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安倍氏国葬“デマ協奏曲” 拡散されるのは、真実ではなく「信じたい情報」か

岡田有花フリーランス記者
日本野鳥の会のニュースリリ-スより

 9月27日に執り行われた、安倍晋三元首相の国葬。国葬をめぐり、Twitteではデマが拡散されました。

 「日本野鳥の会の集計によると、国葬反対運動の参加者は307人」「警察発表では500人」というデマです。

 この情報をめぐり日本野鳥の会は、「当会ではこのような事実は確認していない」と否定するニュースリリースを発表するなど、対応に追われました。

 また、東京新聞によると、警視庁は反対運動参加者の数をカウントしていないそうで、「警察発表500人」もデマだったようです。

拡散されるのは「信じたい情報」か

 Twitterには、真偽不明のさまざまな情報が飛び交っています。安倍氏の国葬など、国民の間でも賛否両論ある話題について、不確かで極端な情報が発信され、それがどんどん拡散するケースも目立ちます。

 Twitterは、ワンクリックで気軽に情報を拡散(RT)できるプラットフォームです。スキマ時間にTwitterを見て、自分の意見を補強してくれるような情報を、ソースを確かめずにRTするといったことも起きています。

 拡散した後にデマだったと確認されるケースは枚挙に暇がなく、拡散している情報=真実ではありません。拡散しやすいのはむしろ、「自分の意見を補強してくれる情報」「自分が信じたい情報」かもしれません。

AIがデマ拡散を助長する?

 今後は、AIの発達が、デマの拡散に一役買っていきそうです。

 例えば、静岡県で水害が起きた9月末、「ドローンで撮影した静岡県の水害の画像」と称し、画像生成AIで作った偽の水害画像が拡散した例がありました。

静岡県の水害もめぐり投稿され、拡散した偽画像。画像生成AIで作ったという
静岡県の水害もめぐり投稿され、拡散した偽画像。画像生成AIで作ったという

 投稿した人は、画像生成AI「Stable Diffusion」に「flood damage, Shizuoka」と入力して出てきた画像だと説明。「これが安易に広がると想定していなかった」などと釈明しましたが、写真が“本物”だと信じた人は少なくなかったようです。

 画像AIの発展・大衆化により、それらしい写真を探してこなくても、また、写真合成などの技術がなくても、簡単にオリジナルの“それらしい写真”を作ってしまえる時代に突入しています。

 “本当っぽいデマ情報”を作ることは、以前よりさらに簡単になっています。正しい情報を知るには、自分の意見と異なる情報でも真っ向から否定せず、ソースをたどる努力や能力が、これまで以上に必要になっていきそうです。

フリーランス記者

1978年生まれ。京都大学卒。IT系ニュースサイト記者、Webベンチャーを経て、IT・Web分野を軸に幅広く取材、執筆するフリーランス記者。著書に「ネットで人生、変わりましたか」(ソフトバンククリエイティブ)。

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