北朝鮮2020年10月10日軍事パレード新兵器10種類の解説

北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型戦車

 北朝鮮は10月10日に朝鮮労働党創建75周年を祝う軍事パレードを行いました。異例の夜明け前の深夜に行われたパレードで幾つかの新型兵器が登場しています。ここでは今回初登場の新兵器の主なものを紹介していきましょう。

M1エイブラムス戦車のコピー

北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型戦車
北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型戦車
北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型戦車
北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型戦車

 驚くべきことにアメリカ軍のM1エイブラムス戦車に酷似した形状の北朝鮮の新型戦車が登場しました。履帯までM1戦車にそっくりです。中身はソ連系戦車の発展形である可能性がありますが、現状では判断が付きません。M1戦車を参考にした完全な新設計の可能性もあります。

 外観上のM1戦車との相違点は砲塔右側面に2連装の対戦車ミサイル発射機が装着されている点と、砲塔正面左右の基部にAPS(アクティブ防護システム)という対戦車ミサイル自動迎撃システムの発射機が装着されている点です。APSの搭載配置はロシアの新型戦車T-14アルマータと同じ配置で、参考にしているものと思われます。

 全体的な砲塔の形状はM1によく似ていますが、車体の形状は駆動輪の上の位置にあるスラットアーマーなどT-14に似ている要素が多く、両者の合いの子のような雰囲気を持っています。

 また最近のパレードに登場する北朝鮮の戦車に装着されることが多かった携行地対空ミサイルはこのM1戦車擬きには装着されていないようです。※訂正:自動擲弾銃については砲塔上面に機関銃の代わりに装着されていました。

ストライカー装甲車のコピー

北朝鮮・朝鮮中央テレビより北朝鮮の新型装甲車(対戦車ミサイル型)
北朝鮮・朝鮮中央テレビより北朝鮮の新型装甲車(対戦車ミサイル型)
北朝鮮・朝鮮中央テレビより北朝鮮の新型装甲車(機動砲型)
北朝鮮・朝鮮中央テレビより北朝鮮の新型装甲車(機動砲型)

 さらに驚くべきことにアメリカ軍のストライカー装甲車に酷似した形状の北朝鮮の新型装甲車が登場しました。ストライカーATGM(対戦車ミサイル型)とストライカーMGS(機動砲型)に似た構成の装甲車です。

 ただし車体はよく似てはいますがエンジン搭載位置と乗員配置にストライカー装甲車とは違いがあり、そのままコピーというわけではありません。参考にして模倣しながら自国の技術も注入している新型装甲車です。

ストライカーATGM擬き

 北朝鮮のストライカー擬き対戦車型ミサイル型はストライカーATGMよりも凝った構造の対戦車ミサイル発射機を搭載しており、装甲ボックスに収納してある5連装発射機が使用時に上にせり出す方式です。装甲ボックスはミサイルを小銃弾や砲弾の破片から守る目的です。

ストライカーMGS擬き

 ストライカーMGSによく似た北朝鮮の新型装甲車に搭載された砲は、駐退復座機やマズルブレーキの形状から122mm榴弾砲D-30だと推定できます。ストライカーMGSと同じようにオーバーヘッド式で砲塔が搭載されており(無人砲塔ではなく、砲塔基部の砲塔リングより下に車長と砲手が座る薄型の低姿勢砲塔)、この方式では自動装填システムを搭載していないと弾薬の装填時に車外に出て人力で行う必要が出てきます。しかしこれは榴弾砲ではありますがこの搭載方式では高仰角を掛けられず、ストライカーMGSと同様に接近して直射によって歩兵を支援する用途でしょう。接近砲撃するのに装填時に兵士が車外に出るのは危険すぎます。

 つまり適切に運用するためには北朝鮮が自動装填システムを開発して実用化していることになりますが、これがもし事実ならば技術的に驚くべきことです。M1戦車擬きよりもストライカーMGS擬きの方が技術的ハードルが高いと言えます。

600mm超大型ロケット装輪式5連装型発射機(KN-25)

