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北陸シリーズ番外編 元阪神の同級生・一二三慎太投手と岩本輝投手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
2010年のドラフト同期、石川の一二三選手(左)と福井の岩本投手。

 今月1日、2日とルートインBCリーグとの交流試合で北陸へ遠征していた阪神ファーム。まず金沢市民野球場で石川ミリオンスターズと、翌日は福井フェニックススタジアムで福井ミラクルエレファンツと対戦しました。試合結果はこちらでご覧ください。→<石川編 江越選手が2打席連続HRで5打点!> <福井編 1985年 日本一のV戦士が対決!>

 きょうは、縁あって石川と福井の選手となった元阪神タイガースの2人、一二三慎太選手(24)と岩本輝投手(24)の話をご紹介します。2人は2010年のドラフトで入団した同期で、同級生。昨年10月1日に戦力外を通告されました。その時の記事はこちらです。→<第1次戦力外通告は9人 <筒井、小嶋、坂、柴田、鶴、二神、岩本、一二三、トラヴィス>>

今は立派な“陸上部”です!

まずは阪神ベンチで掛布監督に挨拶。
まずは阪神ベンチで掛布監督に挨拶。
筒井コーチと握手をする表情が印象的でした。
筒井コーチと握手をする表情が印象的でした。

 昨年11月の12球団合同トライアウトを受けず、投手として再起するため右肩を手術した一二三慎太投手(ここからは投手と書かせていただきます)。石川ミリオンスターズには練習生での入団となりました。まずはリハビリのスタートです。3月に石川から正式発表された際、連絡をしたら「夏前にキャッチボールができていれば」と話していたのですが、その通りキャッチボールを始めました。

 最近では「60メートルから70メートルの距離で、2日投げて1日休んで。痛みが出てきたらトレーナーと相談して」という状況だったそうです。ただし、ここ2週間くらいは少し痛みがあってノースロー。その分「めっちゃ走ってますよ」と言っていました。今はいわゆる“陸上部”ってとこですかね。

スタンドの階段を昇り降りする一二三投手(うしろ)。
スタンドの階段を昇り降りする一二三投手(うしろ)。

 1日の試合前も、投手陣と外野でトレーニングをしたあと、もう1人の選手と一緒にどこかへ。なかなか戻ってこないなあと思って何気なくスタンドを見たら…階段をダッシュしているじゃありませんか!

 私が気づいた時はもう三塁側ベンチの上を過ぎ、バックネット裏に差し掛かっていた2人。そこからも1ブロックずつ昇って、降りての繰り返し。つまり三塁側から一塁側までの内野席を全部走るわけです。これはキツイだろうなあ。現に最後は一塁側の端っこで、2人とも動けずにしばらく座り込んでいました。

来年のマウンドを目指して

 ベンチにいた選手に聞くと「あれはリハビリ組のメニューなんです。めちゃくちゃしんどい!死にますよ」とのこと。また「彼はそれだけでなく、自分で考えたランニングメニューもやっています」と。本人に尋ねたら「別に変わったことじゃなくて、いろいろやってるだけっす」と笑いました。とにかく肩の可動域を広げることが第一。焦らず、投げられる体を取り戻してください。

懐かしい面々と会って、この笑顔です。
懐かしい面々と会って、この笑顔です。
シートノックのお手伝い中。
シートノックのお手伝い中。

 「痩せたって言われるけど、94キロあります」と一二三投手。阪神時代と変わらないですね。ご飯はちゃんと食べてるの?「メチャクチャ食ってますよ!」。自分で作っては…いないでしょうね。「ありえへん!」。やっぱり(笑)

 なお前回の記事でも書いたように、いろんな選手と話す楽しげな一二三投手が随所に見られた一日です。掛布監督やコーチ陣、トレーナーの方々。しっかりと握手を交わして再会を喜んでいました。中でも西田選手や植田選手には、ノック中にゲキを飛ばしたりヤジったり。西田選手も、飼い主を追いかける犬みたいにニコニコくっついていて、思わず笑ってしまいます。

 やがて阪神の打撃練習が終わると「シートノックの手伝いをせなあかんから行きます」と立ち上がる一二三投手。グラウンドへ踏み出してから振り向き「ちゃんとやってるっすよ」と、いい笑顔を見せてくれました。その様子を見ながら「我慢して、しっかりトレーニングしています。来年を楽しみにしてください」と石川の渡辺正人監督。はい、楽しみに待っています!

