レーダー照射事件で真っ向から食い違う日韓の主張

韓国駆逐艦クァンゲト・デワンの搭載レーダー(2017年5月22日、米海軍撮影)

 20日に発生した海上自衛隊P-1哨戒機への韓国海軍駆逐艦からのレーダー照射について、日本と韓国の双方の主張が食い違ったままです。現在までの韓国側の公式な説明は「北朝鮮の遭難船を捜索するために水上レーダーの他に対空用のMW-08三次元レーダーを対水上モードで使用した。STIR-180火器管制レーダーは付属の光学カメラを日本の哨戒機に向けたが電波ビームは照射していない」というものです。日本側の主張は「哨戒機の収集した情報を詳細に分析し火器管制レーダーから照射されたと結論付けた」としています。

クァンゲト・デワン(広開土大王)級駆逐艦の搭載レーダー

  • MW-08・・・捕捉追尾用の三次元レーダー。空中目標の高度も同時に測定できる。基本的には低空を飛ぶ目標への対空用だが、対水上モードもあり主砲の射撃管制も可能。稼働中は360度回転しながら全方位に電波を照射する。周波数はCバンド。
  • STIR-180・・・火器管制レーダー。対空ミサイルの誘導と主砲の射撃管制を行う。他のレーダーの情報を得てから目標に指向するので、稼働中でも常時回転は行わない。周波数はXバンドおよびKバンド。
  • SPS-49・・・対空捜索用の二次元レーダー。高い高度を飛ぶ空中目標への遠距離警戒用。稼働中は常時回転する。周波数はLバンド。
  • SPS-95K・・・対水上捜索レーダー。稼働中は常時回転する。周波数はCバンド。
韓国駆逐艦クァンゲト・デワンの搭載レーダー(2017年5月22日、米海軍撮影)
韓国駆逐艦クァンゲト・デワンの搭載レーダー(2017年5月22日、米海軍撮影)

 争点となるのは海上自衛隊の哨戒機が受けた火器管制レーダーの照射電波とは具体的にどのレーダーを指しているのかという点です。STIR-180であることが確かならば日本側の主張が正しくなります。ビーム幅の細い火器管制レーダーを数分間にわたって照射を続けたのであれば意図的に狙い続けた危険行為と見做されます。しかしMW-08ならば360度回転しながら電波を出し続けているので狙っていたとは言えず、広範囲の捜索も可能なので韓国側の主張が正しくなります。この二つは周波数が異なるので識別は容易であり、日本側が照射を受けたレーダーの具体的な種類を公表すべきでしょう。

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について:防衛省(平成30年12月22日)

 現時点までの日本側の公式説明の内容からは照射してきたのは火器管制レーダーであることを強く示唆していますが、具体的な機種の明言はしていません。

追記

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について:防衛省(平成30年12月25日)

 防衛省の新たな説明によると「火器管制レーダー特有の電波」を確認したとしています。この表現から機種こそ名指ししていないものの、STIR-180を指していることは明白となりました。基本的に対空レーダーとして使われるMW-08の出す電波では火器管制レーダー特有の電波とは呼べません。そして前述のとおりSTIR-180とMW-08の二つは周波数が異なるので識別は容易であり、誤認することはまず考えられないでしょう。稼働中に常時回転はしないSTIR-180と常時回転しているMW-08では電波の当たり方も全く異なります。

 レーダー照射について日本と韓国の双方の主張が全く食い違っていることが確定し、問題を解決するための協議は今後、長引きそうです。