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全国でまだ稀なスクールセクハラ調査「隠れている数字を表に」

小川たまかライター
(写真:アフロ)

千葉県調査、308人の児童生徒が「スクールセクハラ受けた」

 6月6日、千葉県教育委員会は2017年度の学校内でのセクハラについての調査結果を発表した。対象は小中高校と特別支援学校の児童・生徒と教職員。

参考:「セクハラ受けた」 児童生徒308人、教職員98人 17年度、千葉県教委調査(千葉日報)

 千葉県では2004年からすべての県立学校でセクハラ調査を行っている。現在、いじめと体罰については全国の都道府県で調査が行われているが、学校内でのセクハラについての大規模な調査は千葉県と神奈川県が先駆けて行っている。

千葉県調査:

平成29年度セクシュアル・ハラスメント及び体罰に関する実態調査の結果について(概要)

神奈川県調査:

平成28年度県立学校生徒対象のセクシュアル・ハラスメントに係るアンケート調査結果について

 2016年度に性的行為などで懲戒処分された公立学校の教職員は全国で226人。過去最多となっている。しかし表に出ない被害はまだあると考えられ、実態把握のための調査が必要だ。

 千葉県と神奈川県で行っている調査について、『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』で教師から生徒への性加害を取材した、共同通信の池谷孝司記者に聞いた。

調査を行うこと自体が抑止につながる

――調査について。

池谷:調査を行うのは非常にいいこと。特に千葉県は調査の規模が大きい。調査をすること自体が抑止につながるので、他の都道府県にも広がってほしい。

――一方で、千葉県の調査は基本的に記名式です。

池谷:記名式だと、誰に見えるかわからないという心配はあるでしょう。加害者の目に触れるようなことがあったらどうしよう、ということにもなる。教育委員会はいろいろ配慮していると言うが、改善の余地はあると思う。

――神奈川県の場合は。

池谷:神奈川県の場合は匿名の調査。ただ任意提出なので、千葉県とは回答数のケタが違います。千葉県は規模が大きく、神奈川県はやり方が優れている。

隠れている数字を表に

――スクールセクハラの防止に向けて要綱を定めたり、相談窓口を設けたりしている県はあるが、調査を行っている都道府県はまだ少ない。

池谷:千葉県では調査を始めた頃に比べ、被害を訴える人の数が減っている。もちろん、スクールセクハラは訴えづらい問題で、調査でも表面的にしか出てこないという問題はあるにせよ、千葉県にも神奈川県にも、今後も続けていってもらいたい。また、他の都道府県も後に続いてもらいたい。

――性的行為で処分される教職員は、近年増加傾向です。

池谷:「いじめゼロ」と同じで、調査で表に出てくる数がゼロになっても仕方ない。隠れている数字が表に出てこないと。在学中は言いづらいとか、なかなか言えない子どもは多い。被害はもっとある可能性がある。

 今後の調査に注目したい。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)、共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)など

トナカイさんへ伝える話

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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