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もと虎戦士が対戦 OBC高島・野原祐也監督 vs 福井ミラクルエレファンツ・岩本輝投手

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ルートインBCリーグ・福井でプレーする岩本輝投手。背番号は21です。

4月1日、阪神と広島の両チーム合わせて28四死球という、“ウソ”みたいな試合がマツダスタジアムで行われていたころ、私は福井市の福井県営球場にいました。マツダの速報を見て「阪神と広島はフォアボールを出しまくっていますねえ。長くて大変ですよ」なんて言っていたら、福井でも1イニングだけで9四死球、打者2巡の14得点という場面が…。

見に行ったのは、ルートインBCリーグ・福井ミラクルエレファンツと、社会人クラブチーム・OBC高島の練習試合です。阪神ファン、小虎ファンの方ならご存じだと思いますが、福井は昨年まで阪神のスカウトだった北村照文さん(60)、OBC高島は阪神と富山サンダーバーズでプレーした野原祐也さん(32)が新しく監督に就任したばかり。そういえば両新監督の誕生日は1月7日、同じですね。

そして、昨年まで阪神に在籍した岩本輝投手(24)が福井で投げています。これは行かなくちゃ!でしょう。この日はダブルヘッダーで、第1試合は10時開始。その10分前に着いて(プロ野球なら不可能ですけど)、両監督にとりあえず挨拶だけはできてホッ。そこへ岩本投手も「僕は2試合目に投げるので」と、ちょうど到着したところ!開幕に向け最後の練習試合だったので、どちらかで登板するとは思っていたものの、うまい具合に先発でした。

打ち合いを制して、まずOBCが勝利

第1試合は両チーム合わせて27安打という内容で14時近くまで行われ、さらに第2試合も両チームで計20四死球。球場の使用期限が17時だったため、第2試合は6回で打ち切りとなりました。ではまず、第1試合の結果からどうぞ。

練習試合・その1

福井ME-OBC高島

高島 302 011 002 = 9

福井 002 020 001 = 5

◆バッテリー

【高島】川上(4回2/3)-永井(3回1/3)‐山下(1回) / 村上

【福井】濱田(5回)‐濱岡(2回)‐武田(2回) / 中溝‐中島

◆本塁打 高島:辻田(濱田)、松浪(濱岡)

◆三塁打 高島:松浪

◆二塁打 高島:佐竹、白石 福井:浜崎、大松

<試合経過>

第1試合、福井の先発は濱田投手です。
第1試合、福井の先発は濱田投手です。
一方のOBC高島は川上投手が先発。
一方のOBC高島は川上投手が先発。
1回に松浪選手の三塁打でOBC高島が先制!
1回に松浪選手の三塁打でOBC高島が先制!
3回にはOBC高島の辻田選手がホームラン!
3回にはOBC高島の辻田選手がホームラン!

先攻のOBC高島は1回、1死から佐竹が右翼線へ二塁打を放ち、3番・松浪の右中間三塁打で生還。2死後にタイムリー内野安打で2点目、さらに連打でもう1点。3点を選手しました。2回にも4番・辻田がレフトへソロ、1死後に連打して8番・森の中犠飛で、この回2点を追加。福井はその裏、1番・森が右前打と盗塁、小野瀬はエラーで出て無死一、二塁となり、小野瀬の二盗で送球される間に森は生還します。そのあと1死三塁として4番・大松の右前タイムリー。この回2点を返して5対2です。

OBC高島は5回にも7番・中野の右前打(この日5打数4安打)と9番・村上の右前打で1点。6回は松浪の中前打…と思ったらセンターが飛び込むも捕れず、その間に一周して生還!公式記録がないので判断は難しいのですが、ランニングホームランとしました。これで7点目。福井は5回裏にヒットと四球などで2死一、二塁とし、9番・浜崎が右前タイムリー。もう1つ四球で2死満塁となって小野瀬のショート内野安打で、この回も2点。

7対4で迎えた9回、リードしているOBC高島は村上の死球と1番・白石の左二塁打で1死一、三塁として佐竹の中前タイムリー。そのあと四球などで2死満塁となり、5番・今崎の打球がサードのエラーを誘ってもう1点追加。9得点です。その裏の福井は連続四球と盗塁などで1死一、三塁とし、小野瀬の遊ゴロ併殺崩れの間に1点返しました。

