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昭和生まれの岡崎選手が、平成の怪物から放った、令和1号《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
岡崎選手にとって松坂投手は中学時代からの憧れの人。写真は昨年8月の鳴尾浜です。

 阪神の1軍はセ・パ交流戦の真っ最中で、その戦いも後半戦に入りました。原口選手の復帰で沸いたロッテ戦(ZOZO)、おなじく原口選手のサヨナラで締めくくった日本ハム戦(甲子園)、梅野選手が打ちまくって「勝つばい!」と盛り上げたソフトバンク戦(ヤフオク)、そして今は関西ダービーのオリックス戦(京セラ)が行われています。残すは倉敷と甲子園での楽天、西武2カードですね。

 一方のファームは、14日から甲子園で中日と対戦中。残念ながら、きょう15日は天候不良により中止でした。早朝は意外にもあまり降っていなかったんですよね。ところが10時半頃から突然の土砂降り!これで11時前に中止が決まったようです。

 きょうは、14日のウエスタン・阪神-中日戦を振り返ります。取材には行けなかったのですが、試合はテレビの録画で見て、コメントはスポニチ・阪井記者に教えてもらいました。

 阪神の先発は2年目で甲子園初登板の牧投手、中日は復帰2戦目となる松坂投手。もちろんルーキー・根尾選手も先発出場で話題満載!そんな中、岡崎選手は憧れの人だった“平成の怪物”・松坂投手からホームランを打ち、片山選手にも約2か月ぶりのホームランが出ました。片山選手にとっては甲子園初アーチです。

 阪神は他にも陽川選手が4号2ランを放っていて、計3本。しかし中日は1回から1イニング2発や1試合2本、さらに2者連続弾も含めて計5本…。梅雨間近のどんよりした空に8度も放物線が描かれる試合だったんですねえ。そして7回くらいから降り出した霧雨が8回には本降り、すぐに土砂降りとなって、9回表2死で中断。23分後に降雨コールドゲームが宣言されました。

 なお14日は試合前、球団選定ファーム5月度月間最優秀選手に選ばれた馬場投手の表彰があり、清水常務取締役より賞品と記念品が授与されています。

《ウエスタン公式戦》6月14日

阪神-中日 14回戦 (甲子園)

 中日 320 003 020x =10

 阪神 001 002 21  = 6

  ※9回表2死、降雨コールドゲーム

◆バッテリー

【阪神】●牧(1敗)-谷川-岩崎-歳内-尾仲-石井 / 岡崎-片山

【中日】松坂(4回)-○梅津(1勝)(3回)-鈴木博(1回) / 木下拓-石橋

◆本塁打 中:石垣3号ソロ(牧)、モヤ10号2ラン(牧)、モヤ11号ソロ(尾仲)、渡辺2号2ラン(岩崎)、木下拓1号ソロ(岩崎)

     神:岡崎1号ソロ(松坂)、陽川4号2ラン(梅津)、片山4号2ラン(梅津)

◆二塁打 中:石垣、根尾 神:中谷

◆盗塁 神:伊藤隼(1) 

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]中:江越  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .264

2]二:熊谷  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .224

3]左:板山  (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .201

4]三:陽川  (4-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .274

5]右:中谷  (4-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .241

6]指:伊藤隼 (4-1-0 / 0-0 / 1 / 0) .194

7]一:ナバー (3-0-0 / 3-1 / 0 / 0) .158

8]捕:岡崎  (2-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .083

〃捕:片山  (1-1-2 / 0-0 / 0 / 0) .248

9]遊:小幡  (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .223

 ※ナバー=ナバーロ

   

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

牧   2回 40球 (5-2-2 / 5-5 / 6.38) 147

谷川  3回 44球 (1-1-0 / 0-0 / 2.12) 143

岩崎  1回 26球 (3-2-0 / 3-3 / 3.46) 141

歳内  1回 11球 (1-0-0 / 0-0 / 2.70) 144

尾仲  1回 15球 (2-0-0 / 2-2 / 5.68) 141

石井 0.2回 13球 (2-0-0 / 0-0 / 1.69) 142

《試合経過》※敬称略

 先発の牧は1回、石垣に先頭打者ホームランを打たれ、2死後に四球を与えて今度は5番・モヤに2ラン。2三振を奪ったものの、3失点という立ち上がりです。2回にも7番の渡辺から3連打を浴び無死満塁として、石垣は押し出しの四球、続く友永の左犠飛で計2点を追加され、2イニングを投げ5安打5失点。この回で交代しています。

これは4月4日、鳴尾浜でのJFE西日本戦で2打数2安打の岡崎選手。
これは4月4日、鳴尾浜でのJFE西日本戦で2打数2安打の岡崎選手。

 次いで登板した谷川は、3回と4回を三者凡退!5回に石垣の二塁打を浴びるも、後続をしっかり断って無失点と好投でした。なお打線は松坂に対して1回が三者凡退、2回は2死から伊藤隼が中前打と二盗を決めますが、得点につながらず。しかし3回、先頭の岡崎がカウント2-2からの5球目(122キロ)をレフトスタンドへ!今季初ヒットが松坂からのホームランです。4回は先頭・板山の四球と、陽川の技あり右前打などで2死一、三塁としたものの無得点。5回は2人目の梅津の前に三者凡退でした。

 5対1で迎えた後半、6回は岩崎が登板します。先頭のモヤに右前打、1死後に渡辺の2ラン、8番・木下拓のソロと2者連続ホームランを浴びて3失点。その裏に梅津から熊谷の左前打などで1死一塁として、陽川が4号2ランを放ちましたが、8対3とまだ5点差。