北朝鮮・朝鮮中央テレビよりKN-25装輪式5連装型発射機
北朝鮮・朝鮮中央テレビよりKN-25装輪式5連装型発射機

 KN-25超大型ロケット弾は既に知られている装輪式4連装型発射機と、3月に試験発射の写真が公表された装軌式6連装型発射機の2種類がありました。そのどちらも今回のパレードに登場しましたが、その車列の直ぐ後ろに第3のKN-25が居ました。装輪式5連装型発射機です。発射機の蓋は外してパレードに登場しました。

北朝鮮・朝鮮中央テレビより5連装型KN-25。操舵翼が見える
北朝鮮・朝鮮中央テレビより5連装型KN-25。操舵翼が見える

 KN-25の装輪式4連装型発射機はチェコのタトラ社製トラックの改造品でしたが、新しく登場した装輪式5連装型発射機はアメリカのオシュコシュ社製トラックに非常によく似ています。

 タトラ社製トラックは足回りが特殊な鋼管バックボーンフレームのジョイントレス・スイングアクスルという独立懸架方式で、模倣生産が行い難いのかあるいは製造コストが高いなどが問題となり、別の会社のトラックの模倣生産に切り替えた可能性があります。

金星3地対艦ミサイルの新型発射機

北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型地対艦ミサイル車両
北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型地対艦ミサイル車両

 おそらく発射筒の中には金星3対艦ミサイルが入っていると思われる新型発射機です。従来の地対艦ミサイル車両は4連装のものでしたが、新型は8連装と一挙に搭載数が2倍となりました。

 車両の形式は北朝鮮版イスカンデル、北朝鮮版ATACMS、6連装型KN-25などの搭載にも使われている新型の装軌式車両の系統と思われます。車両の形状はアメリカのMLRS多連装ロケットのM270発射機によく似ていますが、大きさは一回り以上は大きいので別物です。

 なお金星3はロシアのKh-35対艦ミサイルのコピーです。性能はアメリカのハープーン対艦ミサイルとも似ていて、亜音速で海面すれすれの低空を飛翔するタイプになります。

トール地対空ミサイルのコピー(装輪型)

北朝鮮・朝鮮中央テレビよりトール地対空ミサイルのコピー
北朝鮮・朝鮮中央テレビよりトール地対空ミサイルのコピー

 回転砲塔にレーダーを搭載したこの車両は、この回転砲塔部分がロシア製トール地対空ミサイルのコピーであると推定されます。トールは回転砲塔にレーダーと地対空ミサイル垂直発射機を搭載し、1両のみでも対空戦闘可能な短距離防空システムです。

 ただし今回のパレードでは地対空ミサイル垂直発射機が付いているのか直接確認ができなかったので、回転砲塔の形式でトールの類似品だろうという推定を行いました。

ポンゲ地対空ミサイルの新型発射機?

北朝鮮・朝鮮中央テレビよりポンゲ地対空ミサイルの4連装発射機
北朝鮮・朝鮮中央テレビよりポンゲ地対空ミサイルの4連装発射機

 これまでロシア製S-300地対空ミサイルのコピーと考えられているポンゲ5地対空ミサイルは、公開されている発射機がトラックに搭載された2連装あるいは3連装のものでした。今回はそれをトレーラー牽引式にして4連装としたものが登場したのではないかと推定されています。あるいはS-400-のコピーとされるポンゲ6の可能性もありますが、公開されている情報が少なくはっきりとした判別は出来ていません。

 なおアメリカ軍のコードネームではポンゲ5、ポンゲ6ともに「KN-06」地対空ミサイルと分類されています。朝鮮名のポンゲは稲妻を意味しています。

北極星4潜水艦発射弾道ミサイル

北朝鮮・朝鮮中央テレビより北極星4潜水艦発射弾道ミサイル
北朝鮮・朝鮮中央テレビより北極星4潜水艦発射弾道ミサイル
北朝鮮・朝鮮中央テレビより北極星4の文字
北朝鮮・朝鮮中央テレビより北極星4の文字