OBC高島が17安打で9点、福井は10安打と12四死球ながら5点という結果です。

第2試合は19対0のワンサイド

だいたい2時間半ほどで終わり、30分休憩して次は13時頃からかなと思っていたら、第1試合が3時間45分という長さだったため14時31分スタートでした。短い休憩時間に選手たちは食事をし、グラウンドでは念入りに水まき。第1試合の序盤あたりからもう、強い風にあおられた土埃で選手が見えないこともあったんですよね。中断というほどではないものの、主審が時おりピッチャーに「待って」と合図をするくらい。目にも口にも土が入って大変だったと思います。

練習試合・その2

OBC高島-福井ME

福井 0 5 0 0 0 14 =19

高島 0 0 0 0 0 0 = 0

※申し合わせにより6回で終了

※福井の6回は14点

◆バッテリー

【福井】岩本(5回)-内藤(1/3回)-藤岡(2/3回) / 片山-中島

【高島】那珂(5回1/3)-三宅(0/3回)-濱崎(2/3回) / 村上

◆二塁打 福井:大松、松本、荒道、栗田

<試合経過>

第2試合は先攻と後攻が入れ替わって、まず福井の攻撃。2回1死から、ヒットと四死球で満塁としてタイムリー、押し出し四球、犠飛、2点タイムリー二塁打。打者9人攻撃で一気に5点を奪われたOBC高島の先発・那珂ですが、3回から5回まで安打されながら抑えて味方の援護を待ちます。しかし福井の先発・岩本が、1回に先頭の内野安打と3回に許した右前打のみ。毎回の6四死球があったものの内野ゴロで走者が入れ替わったり、併殺だったりで5回まで三塁も踏ませていません。

第2試合で先発したOBC高島・那珂投手。
第2試合で先発したOBC高島・那珂投手。
福井の先発は、元阪神の岩本投手。
福井の先発は、元阪神の岩本投手。

すると6回、那珂は先頭に左中間二塁打を浴びると、そこから四球、内野安打、タイムリー。ようやく三振で1死を取るも、ずっと満塁の状態は続きます。さらに押し出し四球とタイムリー、2点タイムリーで10対0となって交代。なおも1死満塁で登板した三宅もいきなり代打・中島に四球でまた満塁となり、打者が一巡して四球、死球、四球、四球で4連続押し出し…この回だけで9点入りました。

それでも終わらず、果てしなく続く満塁。OBC高島は3人目の濱崎に代わったのですが、タイムリーと三ゴロで2点。2死となってからまた四球で満塁とし、また押し出し死球。2回り目の中島がタイムリーを放って2人生還。この回だけで3打席目となった荒道が三振して、打者19人の攻撃(安打7、四死球9で14点)がようやく終了。45分くらいかかっています。

“終了期限”が迫ったため、OBC高島は最後の攻撃となった6回裏。先頭が四球を選ぶも後続を断たれて試合が終わりました。福井は15安打と13四死球で19点、OBC高島は7四死球をもらいながら2安打で0点で完封負けです。

福井・北村監督の初勝利!

福井の北村監督(左)とOBC高島の野原監督。試合前の笑顔です。
福井の北村監督(左)とOBC高島の野原監督。試合前の笑顔です。

まず福井ミラクルエレファンツの北村照文監督。大量点を奪われた第1試合では、ベンチから選手を激励する声が何度も聞こえました。実はここまでのオープン戦や練習試合で、まだ勝っていなかったそうで「ずっと負けてたから。どうしようかと思っていたけど、何とか最後でね」と少し笑顔。4月8日に開幕するルートインBCリーグなので、これが最後の練習試合でした。いい締めになったわけですね。

岩本投手については「2安打で抑えたので、よしとしますか。荘(勝雄)ピッチングコーチに教わって、いい感じで来ていますよ。いいボールがたくさん生まれてる。タイガース時代とは違うボールもね」とのこと。そして「今は張りを作っていて、その張りが捕れて来れば、いい開幕を迎えられるでしょう」と楽しみな様子でした。

