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ペットとどう出会う? 一緒に考えませんか

太田匡彦朝日新聞記者
自治体に収容され新たな飼い主を待つ子犬たち(筆者提供)

 いまやすっかり「家族」の一員になった犬や猫たち。2003年には、15歳未満の子どもの数を犬猫の推計飼育数が上回りました。

 こうしたなかでここ数年、犬や猫の入手先が多様化しています。

 犬はほんの数十年前まで、もらったりひろったりしてくるのが一般的でした。多くが雑種で、屋外で飼い、エサは夕飯の残り物などを与えていたものです。ところが平成に入ると、犬は「血統書付き」の純血種をペットショップで買い、室内でともに暮らす存在になってきました。

 猫も、20年遅れくらいで同様の傾向が見えてきました。いまでももらったり、ひろったりしてくるほうが主流ですが、ペットショップではやりの純血種を買い求める人が増えてきました。この数年、大手ペットショップチェーンでは前年度比2割増くらいのペースで、猫の販売数を増やしています。並行して環境省や地方自治体が、完全室内飼育を推奨するようにもなっています。

 こうして「家族」と言うべき存在になり、私たちの暮らしに癒やしや潤いを与えてくれている犬猫たちですが、一方で様々な社会問題が顕在化してもいます。

 現在、日本国内では毎年のべ約85万匹の犬猫が流通していますが、これだけの数の犬猫を流通させるために、その繁殖の現場は一部が「工場化」しています。はやりの純血種、しかもなるべく幼い子犬・子猫を品揃えしようとするペットショップでは、「商品(子犬・子猫)の回転率」が重視されます。2013年に改正動物愛護法が施行される以前は、売れ残ったり繁殖につかえなくなったりした犬猫の一部は、全国の自治体に持ち込まれ、殺処分されていました。改正動物愛護法によって自治体がペットショップや繁殖業者からの引き取りが拒否できるようになってからは、全国で大量遺棄事件が相次ぎました。最近も、一部の悪質な繁殖業者やペットショップによる「虐待事件」が繰り返し報道されています。

 また、人とペットとの関係が広がり深まる裏側では、捨て犬・捨て猫がうまれ、行政による殺処分が当たり前のように行われてきた現実もあります。最近では、高齢者による飼育放棄、多頭飼育による地域環境への悪影響などが社会問題になりつつあります。

 近年では、ペットにまつわる社会問題を解決するために、ペットショップで買うのではなく、飼い主がいない保護犬・保護猫を動物愛護団体から迎えようという動きも広まっています。

 ただ、動物愛護団体からの譲渡には厳しい条件が設けられているケースが多く、たとえば共働き世帯や男性一人暮らし世帯などは、譲渡を断られることもあります。ペットショップで入手する手軽さ、身近さと比べ、敬遠されることも少なくないのです。ペットショップ自体も、一部のチェーンで、8週齢(生後8週間)まで社会化してからの販売を奨励したり、獣医師による健康管理を徹底したりといった、付加価値を高める取り組みが見られるようになってきました。

 人もペットも幸せな社会を実現するために、犬猫たちとの出会いはどうあるのがいいのか、朝日新聞の紙面で一緒に考えたいと思っています。

 こちらでアンケートを実施しています。皆さんの体験や思いとともに、ご回答いただければ幸いです。

朝日新聞記者

1976年東京都生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当した後、AERA編集部在籍中の08年に犬の殺処分問題の取材を始めた。15年、朝日新聞のペット面「ペットとともに」(朝刊に毎月掲載)およびペット情報発信サイト「sippo」の立ち上げに携わった。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがある。

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