞を受賞した和田投手。

 閉会式では、最高殊勲選手賞(MVP)の和田投手が表彰されています。和田投手は2017年の優勝時にもMVP、準優勝の2018年には敢闘賞に選ばれました。3年連続受賞というのも素晴らしいですね。大会終了後、和田投手に話を聞きました。昨年まで上手投げだったのが横手投げになっていてビックリしたんですけど、その理由を聞いてまたビックリ。

4年目の同期6人衆。右から松尾投手、和田投手、竹中投手、中原選手、玉木選手、中山マネージャー。
4年目の同期6人衆。右から松尾投手、和田投手、竹中投手、中原選手、玉木選手、中山マネージャー。

 「ことしの都市対抗1次予選から左肩に痛みが出て、病院をハシゴしても治らなかったんです。すごくいいお医者さんを紹介してもらったけど、それでも痛くて…。どうやったら痛くないかを考え続けました。サイドスローは、いわば苦肉の策です。痛くないところを探して投げた結果、横だけ大丈夫だった」

 さらに驚いたのは「ピッチングを再開して1か月経っていませんね。まだ2週間くらいかも」という言いながら「今では上で投げていた感覚も身についた」そうです。「とにかく、バッターのリアクションが変わりました!左のサイドスローですからね。投げていてもおもしろかったです」

魂を込めたピッチング、秋もまた

 違いはないかと尋ねたら「体力(の消耗具合)が全然違う」と和田投手。8月の日本生命戦で「(6回から)4イニング投げて、よかったんですけどメッチャしんどくて。最後までいけるかなあと。根性で投げました!」と笑います。

首位打者の夏見選手(左)と2人でトロフィーを手に。
首位打者の夏見選手(左)と2人でトロフィーを手に。

 今大会では8月28日の準々決勝で7イニング、翌29日の決勝も7イニングを投げました。「きのう(28日)はしんどかったんですけど、きょうは大丈夫でした。全然しんどくないし、痛みもないです」。その準々決勝は5回までパーフェクト!「でも6回にフォアボールと長打で1点取られました」。完全試合、ノーヒットノーラン、完封、みんなふっとんだわけですね。

 「いいバッターがメチャクチャ多かったです。調子がよかったからいいけど。今までのクラブ選手権で一番強かったかも。バッティングがよかったです」。そして決勝は7回ながら1安打完封勝利。2試合で2勝、14イニングを投げて安打4、三振14、四球1、失点1(自責1)、防御率0.64というMVPにふさわしい成績でした。

 「いろんなことがあって苦しかったけど、投げられてよかったです。魂を込められたかな、と思います。日本選手権、絶対投げます!勝ちます!」

公約通り獲得した首位打者賞

見事、首位打者に輝いた夏見選手。
見事、首位打者に輝いた夏見選手。

 もう1人、夏見宏季選手(25)のコメントもご紹介しましょう。初戦が終わった時に「今、メッチャ調子いいんです。首位打者、狙います!1年目に獲れなかったので」と言っていましたが、その初戦は3打数3安打2打点で10割。準々決勝は4打数2安打1打点、準決勝も4打数2安打1打点、決勝では3打数2安打2打点で、合計14打数9安打6打点、通算打率.は643という驚異的な数字で、公約通り首位打者賞を獲得しました。

 しかも4試合すべてでタイムリーを放っており、そのうち決勝以外の3試合は先制タイムリー。MVPでもいいくらいの活躍ですね。「獲れてよかった!ずっと言っていたので。狙っていました!」。そして「先発ピッチャーが2人ともよかったし。和田ちゃん、最高やった!ピッチャーが抑えてくれたので、全然しんどくなかったですよ。打つ方もみんな調子よかった」と明るい声でした。夏見選手も最後にこう言っています。

 「日本選手権、和田ちゃんと勝ちにいこうって話しています。1年目は和田ちゃんが抑えて僕も打ったけど、勝てなかったので。ことしは勝ちたい!クラブ選手権は通過点です。京セラで勝つぞ!」

西川監督にとっても、日本選手権での1勝は悲願です。
西川監督にとっても、日本選手権での1勝は悲願です。

 2006年から、クラブ選手権で優勝したチームは都市対抗の覇者と同じく、秋の社会人野球日本選手権へ出場する権利が与えられています。マツゲン箕島硬式野球部(和歌山箕島球友会)は、予選を突破した2007年を含めて5度出場しているものの、全部1回戦敗退でした。だから日本選手権の1勝がずっと目標。見つめているのは10月の京セラドームなのです。

穴田さんも「応援に行きます!」と

 お待たせしました。和歌山箕島球友会OBの穴田真規さんから、チームへのメッセージをもらったので書いておきます。

 「優勝おめでとうございます!去年の準優勝の悔しさがあると思うから、今回の優勝は格別でしょうね。日本選手権で企業チームを倒すことを楽しみにしています!」

2017年のクラブ選手権。優勝旗を持った穴田選手(左)と、今も現役の岸選手(右)。その間に見えるのが西口稔基選手。西口さんも今大会の応援に行ったそうですよ。
2017年のクラブ選手権。優勝旗を持った穴田選手(左)と、今も現役の岸選手(右)。その間に見えるのが西口稔基選手。西口さんも今大会の応援に行ったそうですよ。
穴田さん、岸選手と同い年の北面投手。誰よりもベンチで盛り上げていました。
穴田さん、岸選手と同い年の北面投手。誰よりもベンチで盛り上げていました。

 出だしは真面目で、さすが会社員と思ったら…同い年の岸選手に向けて「温水こと岸が京セラに出場するということで、スカルプDと黒々男爵(育毛剤)を持って応援に行きます!」なんてことを言っていました。さらに「臨時の三塁コーチが必要なら、いつでも依頼を待っています」とも。

 最後は「監督、コーチ、マネージャー、球団関係者、選手、本当にお疲れ様でした!」と真面目に締めくくったと思いきや、すぐあとに「うまいわ、俺」と自画自賛。期待通りの言葉をありがとうございました。

 いまだに“穴田ロス”を口にする選手やスタッフの方々がおられ、あのムードメーカーぶりを私も懐かしく思い出します。そんな穴田さんが京セラドームへ行けるよう、組み合わせ抽選会でいいところを引いてくださいね。マネージャーさん。

    <掲載写真の※印は筆者撮影、それ以外はチーム提供>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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