北朝鮮が複数種類の弾道ミサイルを発射
5月25日、北朝鮮が西部の順安の付近から日本海に向けてミサイルを発射しました。合計3発が発射され1発が失敗、発射が成功した2発の観測された飛行性能はそれぞれの特性が全く異なり、別種のミサイルが発射された可能性が高くなっています。
韓国軍による観測数値
- 午前6時00分・・・最大高度540km、水平距離360km
- 午前6時37分・・・空中爆発
- 午前6時42分・・・最大高度60km、水平距離760km
自衛隊による観測数値
- 午前5時59分・・・最大高度550km、水平距離300km
- 午前6時42分・・・最大高度50km、水平距離760km
1発目は新型ICBM「火星17」の予備実験の可能性
1発目は準中距離弾道ミサイル相当のロフテッド軌道(高く打ち上げる弾道)です。準中距離弾道ミサイルそのものではなく、新型ICBM「火星17」の予備実験の可能性があります。性能を確認するためにわざと性能を抑えた実験で、液体燃料式ならば飛行性能の調整は容易です。
2発目は発射失敗
韓国軍の観測では午前6時37分に発射された2発目は直後に空中爆発して失敗という報告です。自衛隊がこれを探知できていないのは、発射直後では遠い日本からでは地球の丸みの陰に隠れてしまい、観測のしようがなかったからでしょう。
3発目は滑空可能な機動式弾道ミサイル又は極超音速ミサイル
3発目は高度が低く、滑空可能な「イスカンデル型」「極超音速ミサイル」「火星8」などが候補になります。つまり1発目のロフテッド軌道とは正反対の飛び方になるので、別種のミサイルということになります。
2022年の北朝鮮ミサイル発射一覧
- 1月05日朝 1号 「極超音速ミサイル」
- 1月11日朝 2号 「極超音速ミサイル」
- 1月14日夕 3、4号 イスカンデル鉄道型
- 1月17日朝 5、6号 ATACMS擬き
- 1月25日朝 7、8号 巡航ミサイル
- 1月27日朝 9、10号 イスカンデル車両型
- 1月30日朝 11号 火星12
- 2月27日朝 12号 火星17(予備実験)
- 3月05日朝 13号 火星17(予備実験)
- 3月16日朝 失敗 火星17(推定)
- 3月20日朝 カウントせず(多連装ロケット4発)
- 3月24日夕 14号 火星15?(火星17の偽装説)
- 4月16日夕 15、16号 新型小型SRBM
- 5月04日昼 17号 火星17(予備実験?)
- 5月07日昼 18号 イスカンデルSLBM型?
- 5月12日夕 19、20、21号 600mm超大型ロケット弾?
- 5月25日朝 22号、失敗、23号 火星17予備実験?とHGV?
※失敗2発を含め16回の発射実験で25本のミサイル発射となります。予備実験を含め発射成功は23本です。(3月20日の発射をカウントして17回とするメディアもありますが、日本防衛省ではカウントせず16回としています。)
※600mm超大型ロケット弾(KN-25)は並みのSRBM(短距離弾道ミサイル)より巨大なので、SRBM扱いされます。
※北朝鮮が発射を報告したのは4月16日の新型小型SRBMまでで、それ以降は北朝鮮自身による発射報告はありません。
※HGV=Hyper-Sonic Glide Vehicle:極超音速滑空体