もと阪神・“野原祐也監督”率いるOBC高島が、都市対抗近畿2次予選へ初進出!
7月14日から開催される『第88回 都市対抗野球大会』。社会人野球でプレーを続ける、もと阪神タイガースの選手たちも東京ドームを目指して戦っています。各地区の1次予選はクラブチームが出場し、次の2次予選から企業チームが参戦というパターンが多いですね。阪口哲也選手が所属するパナソニックも、近畿2次予選からです。
穴田真規選手がいる和歌山箕島球友会は、4月15日に行われた大阪・和歌山1次予選の決勝で敗れ、4年ぶりに近畿2次予選進出ならず。また藤井宏政選手のカナフレックスは、残念ながら滋賀1次予選で涙を飲んでいます。その滋賀を制したのが、野原祐也監督率いるOBC高島。4月10日に行われた滋賀1次予選決勝(甲賀市民スタジアム)は2対0の完封勝ちでした。
※野原祐也監督とOBC高島に関する記事は、こちらからどうぞ。
・3月11日掲載<もと阪神タイガースの野原祐也選手が、社会人野球のクラブチーム監督に就任>
・4月4日掲載<もと虎戦士が対戦 OBC高島・野原祐也監督 vs 福井ミラクルエレファンツ・岩本輝投手>
近畿2次進出をかけた京滋奈予選
5月11日、宇治市の京都府立山城総合運動公園野球場(太陽が丘球場)で行われた京滋奈1次予選は、滋賀1次を勝ち抜いたOBC高島、同じく京都のミキハウスベースボールクラブ、奈良の大和高田クラブが参加しました。近畿2次の前にあるため、みんなが「1.5次予選」と呼ぶ京滋奈1次予選に、OBC高島は3年ぶりの出場です。ことしは3チーム中2チームが近畿2次予選へと進めるとはいえ、ミキハウスも大和高田も京滋奈予選は常連と言えるクラブチームの強豪。カナフレックスも、ここで苦労していたんですよね。
私は第2試合の途中から観戦できました。まずは第1試合の結果からご紹介します。
《京滋奈1次予選》第1試合
OBC高島-大和高田クラブ
高島 001 400 100 = 5
大和 000 100 010 = 2
OBC高島は2回、佐竹選手のタイムリーで先制。4回には白石選手と村上選手のソロ2本などで4点を追加。その後に1点ずつ返されるも、そのまま逃げ切りました。2次予選進出に大きな1勝を挙げ、第2試合(ミキハウスベースボールクラブvs大和高田クラブ)に注目します。
《京滋奈1次予選》第2試合
ミキハウスBC-大和高田クラブ
ミキ 000 000 200 2 = 4
大和 100 001 000 3x= 5
(※延長10回よりタイブレーク)
OBC高島としては、ここでミキハウスベースボールクラブが勝てば大和高田クラブは2敗となり、次の試合で自分たちが負けても1勝1敗で2次予選へ行ける、と思って見ていました。でも実はこの試合が延長戦に入った時点で、既にOBC高島の近畿2次予選進出が決まっていたそうです。得失点差や、9回までに決着しなかった場合はポイントが違うとか。すみません、詳しく説明できなくて。
とにかく最後は負けても大丈夫ということですが、ベンチの思いは「2つとも勝って“1位”で近畿へ!」だったでしょう。
《京滋奈1次予選》第3試合
OBC高島-ミキハウスBC
高島 020 010 002 = 5
ミキ 004 000 000 = 4
<経過> OBC高島は2回1死から村上と森が連打し、1番・中野のタイムリーと今崎の犠飛で2点を先取。しかし3回、ミキハウスは二塁打と内野安打、右前打で1点。さらに投手の犠打失策で1点。これで一、二塁となって2死後、今度はサードがフライを落球…。2人を還して4対2と逆転しました。OBC高島は5回に中野のタイムリーで1点差と詰め寄り、以降も毎回走者を出して攻め続けます。
4対3のまま迎えた9回、OBC高島は先頭の白石が右前打、犠打で1死一、三塁として三浦が右前打。これにライトのエラーも重なって白石が生還!ついに追いつきました。続く村上の左前打と森の死球で満塁、またしても1番・中野が中前タイムリー!1点勝ち越し、その裏を3人目の小田が抑えて試合終了。最後はレフトへの大きな当たりで一瞬ドキッとしたものの、中野がフェンス際でキャッチしました。
ちなみにスタンドにおられた選手のご家族は、第3試合が始まる前にもう近畿2次予選進出が決まっていたことを知らされていなかったんですよ。なので最後の最後まで必死の応援だったことを付け加えておきます。
結局は得失点差やポイント計算の必要なく、2勝0敗のOBC高島と1勝1敗の大和高田クラブが近畿2次へ。クラブ選手権のエントリーをせず都市対抗に照準を合わせてきたミキハウスは0勝2敗で1次予選敗退となりました。近畿2次予選は5月18日から6月10日の間で13日間行われ、12チームの中5チームが東京ドームの本大会へ出場します。ここからは企業チームとの戦いですね。
チーム初の近畿2次予選出場!
