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北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を発射。今年の発射は計50発、発射成功は48発

JSF軍事/生き物ライター
Google地図より筆者作成。通川から半径230km

 10月28日昼頃、北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射しました。韓国軍の観測によると北朝鮮東部の江原道・通川郡からの発射で、飛行性能は以下の通りです。

水平距離230km・最大高度24km・速度マッハ5

 過去の北朝鮮のミサイル発射に照らし合わせると、最も近いものはKN-24短距離弾道ミサイルが該当します。通川から230km先には北朝鮮軍が何時も射爆場に使っている無人島「卵島」があるので、着弾地点はおそらく此処でしょう。

 最大高度24kmは弾道ミサイルとしては高度がかなり低く、高度が低いわりに水平距離はそれなりに飛んでいることから、発射されたのは弾道後半で滑空が可能な機動式弾道ミサイルになります。水平距離230kmという点から、KN-23ないしKN-24が発射された可能性が高いでしょう。

KN-24短距離弾道ミサイル

KCNAより、2021年10月に平壌で開かれた兵器展示会「自衛2021」で公開されたKN-24
KCNAより、2021年10月に平壌で開かれた兵器展示会「自衛2021」で公開されたKN-24

 KN-24短距離弾道ミサイルの過去の発射で観測された飛行性能は水平距離230~410km、最大高度30~50km、速度マッハ5~6。なおKN-24はアメリカ軍のコードネームで、北朝鮮での名称は「火星11나」と推定。

 KN-24はミサイルの形状と発射機がアメリカ製ATACMSに酷似していますが、ミサイルのサイズはATACMSよりもっと大きい上に、操舵翼とジェットベーンの特徴はロシア製イスカンデルに酷似しており、イスカンデルを模倣したKN-23と技術源流を同じくする兄弟機です。KN-23よりもやや小さなミサイルです。

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KN-23短距離弾道ミサイル

北朝鮮、労働新聞の発表より2022年1月27日に発射されたKN-23
北朝鮮、労働新聞の発表より2022年1月27日に発射されたKN-23

 KN-23は過去の発射で最大で水平距離800km飛行した記録があり、多くの発射ケースでは水平距離400~600km飛行でしたが(最大高度は50km前後)、例外的に2022年1月27日に発射された際は水平距離190km・最大高度20kmで飛行したことが記録されています。

 つまりミサイルは常に最大性能を発揮するものではなく、近い位置にいる目標も狙って撃てるということです。2022年10月28日に発射されたミサイルも、KN-23をわざと近い距離から発射したものである可能性があります。

 なお飛行高度は低ければ低いほどよいというわけではなく、高度20km以下だとPAC-3迎撃ミサイルの迎撃可能高度に全て収まってしまいます。この条件で発射する場合は、付近に有力な防空システムが存在しない場合に限られるでしょう。

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北朝鮮の最近のミサイル発射(約1カ月間で合計17発)

  • 09月25日朝 32号 KN-23水中発射型 ※ダム湖から発射
  • 09月28日夕 33号、34号 KN-23拡大型
  • 09月29日夜 35号、36号 KN-23
  • 10月01日朝 37号、38号 KN-23
  • 10月04日朝 39号 火星12中距離弾道ミサイル改? ※日本列島越え
  • 10月06日朝 40号、41号 KN-23とKN-25
  • 10月09日夜 42号、43号 KN-25
  • 10月12日夜 44号、45号 巡航ミサイル 
  • 10月14日夜 46号 KN-23?
  • 10月28日昼 47号、48号 KN-23またはKN-24?

※2022年の総合計数は、失敗2発を含め27回の発射機会で50発のミサイル発射となります。予備実験を含め発射成功は48発です。

※3月20日に発射された口径300mm以下と推定される多連装ロケット4発は発射機会にカウントしていません。これを発射機会に数えると28回目になります。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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