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もと阪神・玉置隆投手が涙の完投! 新日鐵住金鹿島、2年連続で都市対抗出場決定

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
プレーオフにもつれ込んだ都市対抗の北関東2次予選。玉置投手の気迫が見えます。

各地区で2次予選が行われ、本戦出場チームが続々と名乗りを上げている『第88回都市対抗野球大会』。きょう9日に中国地区の2代表が出揃い、あとは順調に消化できれば北海道地区の1チームが11日、東北地区の2チームは12日、北信越地区の1チームが11日に決定。また近畿地区は残り3チーム(全5枠)が12日までに決まります。

阪神タイガース退団後に社会人でプレーをする選手たちは多く、近畿では三菱重工神戸・高砂の若竹竜士投手、カナフレックスの藤井宏政選手、 パナソニックの阪口哲也選手、和歌山箕島球友会の穴田真規選手、そしてOBC高島は今季から野原祐也監督が就任しました。近畿以外では茨城の新日鉄住金鹿島・玉置隆投手、富山のロキテクノベースボールクラブで兼任コーチを務める藤田太陽投手、また東京のセガサミー・前田忠節コーチなど。他にも監督やコーチ、選手で社会人チーム所属の阪神OBはいると思いますが、私のわかる範囲ということでご了承ください。

その中で、阪口哲也選手だけでなく梶原康司監督も阪神OBというパナソニックは、5月18日の1回戦で関メディベースボール学院に9対0と大勝したものの、5月30日の2回戦(準々決勝)では三菱重工神戸・高砂に2対1の惜敗。敗者復活の第3代表決定・1回戦では大和高田クラブに4対3で逆転勝ちしています。次の第3代表決定・2回戦(準々決勝)が梅雨入りした6月7日にあり、8回終了で0対0のまま雨天引き分け。きょう9日にその再試合が行われて8対1でニチダイに勝ちました。阪口選手は「代打でセンターライナー」だったとか。あす10日、日本新薬と第3代表をかけての決勝戦です。

また若竹竜士投手がいる三菱重工神戸・高砂は5月30日のパナソニック戦に勝ち、翌31日は日本新薬との準決勝で延長13回サヨナラ負け(1対0)。敗者復活に回って6月5日、第2代表の準決勝はNTT西日本戦に1対0で敗れました。続いて第4代表の準決勝が6月8日に行われ、大阪ガスに3対0の完封負け。次は11日に第5代表の準決勝でニチダイと対戦します。最初に勝っておくと、こんなに敗者復活のチャンスがあるんですね。

藤井宏政選手が引退を表明

ここで1つ残念なお知らせがあります。4月18日に鳴尾浜で練習試合を行い、右ひじを痛めながらも途中出場したカナフレックス・藤井宏政選手が、このたび現役を引退することになりました。練習試合の様子はこちらです。→<練習試合で竹安投手が6回無失点 カナフレックス・藤井選手は打撃を再開>

ことし4月18日、鳴尾浜での練習試合。代打で出場した藤井宏政選手。
ことし4月18日、鳴尾浜での練習試合。代打で出場した藤井宏政選手。

都市対抗は無念の1次予選敗退で、その後しばらく話ができていなかったんですけど、6月になって届いた知らせが「選手引退しました」というもの。痛めた右ひじのことも含めて、いろいろ悩んでいたみたいですね。まだまだ早いと言ったら「まあ一区切りです!」という返事で…。今週からコーチに転身しました。今季は背番号10のままでいく予定だそうです。

三菱重工長崎で4年間プレーした野原将志選手は昨年末で引退。今は福岡の不動産会社で営業を担当しています。革靴にはもう慣れたかな?野原選手引退に際しての記事はこちらからご覧ください。→<ユニホームを脱ぐ元阪神・野原将志選手 「これからは、名刺が僕の商売道具です」>

なお三菱重工長崎硬式野球部という名前も昨年でなくなり、年明けから横浜市の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)に統合されました。阪神タイガース・江越選手の弟、海地選手や、奥村投手、鶴田選手、加治前選手、八戸選手ら旧長崎のメンバーも活躍した2次予選を経て、見事に西関東地区の第1代表となっています。

頼れる右腕、再び東京ドームへ!

