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阪神タイガースの西田直斗選手が、6月19日に支配下選手へ復帰します!

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
支配下登録が発表された17日、試合後に戻ってきた鳴尾浜で取材を受ける西田選手。

きのう6月17日の午後1時前、球団広報から『阪神タイガースは本日、育成選手の西田直斗選手(24)と支配下選手契約を締結しましたので、お知らせ致します。それに伴いまして背番号が「133」から「93」に変更となりますので、併せてお知らせ致します。なおNPBでの正式支配下登録は、6月19日(月)の公示となります』というメールが届きました。あす19日は大安ですね。

昨年4月15日の田面巧二郎投手、4月27日の原口文仁選手と同じ、午後1時前後の発表(この2人も大安!)。2014年の伊藤和雄投手や昨年の原口選手は即昇格ということもあり1軍の練習が終わった時に甲子園で話を聞いています。田面投手は午前10時半開始だった京セラドームでのウエスタン・オリックス戦終了後にバスの前でした。今回の西田選手は豊中ローズ球場でのウエスタン・オリックス戦が終わり鳴尾浜へ戻ってからの取材対応です。

午後5時頃にチームのバスが着くと西田選手はいったん虎風荘の中へ入り、そのあとバットを手に室内練習場へ。今岡打撃兼野手総合コーチらとともに、しばらくバッティング練習をしたようです。それが終わったあと話を聞きました。

掛布監督、今岡コーチの強い推薦

西田選手の前に、高野栄一球団本部長の話をご紹介します。まず、ここまでの振り返りです。「去年まで、いいものを持っていたけどいい結果が出ず、取り組み方ももう少しいけるんじゃないかということで、いったん育成にしました。春先から、特にバッティングがいいと現場から言われたが、その時点では見送った。もう少し結果を残してもらってからのほうがいいと」

経緯としては「きのう(ウエスタン・オリックス‐阪神戦がある)舞洲サブ球場へ行って、掛布監督と今岡コーチから強い推薦を受けたので、金本監督と相談して『すぐ行きましょう』と。1軍に上げるタイミングも考えましたが、モチベーションのこともあるので、もう一回頑張ってもらおうと、きょう(17日)通達しました」ということだったようです。

西田選手自身について「バッティングは非常にいい。掛布監督、今岡コーチ、濱中コーチが熱心に指導している。凡打でも内容が非常にいい。打ってなんぼの選手。守りも、となると競争は厳しくなる。金本監督もバッティングを期待しているので、まずはバッティングを。他をおろそかにするわけではないが、アピールポイントなので期待している」との評価。

そのバッティング、今季は1年目を思い出すような西田選手らしい打球や、代打の1打席でヒットを放つ場面も増えた気がします。5月18日には2年ぶりの5番を打ち、5月28日は2安打2打点で打率.306をマークするなど好調でした。そのあと少し数字は落ちたものの、1軍に上げるタイミングも考えたという高野本部長の話を聞くと期待しちゃいますね。4年ぶりの1軍昇格を。

自分に求められるものは何か?

どろんこ3連発を。まず昨年7月27日の和歌山箕島球友会戦。
どろんこ3連発を。まず昨年7月27日の和歌山箕島球友会戦。

では、きのうの西田選手本人のコメントです。吉報が届いたのはいつかと尋ねたところ「きょうの朝です」という返事。契約も朝のうちに交わし、それから豊中へ移動したようです。慌ただしかったと思いますが、あちこち連絡はしましたか?「家族と友だち何人かくらい。電話で直接言いたい人もいるので、それはまだ」。もうニュースでご存じでしょうけど、ちゃんと自分の口で報告したい人がいますよね。昨夜は電話をしまくったかな。

今の気持ちは?「育成契約を言われた去年のオフから、ことしは支配下というのがまず1つの目標だった。もっと早くなれたらよかったけど、でも(支配下に)戻れたことは素直に嬉しいです!」。とても穏やかな笑顔で喜びを表した西田選手ですが、そのあとは表情を引き締めて続けました。

続いて昨年8月18日のソフトバンク戦です。
続いて昨年8月18日のソフトバンク戦です。

「今からの方がしんどいと思います。支配下は1つの目標ですけど、最終目標は1軍で結果を出すことなので。そのために準備をしてきました。これからは登録されれば1軍に行ける。今ちょっと打率が下がってきているから、もっともっと打って上がれるようにしたい」

