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ポーランドがHIMARSを486基もの大量購入、アメリカと約1兆3千億円の巨額取引を計画

JSF軍事/生き物ライター
ロッキード・マーティン社よりHIMARS(高機動ロケット砲システム)

 ポーランドがアメリカからHIMARS(高機動ロケット砲システム)を486基も購入し、弾薬など諸経費込み総額100億ドル(約1兆3千億円)となる巨額取引を行う計画がDSCA(アメリカ国防安全保障協力局)から公表されました。

 これは凄まじい戦力の増強です。アメリカ軍の最終的なHIMARS購入予定数が約1000基近いので、ポーランドはその約半分もの数を持つ予定になります。国力の差を考えると非常に驚くべき数量です。

POLAND – HIGH MOBILITY ARTILLERY ROCKET SYSTEM (HIMARS) | DSCA

  • HIMARSランチャー(車両込み完成品):18基
  • HIMARSランチャー(発射機のみ):468基

 HIMARS発射機は合計486基を購入します。発射機のみ468基の分はポーランド製のトラックと組み合わせる計画だと、ポーランドのブワシュチャク国防相がTwitterで説明しています。

  • ATACMS短距離弾道ミサイル:45発
  • M30A2ロケット弾の発射ポッド:461基
  • M31A2ロケット弾の発射ポッド:521基
  • XM403ロケット弾の発射ポッド:532基

 同時購入する弾薬は上記の通りです。HIMARSの発射ポッド1基はロケット弾6発分なので、1514基の発射ポッドは9084発のロケット弾になります。なおATACMS弾道ミサイルは発射ポッド1基に1発が入ります。

  • 短距離弾道ミサイル:45発
  • ロケット弾各種合計:9084発

 9千発を超える凄まじい数ですが、486基の6連装発射機は1斉射2916発なので斉射3回分でしかありません。今後に弾薬を大量に追加購入するのか、あるいはNATOの一員としてアメリカの備蓄分を融通してもらう予定なのでしょう。

 なお発射機購入数に比べてATACMS短距離弾道ミサイルの購入数が少ないのですが、ATACMSの後継となる新型短距離弾道ミサイル「PrSM」の開発がアメリカで完了間近なので、これを待っているのかもしれません。またXM403ロケット弾を購入リストに載せていながらXM404ロケット弾が載っていない理由については不明です。

HIMARS用の弾薬の説明

  • M30A2 射程90km ※AW:タングステン散弾
  • M31A2 射程90km ※単弾頭
  • XM403 射程150km ※AW:タングステン散弾
  • XM404 射程150km ※単弾頭
  • ATACMS 射程300km ※単弾頭のみ
  • PrSM 射程500km ※AWの設定あり、詳細は不明

M30A2/M31A2:通称GMLRS(誘導多連装ロケットシステム)。直径227mmのロケット弾。発射ポッド1基に6発が入る。

XM403/XM404:通称ER-GMLRS(射程延伸誘導多連装ロケットシステム)。直径254mmに拡大し、操舵翼の位置を後端に変更、射程を増大した新型ロケット弾。なおアメリカ軍での実戦配備前なので開発兵器を意味するXが頭に付いているが、実戦配備宣言後にM403/M404と名称変更される予定。ロケット弾の直径が拡大されたにもかかわらず、発射ポッドの設計を見直して隙間を詰めることで、発射ポッド1基に6発が入ることを維持。

AW:Alternative Warhead、オルタナティブ弾頭(代替弾頭)。クラスター弾を廃止する代替に用意された空中炸裂弾頭。約18万個のタングステン・ボール散弾を空中でバラ撒き広域を面制圧する。ただし装甲目標に対しては小さな散弾は効果が無い。

単弾頭:Unitary、通常の榴弾。

ATACMS:短距離弾道ミサイル。発射ポッド1基に1発が入る。

PrSM:短距離弾道ミサイル。発射ポッド1基に2発が入る。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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