性や性被害について、安心できる情報の提供を 「検索結果」の改善に向けて大学生が署名活動

会見するSEOセックスプロジェクトのメンバー(4月30日・厚生労働省/筆者撮影)

安心して性知識得られるサイトを上位に表示して

 性暴力の被害者がネット上で検索したときに適切なサポート情報にたどり着けない、性に関して不安や疑問を持った若者が検索で間違った情報やポルノサイトに行きついてしまうことがある……。

 このような点に問題を感じた大学生たちが、現在オンライン署名サイト「change.org」で「安心して性知識が得られるサイトを検索上位に出してください!」と題した署名を集めている。

 4月30日午後に厚生労働省で、学生グループ「SEOセックスプロジェクト」のメンバー3人が会見を行った。

 SEO(エスイーオー/Search Engine Optimization)とは、検索エンジン最適化のこと。その単語をインターネット検索した際に検索結果で上位となるため施策を指す。同プロジェクトについてツイッター上で「SEO」が「SEX」の伏字のように見えるという指摘が寄せられたそうだが、そうではない。

 フランスでは2019年に「lesbienne(レズビアン)」を検索するとポルノサイトばかり上位に表示されてしまうことに抗議するハッシュタグ「#SEOLesbienne」が盛り上がり、結果的にGoogleが検索結果を変更するためのアルゴリズムを開発。

 「SEOセックスプロジェクト」は、この運動へのリスペクトを込めてつけられた名前という。

左から伊東勇気さん、前田かや子さん、中島梨乃さん(4月30日・厚生労働省/筆者撮影)
左から伊東勇気さん、前田かや子さん、中島梨乃さん(4月30日・厚生労働省/筆者撮影)

自死に関するSEO対策はすでに行われている

 プロジェクトメンバーの一人、前田かや子さんは16歳の時に集団性的暴行被害に遭った。性暴力の被害者が支援先を探したとき、支援が受けられる場所についての情報にたどり着きづらいことや、「痴漢」「レイプ」で検索した際に上位に表示されるのが加害者弁護のための広告だったり、有名人による性暴力事件だったりする状況を指摘した。

「ケアが遅れれば遅れるほどリスクが高まります。性犯罪は身近な人に話しづらく、自分で支援にたどり着こうとする人も多いのではないでしょうか。そのインターネットでも適切な情報にたどり着きづらいと、被害者が孤立してしまう」(前田さん)

 日本でもすでに、自死予防についてはSEOに関する取り組みが行われている。たとえば「死にたい」でGoogle検索すると「心の健康相談統一ダイヤル(0570−064−556)」がトップに表示される。

 プロジェクトでは、性暴力については「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧」が内閣府・男女共同参画局のサイト内にすでに用意されているため、検索結果でこのサイトを表示してほしいと提案している。

「セックス」の検索結果、国によって違いも

 プロジェクトの始まりは、メンバーの一人中島梨乃さんが、前田さんと伊東勇気さんに声をかけたこと。中島さんは10代の頃、性器や性感染症の名称だけを覚えさせるような性教育に疑問を持った。

「学校教育などの中で、性を恥ずかしいこと、誰にも相談しちゃいけないんだと思わせるメッセージがあったように感じる」(中島さん)

 適切な性教育とともに、ネット上で子どもが性に関する適切な情報にアクセスできることが必要と考えている。

 昨年8月、避妊アクセスを改善するために活動する「#なんでないのプロジェクト」が「スウェーデンで「sex」と検索するとトップには公的な施設ユースクリニックのサイト、続いて国営薬局のヘルスケアサイト/日本語で「セックス」って検索したらポルノのオンパレード」とツイートしたことにインスピレーションを受けたという。

 伊東さんは、間違った情報をインターネットで得てしまう例として、「性行為の後に性器を洗えば避妊は完璧」といった内容の書いてあるサイトを友人が信じていたことを挙げ、「衝撃だった」と語った。

「知恵袋でベストアンサーって書いてあったら信じてしまう若者もいる。性に関する知識が不安だから検索するのに、そこで出てきてしまうのがアダルトサイトや間違った情報。適切な知識を見つけ出すことが難しい」(伊東さん)

 プロジェクトによる署名が始まってから2日経ち、ツイッターなどで「フィルターすればいい」「家庭教育でやればいい」といった声が挙がっているが、「フィルターしてない人が悪い、教育していない親が悪いといった自己責任論になってしまう」と話す。

「フィルターで本当に必要な情報がカットされてしまう可能性もあり、(情報を制限するというよりは)むしろ必要な情報をあげてほしい」(伊東さん)

 プロジェクトでは、性知識について適切な情報を提供している「信頼できる性知識サイト一覧」を内閣府や厚生労働省のサイト内に作ることを要望している。「検索上位に出してほしいサイト」はたとえば、TENGAが運営する「セイシル」、産婦人科医師らが監修を務める「SEXOLOGY」、NPO法人ピルコンのサイト内ページ「性についてお悩みの方・学びたい方」、性教育メディア「命育」などという。

「性教育に格差があり、性知識についてはかなり属人的なものがあるのではないかと感じています。平均的にみんなが必要なことがわかっている状況が望ましいと思う。自分が(性に関することで)苦しんでからでは遅いと思うので、みんなが等しく知識を得られるような環境を社会全体で連帯して作っていく必要があると感じています」(前田さん)

 署名は3万筆が集まることが目標。宛先は、Google Japan、Yahoo!JAPAN、Bingなどのほか、厚生労働省、内閣府、文部科学省。6月23日〜29日の男女共同参画週間に提出予定という。

【性暴力・性犯罪被害に遭ったら】

#8891 …全国共通ダイヤル。最寄りの性暴力被害者支援ワンストップセンターにつながります。

#8103 …全国共通ダイヤル。最寄りの警察の性犯罪相談窓口につながります。

2021年5月1日・2日には、「女性と人権全国ネットワーク」が無料オンライン相談を行います。

ライターでフェミニストです。主に性暴力、働き方、教育などの取材・執筆をしています。著書『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)。やわらかめの記事はこちら→https://ogatama.theletter.jp/

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