さて、茨城県鹿嶋市の新日鐵住金鹿島に入って2年目を迎えた玉置隆投手。昨年はチーム3年ぶりの都市対抗、さらに秋の日本選手権も合わせて創部以来初となる“ダブルドーム”出場を決め、OBの横山投手と石崎投手も大喜びでした。ことしも茨城1次予選は順当にクリアし、6月1日からの北関東2次予選に進んでいます。このブロックは日立製作所、SUBARU(昨年までの富士重工業から変更)、そして新日鐵住金鹿島が常連ですね。では鹿島の試合結果と、簡単な経過をどうぞ。

新日鐵住金鹿島

北関東2次予選(日立市民公園野球場)

【1回戦トーナメント】

6/1 ○5-0 太田球友硬式野球倶楽部

【代表決定リーグ戦】

6/2 ○4-1 SUBARU

6/3 ●2-6 日立製作所

6/4 ○7-0 全足利クラブ

【代表決定トーナメント(プレーオフ)】

6/5 ○3-0 日立製作所

6/6 ○3-2 SUBARU

※2年連続、17回目の本大会出場

玉置投手は、まず6月2日のSUBARU戦で先発しました。打線が2回に相手エラーや2四球などで2死満塁として1番・藤本選手が2点タイムリー二塁打を放って先制!4回にも2安打で1点を追加。玉置投手は1回、2回と得点圏に走者を置きながら0点に抑え、5回は2死満塁としたピンチをしのぐなど、7回まで3安打無失点でした。8回に内野安打とタイムリーで1点返されますが、9回に打線が1点を加え、その裏を三者凡退で締めて9回5安打1失点の完投勝利!1回を除く毎回の10奪三振でした。

力投する玉置投手。気持ちが伝わりますね。
力投する玉置投手。気持ちが伝わりますね。
抑えてベンチに戻る時の表情さえも気合十分です。
抑えてベンチに戻る時の表情さえも気合十分です。

3日の日立製作所戦は敗れたものの、4日の全足利クラブは完封勝ちで2勝1敗でリーグ戦を終えた新日鉄住金鹿島。午後の日立製作所-SUBRU戦で、既に2勝している日立が勝てば、鹿島は第2代表としての本大会出場決定!だったんですけど…SUBARUが意地を見せ、なんと3チームが2勝1敗で並んでしまいました。得失点差で1位・SUBRU、2位・日立、3位・鹿島という順位となり、プレーオフ(代表決定トーナメント)へ。

その1試合目は5日、日立製作所に3対0で勝利。大貫投手が完封しています。次は6日のSUBARU戦で、リーグ戦と同じく玉置投手が先発。ここで勝って一気に決めたいところですが、3回に3安打で1点を先取され、4回にも自身の送球エラーから追加点を与えて2対0とリードを許しました。打線は7回までわずか2安打で無得点。

しかし8回、先頭の7番・佐藤竜選手が右前打、1死後に代打・谷口選手の右翼線二塁打などで2死二、三塁とし、2番・木村選手の三ゴロがエラーを誘って1点返します。さらに死球で2死満塁、4番・高畠選手が左翼線へ2点タイムリー二塁打!3対2と逆転すると、あとはヒットを許しながらも0点に抑えた玉置投手。1回と7回以外はすべて走者を出すなど9安打を浴びるも、4番から3三振を奪うなど計8三振と要所を締めました。

