6月27日の現地時間15時51分ごろ、ウクライナ中部のポルタワ州クレメンチュクのショッピングセンターにロシア軍のミサイルが着弾、現在までに市民20人の死亡を確認、さらに多数の行方不明者と重傷者が出ています。

 ウクライナ国防省が現場付近の監視カメラで捉えたショッピングセンターへのミサイル着弾の瞬間を公開しています。

 高速で着弾する大型ミサイルの形状の特徴はロシア軍の空中発射式超音速巡航ミサイル「Kh-22」で間違いないでしょう。本来は対艦ミサイルですが限定的な対地攻撃能力もあります。巡航ミサイルに分類されますが空気吸入式ジェットエンジンではなく液体燃料式ロケットエンジンを搭載しているのが特徴です。

 映像からは、このミサイルはベラルーシ方面から飛来した可能性が高いと推定できます。この場合は発射母機のTu-22M3爆撃機はベラルーシ領空からミサイルを発射してウクライナを攻撃したことになります。ただし巡航ミサイルは旋回も可能なので、飛来方向の確定はできません。(訂正:ベラルーシ方面からではなくクルスク方面から飛来した可能性が大。)

6月30日追記:ウクライナ保安庁が30日になって発表した報告では、27日のクレメンチュク攻撃はロシア空軍のカルーガ州シャイコフカ空軍基地から発進したTu-22M3爆撃機がクルスク州の空域で発射したKh-22巡航ミサイルによるものでした。

СБУ встановила обставини запуску ракет по ТЦ у Кременчуці (відео)

ウクライナ国防省の投稿動画より着弾寸前のKh-22巡航ミサイル
ウクライナ国防省の投稿動画より着弾寸前のKh-22巡航ミサイル

 ウクライナ国防省によると、2月24日の開戦から6月28日の夕方までにウクライナの都市を攻撃したロシア軍のミサイルの総数は2811発とされています。これは主に弾道ミサイルと巡航ミサイルのような大型のミサイルに限定された数字です。

 6月27日にクレメンチュクに向けて発射されたKh-22巡航ミサイルは2発で、ショッピングセンター「アムストル」と隣の道路機械工場「クレドマシュ」に着弾しています。この道路機械工場とは舗装用のアスファルト混合プラントを造っている工場で、軍需工場ではありませんでした。

クレメンチュク位置関係の説明:ミサイル着弾前の地図なので注意

Google地図より筆者作成。1はショッピングセンター、2は工場の推定着弾位置。3は駅
Google地図より筆者作成。1はショッピングセンター、2は工場の推定着弾位置。3は駅
  1. ショッピングセンター「アムストル」、スーパーマーケット「シルポ」
  2. クレメンチュク道路機械工場(略称:クレドマシュ)
  3. クレメンチュク駅

※矢印はミサイルがクルスク方面から飛来したと仮定。

 なおロシア側は「クレメンチュクの工場にある武器や弾薬を保管している倉庫」を狙って攻撃して「弾薬が誘爆し飛び火して隣のショッピングセンターで火災が起きたが当時は営業していなかった」と主張しています。しかし幾つもの矛盾点が見えてきます。 

飛び火説の否定

 道路機械工場の着弾位置からショッピングセンターまで約500mあります。もし工場で弾薬が誘爆しショッピングセンターまで飛び火して炎上したというならば、工場全体が誘爆で吹き飛んでいないといけませんが、そのような大破壊は起きていません。

 そもそも冒頭で紹介したように、現在ロシア軍しか運用していないKh-22巡航ミサイルがショッピングセンターに突入する決定的な証拠となる動画が上がっています。ロシア側の説明は嘘であることが確定しているのです。

6月30日追記:ショッピングセンターへのミサイル直撃箇所の特定

休業説の否定

 「ショッピングセンターは営業していなかった」に至っては、既に次々と幾つもの反証が為されています。攻撃の数時間前に購入した商品のレシート、商品のラベル、攻撃の前に毎日のようにこのショッピングセンターに出かける動画を撮影していたYouTuber、営業していた店の従業員の死亡報告、行方不明報告、負傷報告など・・・大勢の人が訪れていたので、営業していなかったという主張はいくらなんでも無理があります。

参考外部記事:Russia’s Kremenchuk Claims Versus the Evidence | bellingcat

クレメンチュク駅を攻撃したと主張する在英ロシア大使館

 在英ロシア大使館のTwitterアカウントはショッピングセンター攻撃の釈明で「工場と駅を攻撃してショッピングセンターに飛び火した」と受け取れる説明図を掲載しました。

 しかし非常に奇妙なことに、クレメンチュク駅が攻撃を受けた報告はありません。OSINT分析のべリングキャットはPlanet Labs社の衛星画像で確認し、駅に損傷は無かったと結論付けています。

 ではロシア大使館は一体なぜ、駅を攻撃したかのような説明図を載せたのでしょうか。作図のミスなのか、それとも駅は実際に攻撃目標だったのか。もし攻撃していた場合、駅が無傷だったなら、外れたミサイルは何処へ行ったのか。

 少なくとも言えることは、飛び火説が完全に否定された以上、ロシア側が誤射だったと釈明しない限り、意図的にショッピングセンターを狙ったものと見做されるということでしょう。

【Kh-22巡航ミサイル関連記事】

【関連するウクライナ語】

  • クレメンチュク(Кременчук)・・・ドニプロ川沿いの街
  • アムストル(Амстор)・・・ショッピングセンター(Торговий центр)
  • シルポ(Сільпо)・・・スーパーマーケット(Супермаркет)
  • クレドマシュ(Кредмаш)・・・クレメンチュク道路機械工場(Кременчуцький завод дорожніх машин)の略称
  • Kh-22(Х-22)・・・巡航ミサイル(Крилата ракета : 直訳では有翼ロケット)