北朝鮮の平壌で2021年10月に開催された国防展覧会「自衛2021」で判明した情報から、筆者は「仮説：KN-24が火星11BならばKN-23は火星11Aである」と唱えました。

　この仮説は2019年のKN-24初登場時に「北朝鮮のATACMS擬きはATACMSではない」と記事を書いたことが先ず前提にありました。技術的な特徴からジェットベーンを持つと推定されるKN-24の正体はKN-23の派生型であり、ATACMSのコピー品ではなくATACMSの皮を被ったイスカンデルであると推定しました。

　そして2023年7月に開催された「武装装備展示会2023」で判明した情報から、この仮説が概ね正しかったことが判明しました。北朝鮮版イスカンデルの正式名称は「火星11가」です。火星11Aという意味合いになります。これによりKN-23（火星11A）とKN-24（火星11B）は兄弟機であると確定しました。

火星11가（火星11カ、火星11A）

《화성-11가》형

• 지상대지상전술탄도미싸일　地対地戦術弾道ミサイル　　
• 《화성-11가》형　「火星-11カ」型

　なお画面の解像度が低く筆者では文字を読み切れず、最初にモニター画面の件に気付いて指摘されたのはNKニュースの上級分析特派員コリン・ツヴィルコ（Colin Zwirko）氏になります。

火星（화성）と火星砲（화성포）

　ただし正式名称について予想外だった部分があります。

• 《화성-11가》　「火星-11カ」　KN-23、Hwasong-11A
• 《화성포-11나》　「火星砲-11ナ」　KN-24、Hwasongpho-11B

　KN-23は火星11カなのにKN-24は火星砲11ナです。火星の後に「砲」が付いたり付かなかったりして統一性がありません。同じシリーズ名なのに命名基準が混乱しているように見受けられます。シリーズ開発途中で命名基準が変更されたのでしょうか？　

　なお日米韓のメディア報道では「火星」と「火星砲」の使い分けをすることはほとんど無く、「火星」と呼ぶ場合がほとんどです。実際、KN-23は火星11AだかKN-24は火星砲11Bだと言われても混乱するばかりなので、呼びやすい方で統一したほうが便利でしょう。

　「火星」ではなく「火星砲」という正式名称が登場したのは2021年以降です。上述の「火星砲11B」に加えて、巨大な11軸22輪の移動発射機に搭載された巨大ICBMが2020年10月のパレードで初登場、これの正式名称が「火星砲17」と判明したのは2021年10月の武器展示会「自衛2021」のモニター画面で、火星砲11Bの判明と同様の経緯でした。

　「火星14」や「火星15」の初登場時の2017年はまだ正式名称に砲は付いていませんでしたが、実はこの2017年の同年に火星14の発射を讃える「火星砲の歌（화성포의 노래）」を北朝鮮のモランボン楽団が発表しています。火星砲という単語の初出はこの時かもしれません。

　また火星15が改名したのか、2021年から2022年までの間「火星砲15」と紹介する公式報道が複数回行われました。ところが2023年3月の北朝鮮公式Webサイト「朝鮮の今日（조선의 오늘）」のミサイル兵器紹介写真特集では「火星15」と表記が戻っていました。この時の特集で火星シリーズで火星砲と表記があったのは「火星砲-17」だけでした。

　現状では「火星砲」という表記が公式なものと確定しているのは「火星砲17」「火星砲18」で、「火星15（火星砲15）」は公式の表記が安定しておらず、「火星砲11B」は公式な説明は無くモニター画面に名称がたまたま写っていただけになります。