アピールするところを聞かれ「バッティングを期待していると言われるし、それもわかっていたので、まず自分はバッティングと。いろんな人に話を聞いたり、今岡さんに去年からつきっきりで見てもらって、自分なりに工夫して今の形になったけど、今岡さんにも感謝しています。バッティングは、もっともっと上を目指してやっていかないとダメですね。今のままじゃ1軍では打てない。もっとパワーとか、スイングのキレとか上げていきたい」と西田選手。

最後は昨年9月11日の中日戦。以上、夏のどろんこ編でした。
最後は昨年9月11日の中日戦。以上、夏のどろんこ編でした。

育成選手で過ごした半年間の思いは?「結果を出さないと戻れないので、出場した試合は絶対に結果を出すというつもりで。内容にもこだわって、どうやったら結果が出るかを考えながらやっていました。しんどいとか、つらいとか、そんな気持ちはなかったです。失うものは何もない。やるしかないと思っていたので」。もしかすると首脳陣は、そういう“覚悟”みたいなものが見たかったのかもしれませんね。

とにかくよかった、おめでとう!と取材陣から声をかけられ「ありがとうございます」と微笑みながらも「まだ目標は達成できていないので」と言う西田選手。1軍出場は2年目の2013年7月28日、DeNA戦(甲子園)の1試合だけ。代打からの2打席は2三振という結果でした。『打率.000』を書き換えることが次のミッション、最終目標はもっともっと高いところにあるはずです。

「バッテイングのことを第一に」

育成選手として迎えた2017年2月の安芸キャンプで、初めて身に着けた133番のユニホーム。1年前には田面投手、原口選手、一二三選手、トラヴィス投手が3ケタの背番号でスタートしましたが、ことしは新たに育成契約となった西田選手のみ。そんな中で取り組んだのは「バッティングのことを一番に。バッティングだけでもいいくらい」というテーマです。

昨年10月のみやざきフェニックス・リーグ。このあと育成契約となります。
昨年10月のみやざきフェニックス・リーグ。このあと育成契約となります。

これまでを振り返って「1年目(2012年)は高校からやってきたことを、そのままやろうと。3年目、4年目は沖縄キャンプに呼んでもらったけど4年目は途中から安芸に来て、いろいろ自分で考えてやり出した頃ですね。西岡さんと自主トレでやって、西岡さんとか先輩を見て自分もやらなあかん、自分を変えたいと朝早く走ったり。自分で考えたし、考えすぎた面もあったけど、いろんな人から話を聞けた。バッティングフォームから打ち方まで、合っているか間違ってるかは別にして考えました」と言います。

「5年目の去年は狩野さんと一緒に自主トレをさせてもらって、秋季キャンプは今岡コーチと。そこで今岡さんに、“タイミングが遅い”と言われたんです。去年1年間、今岡さんに見てもらって、ことしはこれでいこうと決めました。自分でも思ったけど、周りからも打球が変わったと言ってもらった。1年目で打ったので、あれがいいとみんな思っているけど、自分では今が一番いいと思っています」

去年までと違う自分は感じますか?と尋ねたところ「体の使い方やバッティングフォームに関しては『これや』『これであかんかったら、しゃーない』というくらい信じてやっています。それは今までと違うとこかな。自分のバッティングはこれっていうのが、今はある。自信を持って『こうやって打つ』と言える。そこが一番違うとこだと思います」と、力のこもった返事でした。

覚悟を持って過ごしたオフ

金本監督になって、中でもウエートはチーム全体で重点を置いて取り組んでいます。西田選手もしかり。

ことし5月の鳴尾浜で、試合後に大山選手(左)とランニング中です。
ことし5月の鳴尾浜で、試合後に大山選手(左)とランニング中です。

「毎年、体重も増えてきたし。去年は80キロを切らなかったんですよ。それまで78キロか79キロをキープしている状態で、3年目までは途中で落ちたりしてたけど。4年目からはプロテインとか、いろいろ考えてもらって体重が落ちなくなりました。体重を維持して、オフで増やして。5年目は80キロちょっと。そのオフは87キロくらいいった。去年1年やって、最終的に82キロか83キロ。秋季キャンプが終わって85キロくらい」