 2019年10月2日に試験発射した北極星3潜水艦発射弾道ミサイルがパレードで初登場したかと思われましたが、よく見るとミサイルには朝鮮語で「北極星4」と書かれていました。

 潜水艦研究家のH・I・サットン氏がTwitterで分析を報告したところによると、北極星4は北極星3と直径は同じで全長が短くなっているか、あるいは性能秘匿の為に途中の段が抜かれた状態で展示された可能性があるということです。

 もし単純に短くなっているとすると、北朝鮮のロメオ級潜水艦を改造したさほど大きくない弾道ミサイル潜水艦に載せるために実戦仕様として小型化したと考えられます。

超大型車載式大陸間弾道ミサイル

北朝鮮・朝鮮中央テレビより超大型車載式大陸間弾道ミサイル
北朝鮮・朝鮮中央テレビより超大型車載式大陸間弾道ミサイル

 今回のパレードでの最重要な存在、北朝鮮の新型ICBMです。搭載車両は11軸22輪という車載移動式弾道ミサイルとしては非常に巨大なもので、貧弱な北朝鮮の道路事情では運用には大きな制約が課せられるでしょう。

北朝鮮が火星15号を上回る11軸22輪の超大型車載式ICBMを初公開

 分析については上記の記事を参考にしてください。北朝鮮がこの新型ICBMを試射するような場合があればアメリカの態度は硬化し、再び2017年の時のような危機が再来するかもしれません。

新型4輪軽装甲車

北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型4輪軽装甲車
北朝鮮・朝鮮中央テレビより新型4輪軽装甲車

 日本のコマツ製「軽装甲機動車」によく似た4輪装甲車が北朝鮮の軍事パレードの冒頭から登場し、要人の移動に使われていました。 

 

 ただし細部の形状は違うのでコピー品ではなく、このジャンルの軽装甲車ではよくあるスタイルだと言えます。大まかに参考にしているのかもしれません。なおタイヤのホイールが何故かホンダ純正アルミホイール(シビックハイブリッドFD3用)に形状が酷似しているという指摘があります。

北朝鮮2020年10月10日軍事パレード登場兵器

  • 新型4輪軽装甲車 New
  • M1戦車のコピー New
  • ストライカー装甲車のコピー New
  • 自走榴弾砲(2018年のパレードで登場)
  • 自走対戦車ミサイル(2018年のパレードで登場)
  • トール地対空ミサイル装輪型のコピー New
  • ポンゲ地対空ミサイル新型発射機 New
  • 22連装240mm多連装ロケット
  • KN-25装輪式4連装型発射機
  • KN-25装軌式6連装型発射機
  • KN-25装輪式5連装型発射機 New
  • 金星3地対艦ミサイル(新型発射機) New
  • 北極星2準中距離弾道ミサイル
  • 北極星4潜水艦発射弾道ミサイル New
  • イスカンデル短距離弾道ミサイル(擬き)
  • ATACMS短距離弾道ミサイル(擬き)
  • 火星12号中距離弾道ミサイル
  • 火星15号大陸間弾道ミサイル
  • 新型大陸間弾道ミサイル New

 パレードに登場した兵器の一覧を眺めて気付いた点が幾つかありますが、弾道ミサイルのムスダンと火星14号およびスカッド精密誘導型が比較的新しく登場したばかりの部類である兵器にも関わらず姿を見せてはいません。

 推定になりますがムスダンは不具合が多く不採用となり代わりに火星12号が採用されて、火星14号は特に問題は無かったもののより大型の火星15号に切り替えられ、スカッド精密誘導型は液体燃料式であり他の精密誘導能力のある固体燃料式の新型(イスカンデル擬き、ATACMS擬き、KN-25超大型ロケット弾)の実用化で不要となった可能性があります。

 またミサイル移動発射車両の新型が装輪トラック型、装輪トレーラー型、装軌型(クローラー式)など次々と様々な種類が登場し、それぞれ一定の量産がされていることが見て取れます。北朝鮮が移動発射車両を国産で自由自在に量産できるということは、推定保有数の正確な把握が困難になっていく深刻な問題を意味しています。