 7回は歳内、キャッチャーも片山に代わり、1安打されたものの最後は併殺で締め3人で片付けます。すると、その裏に先頭のナバーロが四球を選んで、片山が右中間へ4号2ラン!梅津の初球、144キロを打ったものです。これで8対5と少し差を詰めました。

 このあたりから雨が強めに降り出し、お客様はカッパを着たり、屋根の下へ移動したり。でも逆転を信じて観戦は継続されていたのですが、8回に登板した尾仲が先頭のモヤにライトスタンド中段に放り込む特大ホームランを打たれ、根尾には二塁打(センター、ショート、セカンドがお見合い…)を浴びて、次の遊ゴロで1死三塁とすると、木下拓の中犠飛でもう1点。ついに10失点です。

 その裏、打線は板山が右前打して陽川の二ゴロで1死二塁、続く中谷がレフトへタイムリー二塁打!1点を返しました。9回はもう本降りの中、石井がマウンドへ。簡単に2死を取ったのはいいけれど、キャッチャーのサインも見づらそうな土砂降りとなって、石川駿とアルモンテの連打で2死一、三塁のピンチ。次の石橋へ5球を投げ、フルカウントにしたところで審判が中断を告げました。そして23分後に降雨コールドゲーム、試合終了です。

まだまだこれから!岡崎選手

 ではコメントをご紹介しましょう。まず岡崎選手。自身のホームランについて話す前に「守備が、ホームランでの失点が多かったので、そこが本当に。先発の牧をもっと引っ張っていけなかったのが反省です」と振り返っています。

昨年5月19日、淡路での試合後に行われた野球教室にて、森越選手(左)と。
昨年5月19日、淡路での試合後に行われた野球教室にて、森越選手(左)と。

 今季初安打が松坂投手からのホームランになったことは「1本出たってのはよかったと思いますし、中学の時とか本当に憧れた人だったので、そういう人と対戦できただけでもよかった」と言います。岡崎選手は松坂投手の3つ下。憧れの存在そのものですよね。いろんな状況が折り重なって実現した1打席に、ヒットどころかホームランって最高でしょう。岡崎選手は「たまたまです」と笑いますけど。

 松坂投手の感想を聞いた、ある記者が「うまく対応され、本人としても予想外だったらしい。失礼だけど、あの球をあんなうまく打つとは思わなかったと言っていた」と本人に伝えました。岡崎選手は「嬉しいです」と。たとえファームでも、この縁に感謝ですね。

 ホームランは会心の当たりでしたか?「まあまあ、はい」。初安打に関しては「なかなか1軍でも出場機会がなかったですし。でもチャンスを与えてもらったところで結果を出していければ。まだまだこれから頑張っていきます」と岡崎選手は話しています。そうですよ!松坂先輩もまだこれから。次は1軍で打たせてもらいましょう。

 ところで、3つの時代を入れてみたタイトルですが、わざわざ“昭和生まれの”と書いたのは、昨年こんなことがあったからです。岡崎選手、何度も昭和、昭和ってすみません。でも、あのスピーチは秀逸でした。もう一度、ご覧ください。→<“昭和の日”に甲子園で輝いた、昭和生まれの岡崎太一選手>

我慢できずに出たガッツポーズ

同じ中日戦ですが、これは5月9日(鳴尾浜)です。片山選手は9回にタイムリー!
同じ中日戦ですが、これは5月9日(鳴尾浜)です。片山選手は9回にタイムリー!

 次は甲子園での初ホームランを放った片山選手です。途中出場で最初の打席、初球をとらえましたね。「前のナバーロが(四球で)出てくれて、自分もつなぎたい、何とか1点でも多く取りたいっていう思いの中、本当につなごうとしか思っていなかったです。積極的に1球目から振っていこうと」

 打球のスタンドインを確認してガッツポーズ!「打った感触はよかったですけど、いってくれたらいいという思いはありました。負けている状況で逆転したわけでもないんですけど、個人的な気持ちとして、ずっと打てていなかったし、やっと自分らしいスイングができたかなと思います。それが結果につながってくれたので、我慢しきれない思いというか…。こみあげてきたものがあって、それが素直に出てしまった感じですね」

 しかも甲子園で打ちましたよ。「まあ甲子園で打てたら、どの球場でも入るかなと。それに、きょうは風も強かったおかげもあると思うけど、甲子園で打てたというのは自信につながる。特別な1本になるかなと思います」。自分らしいスイングができたと。「自分で気づけたってことは、ごくわずかで。本当に自分のことながらまだまだレベルが低い。監督、日高コーチ、新井コーチや皆さんにヒントをいただいて気づかせてもらって、教えてもらっている立場だから。感謝しかないです」

4月23日のソフトバンク戦。初勝利を挙げた湯浅投手(左)にスピーチを促します。
4月23日のソフトバンク戦。初勝利を挙げた湯浅投手(左)にスピーチを促します。

 続けて片山選手は「これから先、いろんな人の支えがあって結果を出せていくのだと思う。もちろん自分がまずやらないと始まらないことですが、いろんな人が力を貸してくれるので。そういうところで自分が、与えてもらったことをモノにできるか、ですね」と締めくくった…と思いきや、最後に「(ホームランを)打ったあとで2点取られている。そっちの方が問題」と守備面の反省を自ら口にしました。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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