支援団体「被害届の不受理が25%」 実態を明らかにして性犯罪刑法改正の議論を

11月11日、東京駅前で行われたフラワーデモで撮影

 11月21日、被害当事者団体など12団体が、法務省に性犯罪刑法のさらなる見直しを求める要望書を提出しました。

 法務大臣への要望書提出は今年5月にも行われており、改正を求める署名には5万筆以上が集まっています。

 当事者団体などが作成した見直し案の詳細は、伊藤和子弁護士の記事で確認できますが、大きな論点のひとつは、被害者にとって立証のハードルが高い「暴行・脅迫要件の壁」を、どのように改善するかです。

11月21日に行われた、性犯罪刑法のさらなる見直しを求める院内集会の様子。主催は被害者支援など12団体
11月21日に行われた、性犯罪刑法のさらなる見直しを求める院内集会の様子。主催は被害者支援など12団体

 2017年の改正時にも、支援団体らが「暴行・脅迫要件の撤廃もしくは緩和」を訴えていました。しかし被害者や被害者支援に詳しい委員が少ない中で行われた検討会、法制審議会の中で、残念ながら「暴行・脅迫要件の撤廃もしくは緩和」は見送られています(被害者側からの意見を述べた委員・幹事は検討会では12人中2人、法制審議会では27人中3人)。

 110年ぶりとなる「大幅な改正」とはいえ、9つの論点中、5項目は改正見送り。1項目については一部改正でした。

 暴行・脅迫要件の壁に阻まれたと考えられる、警察の被害届の不受理や、検察の不起訴の判断について。被害当事者や支援団体の中では共有されても、2017年夏の改正時にはまだ、「暴行・脅迫要件の壁」について、残念ながら世論の高まりに至っていなかったのかもしれません。

 しかしその後、2017年秋からの#metooや2019年3月に相次いだ無罪判決とその後のフラワーデモなどの動きによって、報道が変わり始めているように感じます。

 今年に入って、ようやく、具体提示例での報道が増えてきたと感じています。性犯罪事件における、被害者が加害者を罪に問うまでのハードルの高さについて。たとえば、下記のような報道です。

'''“顔見知り”からの性暴力 ~被害者の苦しみ 知ってますか?~'''(2019年7月30日報道/NHK)

→バーで出会った男性から性暴力を受けた女性が警察を訪れた際、「本人に責任がある」「(捜査できない理由は被害者に)原因がある」などと言われた録音テープが公開されています。

'''障害がある娘が受けた性暴力 母親が決意の告白'''(2019年8月5日/NHK News web)

→引用:「『同意があると思っていた』と主張した加害者。これを受けて警察は『20歳の女性が抵抗できないほどの暴行や脅迫があったことが立証できない』と判断したと言うのです」

性暴力実刑判決も残された課題(2019年10月16日/テレ朝news)

→交際相手の娘に性虐待を繰り返した男に懲役5年の実刑判決が出たものの、強制性交等罪(旧強姦罪)には問えず、児童福祉法違反での起訴だったことが「残された課題」と報じられました。

 私も先月、離れて暮らしていた13歳の娘にわいせつ被害を行った実父が条例違反の淫行のみとなり、「強制わいせつ」や「監護者わいせつ」での逮捕・起訴が行われなかったケースを記事にしました。

 繰り返しになりますが、これまで被害当事者や支援団体は、このようなケースがあることを訴えていました。しかし、個別の判断は正しかったはずだとでも言うように、まともに検討されてこなかった事実があります。

 たとえば今年5月に行われた国会での質疑では、井出庸生議員の「被害届の不受理も調べていただきたい」という質問に対して、警察庁長官官房審議官・田中勝也氏は「警察庁としては現時点で把握をしていない」「手元に資料がございませんで、具体的な事例につきまして承知をいたしておりません」と回答を避けています。(第198回国会 法務委員会 第16号(令和元年5月15日(水曜日)より)

11月21日に行われた記者会見。右から2人目が一般社団法人Springの山本潤代表
11月21日に行われた記者会見。右から2人目が一般社団法人Springの山本潤代表

 11月21日、法務省への要望書提出の前に行われた院内集会では、東京で性暴力被害者支援を行う「SARC東京」が、警察へ同行支援したケース242件(144人)中、被害届の不受理=25%、不起訴=5.5%、有罪判決=2.7%という結果を語りました。

 被害届を受理しない理由の中で一番目立つのは「暴行・脅迫要件の壁」だったことも明らかにしています。

 これまでは「事実がわからない」といった理由で、報道も手を付けてこなかった部分ではないでしょうか。ようやく報道され始めたこのような実態を元に、改めて改正への議論が進むことを願います。

 同日の記者会見では、「前回(の改正時)は刑法に詳しい人はいても、性暴力に詳しい人は少なかった。性暴力被害に詳しい人を検討会などに入れてほしい」(一般社団法人Spring・山本潤代表)という要望が強調されました。

 「厳罰化」を求めているのではなく、現状で罪として認められない性暴力を罪として認めてほしいのです。罪に問えない性暴力の多さを目の当たりにしているからです。検討会・法制審議会に被害者側からの意見が少ないことも含め、被害当事者の視点が置き去りにされてきたことを、改めて認識してほしいと思います。

(記事内の写真はすべて筆者撮影)

【参考】

・2017年の改正時にも、支援団体らは「暴行・脅迫要件の壁」を訴えていた。たとえば、ちゃぶ台返し女子アクションが集めた「わたしたちのストーリー」内では、警察に相談した際に「被害届を出しても激しく抵抗していなければ起訴されない」と回答されたケースが紹介されている。

・2017年の刑法改正時、「9つの論点中、5項目は改正見送り」。詳細は拙稿「「性犯罪」厳罰化の法改正がなかなか審議入りしない理由」(2017年5月12日)