「投げるからには抑えたい」

ベンチで談笑中。岩本投手(左)、陽川選手(背中)、板山選手。
ベンチで談笑中。岩本投手(左)、陽川選手(背中)、板山選手。
外野に行って、そっと近づくと榎田投手(左)が笑顔で。
外野に行って、そっと近づくと榎田投手(左)が笑顔で。
今度は外野手に接近。緒方選手です。
今度は外野手に接近。緒方選手です。

 次に福井ミラクルエレファンツの岩本輝投手。4月に行われたOBC高島とのオープン戦でも会ったのですが、それからまた一段とスリムになったような気がします。ベンチ裏で挨拶をした掛布監督にも握手しながら「痩せたなあ!」と何度も言われていました。他にもコーチやマネージャー、トレーナーの皆さんに「痩せたねえ!」と。とにかく会う人、会う人みんな同じ反応で本人も苦笑いです。

 確かに顔もさらに小さくなったと言ったら「それは、このせいじゃないですか?」と髪の毛を指差す岩本投手。あーなるほど。確かに。タイガースに入団してきた当初のような、学生っぽく刈った感じですもんね。実際、体重は86キロから82キロにダウンしていますが、ウエートの量を意図的に減らしたのもあるみたいですよ。投げるスタミナに問題はないのでしょう。

 みんなと会うのは昨秋以来?「そうですね。人によっては」。ことし7月に鳴尾浜で対戦した北陸選抜チームのメンバーに、2日後の公式戦先発が決まっていた岩本投手は入っていませんでした。なので阪神相手に投げるのも退団後は初めてです。でも試合となれば、旧知の選手たちでも加減するつもりはない?「投げるからには抑えたいですね」とニヤリ。そして「ケガをしないように抑えたい」と付け加えました。

2日後の先発で5勝目!

2日の阪神戦で登板した岩本投手。
2日の阪神戦で登板した岩本投手。
試合終了の整列を終えて引き揚げるところ。
試合終了の整列を終えて引き揚げるところ。

 そうそう、阪神ベンチでは「きょう投げるの?先発か?」と、これまた会う人みんなに聞かれて「2回に1イニングだけ」と答える岩本投手。実は、今回もまた2日後に公式戦の先発が決まっていたためです。ちょっと残念でしたが、本来は登板予定でなかったはず。北村照文監督は「これが練習の代わりと思って投げてくれれば」と話していました。

 その阪神戦の2回表に登板した岩本投手。まず5番・西田選手を大きな中飛に打ち取って、緒方選手は二ゴロ、森越選手に四球を与えるも、最後は小豆畑選手を一ゴロで無失点です。試合後に聞いたら「西田のセンターフライ、危なかった~!いかれたと思った…」と目を丸くしながら思い出して苦笑。四球については「いいんです。点を取られるよりは」とのこと。1回無失点、よかったですね。

 BCリーグではずっと先発を任されていて「去年あんまり投げていないので、投げられるのが一番」と言います。髪型だけでなく、本当に阪神入団時のような笑顔だったので「今、楽しい?」と尋ねてみると「楽しいです!」と即答でした。なお阪神ファームとの交流戦の2日後の4日、富山GRNサンダーバーズ戦で先発した岩本投手は勝ち投手となり後期2勝目、通算5勝目を挙げています。

《おまけ》

 また以前もどこかで書いたと思いますが、福井の木下裕揮選手(24)は2人と同い年で、一二三選手とは旧知の仲。実は同じところで肩を手術したそうです。木下選手はもう3度目だとか。打つ方はもう大丈夫で、スローイングがまだと言っていました。2日の対戦では9回裏2死で代打出場したものの、山本投手に三振を奪われて試合終了。残念でした。次の機会にはヒットと、守備も見せてください。

三振で最後の打者になってしまった木下選手。
三振で最後の打者になってしまった木下選手。

 ちなみに木下選手は中学時代のチームで西田選手の1つ先輩、東北福祉大学では長坂選手の2つ先輩。というわけで1日の夜には3人で食事に行ったそうです。西田選手いわく「おごってもらった」とか。その木下先輩から「直斗と拳弥をよろしくお願いします」と頼まれましたよ。お任せください!と私が言うのも変ですけど(笑)。岩本投手のこともよろしくお願いしますね。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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