なお、ずっと手に持っていたボールを掲げ「これ、選手がくれたんですよ。やっと勝ったので」とニッコリ。なるほど、初勝利記念だったんですね。別れ際に「ボール、大事にします!」と北村監督。次は公式戦でもらってください。そうそう、この日は今季オリックスから派遣される角屋龍太投手がチームに合流して、挨拶をしていました。今季の戦いを楽しみにしています。

福井ミラクルエレファンツの開幕戦は4月8日(皇子山球場)、これまた元虎戦士の上園啓史監督桜井広大打撃コーチ西村憲投手がいる新規加入チーム・滋賀ユナイテッドベースボールクラブが相手です。

岩本投手は1年半ぶりの5イニング

走者を出しても、要所を締めました。
走者を出しても、要所を締めました。

岩本輝投手は、これが2試合目の先発です。1試合目は先発で3イニング、3月24日にオリックスのファームと練習試合があり、中継ぎで登板しました。その時は失点しちゃったみたいですね。でも1日は試合経過でも書いた通り、1回に先頭打者の内野安打、3回2死から右前打を許しただけで5回無失点。ただし毎回の6四死球(四球5、死球1)は「課題です。決め球を決めきれなかったのが原因」と自らコメントしています。この日は最速が142でしたが、オリックス戦では144キロ出たそうです。

それにしても5回2安打無失点はさすが、と言いかけたら「5回も投げたの初めてですよ。それに去年も5回なんてなかったし」と岩本投手。そういえば昨年、右肩の具合がよくなかったため1軍登板はなく、ファームの公式戦などでも3回が最長。なので2015年以来の5イニングということになります。そして「6回もいけそうだったんですけど」と苦笑い。6回表の攻撃が長すぎましたね。

5回を投げて2安打無失点という内容だった岩本投手。
5回を投げて2安打無失点という内容だった岩本投手。

試合後のミーティングが終わったのを見て話を聞きに行ったのですが、岩本投手は「まだ祐也さんに挨拶をしていないんですよ。今いけますかね?どこかな」と慌てていたので、三塁側の監督室へ同行しました。「きょうは途中で来たもんで、挨拶が遅くなってすみません!」と頭を下げる岩本投手と、「いやそんな、わざわざありがとう」と握手をする野原監督。そして「さすがだよね。全然打てなかった」と苦笑いしつつ「頑張ってね」と激励。今度は岩本投手がお礼を言って、久しぶりの対面は終了です。

以前と変わらない岩本投手だけど、痩せたような気がします。ちゃんと食べている?「食べてますよ。自分で作ってますもん」。おお~それはすごい!外食はせずに?「…半々、かな(笑)」。でも自炊しているのは感心ですね。痩せたというより、自分の意志で“締めた”いです。開幕まで1週間を切って、当然ローテーションの一角を担う岩本投手。「頑張ります。感じはいいですよ」。期待しましょう!

都市対抗予選を想定したダブルヘッダー

無念の降板…那珂投手を迎える田中コーチ。
無念の降板…那珂投手を迎える田中コーチ。

変わって、OBC高島の選手に聞いたコメントをご紹介します。第2試合で先発した那珂大心投手(23)は、5回1/3で13安打6四死球で代わった投手の乱調も重なって、結局12失点でした。「最初はよかったんですけど、ちょっと崩れてしまった。投げていくうちに微妙なズレが…。修正しないといけなかった」と反省の言葉。2回に5点を失ったあとは立ち直ったんですけどね。それだけに6回の4安打3四球は悔しいでしょう。それにしても2月に会ってから、ずいぶん痩せたような。いや引き締まったような?次は都市対抗予選、頑張ってください。

福井打線を翻弄?したOBC高島の新人・永井投手。
福井打線を翻弄?したOBC高島の新人・永井投手。

第1試合で5回途中から登板し、3回1/3を投げた永井皓介投手(22)は3安打2四死球で、前の投手が残した走者は1人還してしまったものの無失点。しかも6回は4番からを3人で片づけており、これが2試合、両チームを通じて唯一の三者凡退でした。ことし朝日大学から入ったルーキー右腕で、持ち味は「インコース、左右打者の両サイドに投げるとこ」だそうです。ただ肩甲骨付近を痛めていたため、そんなに投げていなかったとか。でも翌3日の練習試合にも連投したとのこと。公式戦や大会では“中○時間”もよくある、社会人の投手陣は大変ですね。