これで2連勝となった新日鉄住金鹿島は、翌日のSUBARU- 日立戦を待たずに優勝が決定!見事、第1代表として東京ドームへ乗り込みます。なお7日の最終戦は7対2で日立が勝ち、第2代表に。これで北関東からは昨年と同じ2チームの出場です。昨年の2次予選の模様は、こちら。→<社会人の夢・東京ドームへ!もと阪神の選手たちが戦った都市対抗予選 >

疲労困憊だった三つ巴の戦い

では、玉置隆投手のコメントをご紹介しましょう。6日の夜は祝勝会もあったようですが、翌朝の出社前に電話をくれました。

2連勝で本大会出場が決まった瞬間。真ん中に背番号30の玉置投手が…
2連勝で本大会出場が決まった瞬間。真ん中に背番号30の玉置投手が…

実は玉置投手も、藤井選手と同じく4月初めに右ひじを痛めていたみたいで…。そういえばオープン戦等で名前を見ないなあと思っていたら、そういうことだったんですね。公式戦はほぼ、ぶっつけ本番にみたいなものだとか。「2か月離れていて、痛い中でも投げていたら何とかなりました」と振り返るのは、大会まで1ヶ月を切った頃からの“復帰過程”です。

「無理して投げた、打たれた、では意味がない。それだけはしたくなかったので、完璧な準備をしようと思いました。できるだけ毎日ブルペンに入って、シートバッティングとか志願して入れてもらって、短い期間に徹底して実戦感覚を取り戻そうと。練習試合も2試合投げていますよ」

それでもう公式戦で2試合に完投?しかも中3日での先発ってすごい。「痛くて無理だというのは全然なかったですよ。それが社会人なんで」と、電話の向こうでニヤリ?という感じが伝わってきて「投げられて、結果が出て、本当によかった!」と、これは心底ホッとした声でした。

昨年は第2代表だったんですが、第1代表って、やっぱり違うもの?「違いますねえ。今回は三つ巴になって、チームも監督もスタッフも、心身ともにクタクタだったし、早く決まってよかったって喜びもありますね。いやーほんま、しんどかった!」。本当はリーグ戦で決まっていればベストだった?「あそこで決まっていたら第2代表だったので、それが第1代表になったのはいいけど、気持ち的にはしんどかったですねえ」

最高のチーム、最高の野球人生

MVPに輝いた玉置投手。試合後の表彰式にて。
MVPに輝いた玉置投手。試合後の表彰式にて。

玉置投手にとっては2年目の戦いなので、少しは余裕があったかと聞くと「まったくないです!1年だけかと言われたくなかったから」という答え。なるほど、もしかすると昨年と同じか、それ以上の重圧を感じていたかもしれません。

そして、都市対抗2次予選北関東大会のMVPにも選ばれたわけで。確か昨年も表彰されていましたよね?「あれはMVPじゃなくて、敢闘賞です。MVPは第1代表のチームから選ばれるので」。それはさらに栄誉ですね。「MVPはいただきましたけど、はっきり言って僕じゃないです。名前を挙げたらきりがないほど、誰がMVPでもよかった。たまたまです」

登板は2試合とも同じSUBARU戦で、リーグ戦は先制して逃げ切り、プレーオフは逆転勝ちと違った展開でした。「プレーオフの方は、みんなが繋いでバトンを渡してくれたから、きょう決めないと!と思った。みんな疲れ切っていたんで、きょうしかない!って」。そこで8回に逆転してくれた味方打線に感謝ですね。

「涙が出ました。まだ試合は終わっていないのに、ブルペンで泣いてしまいました」

そのあとをよく抑えたのも、さすが玉置投手です。「ここで打たれたら…と思った。気持ちだけでしたね」。しっかりと噛みあって、また強くなったのでは?「最高のチームですよ!最高の野球人生ですね」。再び戦いを挑めることになった都市対抗の本大会。「去年は(日本選手権の京セラと合わせ)ダブルドームに行けたけど、どちらも初戦で負けてしまったので、ことしは借りを返しにいかないと」。2回戦、3回戦と予定を組んでおきます!

