イランの弾道ミサイル命中精度の評価と北朝鮮との関連性

参考画像:イラン製Fateh-110短距離弾道ミサイルと斜め発射式レールランチャ(写真:ロイター/アフロ)

 1月8日、イランはイラクにあるアメリカ軍基地2カ所に十数発の弾道ミサイル攻撃を行いました。これは1月3日にアメリカ軍がバクダッドで決行したイランの革命防衛隊の対外破壊工作特殊部隊「コッズ」のソレイマニ司令官爆殺に対する報復攻撃でしたが、アメリカ側は攻撃の数時間前にイランからの攻撃を確信し人員は退避壕に避難済みだったので、死傷者はゼロでした。

 イランは報復が全面戦争に繋がらないように攻撃の兆候を数時間前からわざと漏らした上で、攻撃直前にも警告を送っていたようです。攻撃はアル・アサド基地に10発以上、アルビルにある基地に1~2発の弾道ミサイルが撃ち込まれています。使用ミサイルはアルビル基地付近でスカッド系で垂直発射を行う「Qiam-1」短距離弾道ミサイル(射程700km)の残骸が回収されており、またイラン側の公開映像から斜め発射式レールランチャーが確認されているので、アル・アサド基地に対しては「Fateh-110」系短距離弾道ミサイル(射程200~300km)が使用された可能性が高いと推定されています。

 アル・アサド基地に対しての攻撃は非常に精度が高く、正確に無人攻撃機の格納庫に命中して打撃を与えています。一方でアルビルへの攻撃は目立った損害は無く、基地外で残骸が確認されたのみです。この差はミサイルの性能の差によるものです。

 Fateh-110短距離弾道ミサイルは射程200~300kmで最大速度はマッハ3程度です。単純に弾道ミサイルとしては射程が短く速度が遅いので、空力操舵が効きやすく誘導が容易なので命中精度を出し易いのです。これが射程700km級のQiam-1短距離弾道ミサイルになると最大速度はマッハ7程度となり極超音速(マッハ5以上)を超えてきます。ここまでの速度が出始めると空力操舵は途端に難しくなり、高い制御技術が要求されるようになります。

 つまり1月8日のイランの弾道ミサイル攻撃に対する評価は「射程300km級の弾道ミサイルは高い精度が出せているが、射程700km級では全く精度が出せていない」となります。射程700kmのQiam-1短距離弾道ミサイルはスカッド系で北朝鮮からの技術導入です。そして北朝鮮の日本攻撃用のノドン準中距離弾道ミサイルはスカッド系の派生型で射程1300km級なので、Qiam-1よりも命中精度は同等以下と評価するのが普通です。

 射程300kmのFateh-110短距離弾道ミサイルで出せた命中精度を、射程が全く異なる弾道ミサイルで同様のことができると評価はできません。同じ弾道ミサイルであっても射程が大きく違えば別物になります。