そうそう、伊藤隼太選手の名前が出てきましたよ。「年明けは淡路の自主トレで、12月の後半はずっと隼太さんと慶応大でトレーニングをしたんです」。それはどういうきっかけで?「隼太さんから誘ってくれて。ウエートするとこが年末は閉まってしまうので、一緒に行きました。しっかり食べたし。実家には年末年始しか帰っていないです」

育成契約を打診され、受けるべきかどうか悩んだという西田選手。話を聞いたり相談をしたり、辞めることも選択肢にはあったと思います。これまで、育成選手になって1年でチームを去る先輩たちを見てきたから…。でも決めました。タイガースのユニホームで野球を続けると。そして何が何でも支配下に、それも開幕前に、という覚悟で過ごしたオフだったんでしょうね。

打ちそうだと思わせることが大事

締めくくりに、今岡コーチの話をご紹介します。安芸キャンプの際に「ことしは特に技術的なことより、いろんな引き出しの中から自分に合ったもの、自分が納得したものを探しなさいよと言っています」という話でした。また「結果が出るに越したことはないけど、“打ちそうだ”という雰囲気も大事なんですよ。3打席凡退して、4打席目のチャンスを誰にあげるかとなった時にね。その雰囲気は打席だけじゃなく、アップが始まったところから」とも。

甲子園でのウエスタン公式戦。今度はぎっしり埋まったお客様の前でヒットを!
甲子園でのウエスタン公式戦。今度はぎっしり埋まったお客様の前でヒットを!

そして、きのう豊中から鳴尾浜に戻ってすぐ聞いた今岡コーチの第一声は「これから、ですね」でした。「僕たちがここで見ているのは、ファームでやれるかということじゃなく、1軍でどうかなんですよ。西田なら “打つこと” でしょう?3月にオープン戦に呼ばれて何を感じたか。比べるものは去年と違ったはず。彼自身がそう捉えないとね」

また育成契約になった時も「もう1年ファームでできる、っていう気持ちでいるならダメだった」とのことで、今回の支配下復帰で「よかった。もう1年メシが食える、ではない。そう考えているなら辞めるべきだと僕は思う」との言葉がありました。もちろん西田選手だけに言ったものではありませんし、厳しいようですけど、それこそがプロの世界。「ただ」と今岡コーチは続けます。「もう一度チャンスをもらった。その喜びは感じていいですよ」

高野本部長が「打ってなんぼの選手。とにかくバッティングでアピール」と話しています。安芸キャンプで「打ちそうな“雰囲気”も大事」と語った今岡コーチからは「結果が出ていなくても、打ちそうだなと思わせたら勝ち。変わったな、打ちそうやな、と思わせてほしい」との言葉がありました。支配下に戻ることは単なる通過点で、本当の勝負はここから始まるのです。

西田選手は言います。「今岡さんもですけど、掛布監督や他のコーチ、みんなに感謝しています。だから恩返しがしたい。1軍で結果を出して」。もちろんご家族も本当に喜んでおられました。父の日を前に届いた吉報が、何より嬉しいプレゼントだったことは言うまでもないですね。

昨年6月、新潟三条にて。野球教室で見せる西田選手の笑顔は秀逸です!
昨年6月、新潟三条にて。野球教室で見せる西田選手の笑顔は秀逸です!

それと土日は豊中ローズ球場でのオリックス戦でしたが、17日の試合後にはもう『93』と書かれたボードを手にバスを見送ってくださったファンの方がいらっしゃったとか。もちろん18日には球場入りの時から「おめでとう!」と祝福を受けたそうです。もしかすると育成選手を経験したからこそ、その温かさがより感じられるかもしれません。

新日鐵住金鹿島に所属する阪神OBの玉置隆投手が先日、岡崎選手や原口選手の活躍に「金本監督はいろんな選手の人生を変えましたね」という名言を発してくれました。西田選手にとってもこれが、高く跳ぶための踏み切り板になるよう祈ります。

※西田選手に関する過去の記事はこちらからどうぞ。

★ちょうど1年前の記事です。→<西田直斗選手がプロ3本目の満塁ホームラン!しかし9回に悪夢が…>

★2015年8月30日のウエスタン広島戦(姫路)で放ったホームランは、とても印象的でした。→<姫路で初の広島戦、秋山が好投して西田は今季1号を放つも敗戦>

★その少し前、同じ2015年の6月23日に出したものです。→<西田直斗選手 ―自分で変えた自分を信じて>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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