1回1死から二塁打を放ち、攻撃に火をつけたOBC高島・佐竹選手。
1回1死から二塁打を放ち、攻撃に火をつけたOBC高島・佐竹選手。

主将である佐竹誠人選手(27)は試合後、結構長く監督とミーティングをしていたようで、バスに向かうのは最後の方でした。1試合目は打線がつながったし長打も出たし、でも2試合目を見ると単なる「1勝1敗」とは片づけにくい?と尋ねたら「一発勝負なので、1勝1敗とは言っていられないんです」という返事。なるほど、これがオープン戦というつもりではなかったんですね。

「1試合目はよかったけど、2試合目はカナフレックスを想定していました」

あ、そういうことですか。1週間後に行われる都市対抗野球の滋賀1次予選は、初日の1回戦に勝ったとして2日目は準決勝と決勝が同じ日にあるわけです。つまりダブルヘッダーで。決勝ではカナフレックスに当たるという想定で第2試合に臨んだんですね。考えが及ばなくてすみませんでした。「きょうみたいに、5点差ってのはあり得ますが、そこでどう返していくか。それがチームの課題です」と佐竹選手。監督も頼りにしている主将、これからもよろしくお願いします。

「監督の責任、力不足」と野原監督

最後はOBC高島・野原祐也監督です。取材できたのは2試合目のあとで…。1試合目が終わったところだとよかったんですけどねえ。でも「すべて経験だと思います。全部うまくいっていたら、みんなここにはいないので。僕も含めて」と監督。とはいえ1試合目に17安打で9点を取って勝ちました。やはりバッティングは変わってきている気がします。「そうですか?それなら嬉しいです。1試合目はほんと、よく打ってくれましたね」

第1試合の1回、先制のホームを踏んだ佐竹選手を迎える野原監督(左)。
第1試合の1回、先制のホームを踏んだ佐竹選手を迎える野原監督(左)。

2試合目の先発・那珂投手の立ち上がりはよかったし、次の永井投手もナイスピッチングで。「はい。那珂はよかったのに、ちょっと力んだかな。永井は結構いいでしょう?打ちづらいと思いますよ」。とにかく主戦級のピッチャーを故障やリハビリで欠いて、非常に苦しい状況。「ダブルヘッダーになるとピッチャーがちょっときつかったですね」と言いながらも「すべて自分のせいです。監督の責任。自分の力不足で、選手の集中力を保てなかった」と猛省でした。

ところで第1試合が終わった時、なにか紙を持って小走りに通路を行く野原監督。「(第2試合の)メンバーが、まだ決められなくて…」。なるほど、初めての仕事がたくさんあるわけですね。試合中の選手交代とか、もう慣れましたか?「難しいですよねえ。タイミングを外すと大変で」。捕手兼任から専任となった田中息吹貴コーチ(27)とともに、これからも頑張ってください!次は試合前の練習でノックを打つ背番号76の写真を撮らなくては。

ピッチャーの交代でマウンドへ。
ピッチャーの交代でマウンドへ。
試合終了時に整列するOBC高島ベンチ。
試合終了時に整列するOBC高島ベンチ。

なお翌2日も、追手門学園を本拠地の今津スタジアムに迎えての練習試合で、これはダブルヘッダーからシングルに変更されたそうです。結果は11対1の大勝!あの試合のあとだけに、勝ってよかったですねえ。OBC高島のゼネラルマネージャー・大家友和投手が1日にアメリカから帰国し、2日は観戦されたとか。このたびのメジャー復帰はなりませんでしたが「野球は続ける」という記事をみたので、ぜひ高島で!と勝手に祈っています。

OBC高島・野原新監督のオープン戦は10試合(ダブルヘッダーは1日のみ)、3勝7敗という成績で終了しました。次は4月8日と9日に甲賀市民スタジアムで行われる『第88回 都市対抗野球大会 滋賀1次予選』です。

※野原祐也監督就任についての記事は、こちらからご覧いただけます。<もと阪神タイガースの野原祐也選手が、社会人野球のクラブチーム監督に就任>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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