試合後の談話をご紹介しましょう。OBC高島・野原祐也監督は「素晴らしいですね!選手がすごいです。僕は何もしていないんですけど」と感激の面持ちでした。中心打者の1人である松浪遼選手が1週間前のオープン戦で右手有鉤骨を骨折したため「いや~どうしようかと思った…」という野原監督ですが、第3試合は打ちも打ったり計15安打!不安を吹き飛ばしてくれました。16個も残塁があったので、これがつながっていたらすごいかも。
ちなみに松浪選手はパナソニック・阪口哲也選手の1つ下で、同じ貝塚リトルに所属していたそうです。そういえば、この日は阪神、中日、ヤクルト、ソフトバンク、楽天のスカウト陣がスタンドで試合をご覧になっていたと聞きました。またパナソニックの梶原康司監督の姿もあり、近畿2次予選で対戦するチームの偵察ですか?と聞いたら「監督の采配を見に」と笑顔。さて、野原新監督の指揮はどんなふうに映ったのでしょう。
その野原監督、帰り際のミーティングでも「ナイスゲーム!素晴らしい」と選手に声をかけました。またOBC高島のゼネラルマネージャー・大家友和投手も今はずっと帯同していて、試合後に「新監督になってチームが変わった点はありますか?」と尋ねたところ「まあ勝った時は何とでも言えますからね」と、こちらは非常に冷静な言葉でした。でもチームにとって初の近畿2次予選進出は大きな一歩。次の目標へつなげてほしいものです。
「我慢していたら何かが起こる」
では選手のコメント。まずキャプテンの佐竹誠人選手は、第3試合を振り返り「3回に4点取られたけど、4対3のまま我慢していたら何かが起こる、と思っていました。相手も気が緩んでいたかもしれませんけど、白石のライト前からみんな集中力がすごかった。いいものがあったと思います」と9回の再逆転劇を挙げました。
逆転されたあとの先発・那珂大心投手、6回の川上達也投手、7回からの小田悠斗投手が踏ん張ったからこそ「何かが起こる」と思わせてくれたのですね。「ほんと、よく頑張ってくれました。小田はケガが治って戻ってきたばかりで。ゴールデンウイークあたりから投げ始めて、ここまで合計3イニングくらいしか放ってなかった」と佐竹キャプテン。7回、8回の三者凡退は見事です。あれで9回の攻撃に弾みがついたと言えるでしょう。
また佐竹選手は「(滋賀1次予選・決勝の)カナフレックス戦が終わってから、ここに向けて1か月頑張ってきました。きょうは大和高田に5対2、ミキハウスに5対4で勝って自信になったと思います。2チームに比べると僕らの方が劣っているので、これは挑戦していった結果ですね。1試合目が9安打かな?2試合目は15安打。ベンチで『どうしたんや?これ』と言っていましたよ」と笑います。
最後は「1次予選より今回は成長していると思う。自信にしたい。過信にならないよう」と、キャプテンらしい言葉でした。
2次予選でも期待しています!