“同期”・岡崎選手の活躍が嬉しい

昨年の都市対抗野球。ことしも東京ドームで、この幕が見られます。
昨年の都市対抗野球。ことしも東京ドームで、この幕が見られます。

最後に、同じ2004年のドラフトで入団した岡崎太一選手についても聞いてみました。13年目でのプロ1号ホームラン、2日連続のお立ち台はニュースなどで見ていたのでしょうか。「見ましたよ!うれしかったですよ~」。歳は違っても“同期”という特別な思いも?「同期っていうのはあんまりないですけど、個人的にすごく好きな人なので」。へえ~そうなんですね。

「社会人に行ってからも、大会が決まって祝勝会をしていただいたり、帰ってきたらご飯に連れていってもらったりしています。阪神にいた時、誰よりも努力する姿を見ていたし。やっとか~というより当然!という感じです」。そして玉置投手は「わからないもんですね、人生って。僕も金本監督の時にやりたかったです。昔のタイガースでは考えられないですよ」としみじみ。そのあとに続けた言葉は、なかなかの名言でした。

「金本監督は、いろんな人の人生を変えましたねぇ」

クラブチームは既に次の目標へ!

その金本監督が現役時代によく“いじっていた”野原祐也選手は、ルートインBCリーグの富山で現役を引退し、ことしから滋賀県のOBC高島で監督を務めています。「野原マジック」とチーム関係者や選手のご家族が言われるように、バッティング面で就任効果が出ているみたいですね。投手陣も少しずつ故障から復帰してきて、都市対抗は滋賀1次と京滋奈1次を勝ち抜き、チーム史上初の近畿2次予選進出。その経過は、この記事でご覧ください。→<もと阪神・“野原祐也監督”率いるOBC高島が、都市対抗近畿2次予選へ初進出! >

OBC高島の近畿2次予選は、このような結果になりました。

OBC高島

近畿2次予選

【1回戦】明石

5/18 ●1-7 ニチダイ

【第4代表決定戦】舞洲

6/1 1回戦 ○7-2 NSB

6/6 2回戦 ●2-3 大和高田

1回戦で敗れてしまったため、次はもう第4代表を目指す敗者復活戦へ回ります。ここで3つ勝たなければ、あとがありません。その敗者復活戦、まず6月1日のNSBベースボールクラブ戦いは、中盤に先制しながら即逆転されますが、8回に追いついて延長戦へ。2対2で迎えた10回表に一挙5点を取って勝ちました!しかし6日の2回戦は、京滋奈予選で破った大和高田クラブ相手に、1点差まで追い上げながら及ばず。

でもすぐに切り替え『第42回全日本クラブ野球選手権大会』を目指します。滋賀1次予選は6月17日からスタート。ここは当然突破して、京滋奈で争う7月2日の東近畿2次予選で、大和高田クラブにリベンジすることを誓いました。

和歌山箕島球友会は、穴田真規選手が入団して4年目で初の都市対抗1次予選敗退となり、やはり今度はクラブ選手権出場をかけて戦います。なんといっても2015年に優勝しながら昨年は本大会すら行けなかった悔しさを、ことしはぶつけてくれるでしょう。クラブ選手権の大阪・和歌山1次予選は6月18日から、西近畿2次予選は7月1日です。和歌山箕島球友会の都市対抗予選については、こちらで。→<もと阪神・穴田真規選手にとって、初めての都市対抗1次予選敗退…>

藤田太陽投手兼任コーチのロキテクノベースボールクラブは、都市対抗1次の富山県大会は突破したものの、きょう9日から始まった北信越2次予選で初戦敗退しました。残念ですが、次はクラブ選手権初出場を目指して7月1日の富山1次予選を勝ち抜くこと。さらに7月29日からの北信越2次予選をも勝ち抜いてほしいですね。9月には、みんな揃ってメットライフドームで会いましょう!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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