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ロシア軍がKh-22巡航ミサイルでウクライナのドニプロ市の集合住宅を無差別爆撃

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ国家非常事態庁よりドニプロ市の集合住宅。大きく破壊され崩落している。

 1月14日にロシア軍がウクライナ都市部への無差別ミサイル爆撃を実施し、ドニプロでは集合住宅にミサイルが着弾、建物は大きく抉り取られて多数の死傷者が出ています。

 9階建ての大型集合住宅は上空から降って来たミサイルにより9階から2階の部分まで粉砕されて中央部分が大きく崩壊し、確認された死者は既に10名とウクライナ国家非常事態庁は発表していますが、犠牲者はさらに増えるものと見られます。(追記:1月16日時点で死者40名に増加。)

 地元テレビ局ドニプロTVによると攻撃を受けたのはドニプロ市の大聖堂地区にあるペレモハ団地です。ペレモハ(Перемога)とは「勝利」の意味で、ペレモハ1~6と6個の団地が集まった、9~29階建ての高層住宅が立ち並ぶ住宅街になります。

Googleアースよりペレモハ団地のKh-22巡航ミサイル着弾推定地点(赤い点)
Googleアースよりペレモハ団地のKh-22巡航ミサイル着弾推定地点(赤い点)

Google地図:Набережній Перемоги 118 (ペレモハ堤防通り118)

※「ウォーターフロント」では誤訳だったので「堤防通り」に修正しました。

 ウクライナ軍は飛来したロシア軍のミサイルはTu-22M3爆撃機から発射されたKh-22巡航ミサイルだったと発表しています。

 Kh-22巡航ミサイルは冷戦時代1960年頃の古い設計の巨大な超音速対艦ミサイルです。本来は陸上攻撃用ではありません。対地固定目標用に使える誘導システムはおそらく慣性航法装置くらいしかなく、命中精度は悪く大雑把なものになります。ピンポイント精密誘導攻撃など不可能で、これは都市部の人口密集地を狙った無差別爆撃です。ドニプロは最前線から100km以上離れており、明らかに軍事目標への攻撃ではなく、この攻撃は戦争犯罪になります。

 巨大なKh-22巡航ミサイルは機体重量6トン近く、弾頭重量は1トンあり、しかも高速で着弾するために他の通常の巡航ミサイルなどよりも遥かに破壊力が高くなります。カリブル巡航ミサイルと比べると機体重量は3倍以上、弾頭重量は2倍、巡航速度は5倍、最終突入速度は2~3倍近い差です。

 Kh-22は巡航ミサイルですが短距離弾道ミサイルに近い速度で飛来するため、大型の防空システムを配置していないと迎撃はできません。過去には2022年5月にウクライナ軍からKh-22の撃墜報告がありましたが、この戦争で明確な撃墜記録はまだ1例しか無いほど迎撃が難しい目標です。

 これを迎撃するとなると、既にウクライナに供与が決定しているパトリオット防空システムが最も適した機材となります。大気圏内用の弾道ミサイル防衛システムであるパトリオットのPAC-3迎撃ミサイルならば、Kh-22巡航ミサイルも短距離弾道ミサイルと同様に阻止できるでしょう。

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軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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