第3試合の先発は、4月の滋賀1次予選・カナフレックス戦で3安打完封勝ちした那珂大心投手。5回を投げ6安打5三振、3四球1死球で3回に4点を失ったものの、自責は1点でした。「エラーが重なって失点したけど、感じは悪くなかった。ランナーが出てからしっかり投げられたと思います」。球数が90近くなったこともあり、5回で降板したようですね。「2次も頑張ります!」と気合十分。
佐竹キャプテンが“キーマン”に挙げたのは、9回に反撃の口火となる右前打を放った、5番センターの白石遼選手です。第1試合もホームランを含む3安打の活躍でした。第3試合の9回は「何とかして出ようとしか考えていなかった」という先頭打者で、しかも初球を打ったってのが素晴らしい。犠打で1死二塁となって三浦選手の右前打で三塁へ進み、ライトが取り損なったのを見て同点のホームを踏んでいます。
「メッチャ嬉しい!」。白石副キャプテンの弾ける笑顔は、チームが2次予選へ初めて進めることと、それに自分が貢献できたことの喜びでしょう。野原監督になって変わったことはありますか?「打席で割り切っていける。迷いがないですね」。まさに、それが表れた初球打ちでした。
ルーキーの中野慎之介選手は1番レフトで、第1試合が3打数1安打、この第3試合はなんと6打数4安打3打点!9回に放った決勝の中前タイムリーについて「真っすぐに絞って、次に回すことしか考えていなかった」と、白石選手と同じコメントです。最後につかんだ大きなレフトフライの打球は「正直、入るかなと…。でもちょうど風がやんで、打球が死んだので」捕れたと、大きな目をクルクルさせて話します。
まだ入部したばかりで、野原新監督のことを聞いても比べようがないかなと思ったのですが「監督が選手全員に気を使ってくださるので、自分たちもすごくやりやすいです。僕、阪神不安なので(現役時代を)知っていました!今もスイングとか、すごいですねえ」と中野選手。また天理大学の出身で「ミキハウスの3番、4番と大学の先輩なんです。緊張した~」と、ルーキーらしい一面も。
最後に、話は聞けなかったものの2試合ともフルでマスクをかぶり、第1試合はホームラン、第3試合も5打数3安打だった村上塁太捕手の頑張りはハナマルです。ワンバウンドになる投球をしっかり止め、ピッチャーを助けていましたね。それに9番の森一馬選手は1打席目が右前打、そのあと四球、死球、四球、死球で打率も出塁率も10割です。グッジョブ!
5月23日は鳴尾浜で練習試合
都市対抗近畿2次予選の組み合わせは15日に発表されます。敗者復活戦などで最後の第5代表が決まるのは6月初旬なので、かなり長い戦いですね。そして6月17日から、今度はクラブチームの日本一を争う『第42回 全日本クラブ野球選手権大会』の滋賀1次予選、6チーム中1位で東近畿2次予選へと進み、ここでまた今回と同じ3チームの争いになるはず。今回、大和高田クラブとミキハウスベースボールクラブに勝ったことは、とても大きな意味を持つでしょう。
その前に阪神タイガースのファームと練習試合が、5月23日(火)12時半から阪神鳴尾浜球場で予定されています。都市対抗の近畿2次予選進出が決まっていてナイスタイミングかも。18日に初戦が行われますが、これは勝っても負けても次の試合があるので、いい練習にしてほしいですね。
古巣との対戦を熱望していた野原祐也監督も「試合を組んでいただき、本当に感謝です。精いっぱい頑張ります!」と張り切っていました。また中多惇投手は、中学時代(宝塚ボーイズ)、高校時代(聖光学園)と一緒だった、1つ下の歳内宏明投手に会えるのが楽しみな様子。でも会えるということはファームにいるわけで…そこは少し複雑みたいですけど。他にも久々の再会がありそうな気がします。皆さんもぜひご観戦ください。