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北日本は周期的な低気圧通過で深まる秋 東から西日本は続く夏の名残

饒村曜気象予報士
秋の公園を散歩する家族(写真:アフロ)

寒冷前線の通過

 11月4日は、北日本から北陸を寒冷前線がゆっくり通過し、北日本や東~西日本の日本海側では雲が広がりやすく、所々で雨が降りました(図1)。

図1 地上天気図と衛星画像(11月4日15時)
図1 地上天気図と衛星画像(11月4日15時)

 東北の日本海側や北陸では雷を伴った激しい雨の降る所もありましたが、東~西日本の太平洋側は概ね晴れました。

 また、南西諸島は晴れたり曇ったりとなり、所によりにわか雨があるという天気でした。

 このため、最高気温は、北海道では平年並みとなりましたが、そのほかの地域は平年より高くなり、今の時期としては、かなり高くなりました。

 11月4日で気温が一番高かったのは、沖縄県石垣島の30.6度で、沖縄県の5地点(全国の気温を観測している914地点の約0.5パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日となりました。

 そして、219地点(約24パーセント)で最高気温が25度以上の夏日となりました(図2)。

図2 真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(9月1日~11月4日。11月5~7日は予測)
図2 真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(9月1日~11月4日。11月5~7日は予測)

 記録的な暑さが続いていた今年ですが、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)の頃から真夏日が大きく減り、10月に入ると夏日も大きく減っています。

 そして、10月下旬になると、最低気温が0度未満という冬日を観測する地点が増え、夏日を上回る日も出てきましたが、10月25日以降は再び夏日を下回りました。

 11月になると、暖気が入り込んだため、季節外れの暖かさとなった所が多く、11月5日も、寒冷前線が次第にはっきりしなくなるため、北海道や東北の一部で平年並みの他は、平年より気温が高い所が多く、235地点(約26パーセント)くらいは夏日になりそうです。

次の寒気の南下で平年並み

 三連休明けの11月6日は、黄海から日本海北部を低気圧が発達しながら東進する見込みです(図3)。

図3 予想天気図(左は11月5日21時、右は11月6日21時の予想)
図3 予想天気図(左は11月5日21時、右は11月6日21時の予想)

 このため、この低気圧に向かって下層の暖気が北上する見込みです。

 下層の暖気の目安は、上空約1500メートルの気温を見ますが、12度の範囲が西日本から北陸に広がっています(図4)。

図4 大気下層(上空約1500メートル)で12度以上の暖気の範囲
図4 大気下層(上空約1500メートル)で12度以上の暖気の範囲

 このため、週明けも、西日本から北陸を中心に季節外れの暖かさは続く見込みで、6日の夏日は325地点(約36パーセント)くらいと、5日よりかなり増えそうです。

 しかし、低気圧に伴った前線が通過した今週半ばは、再び寒気が南下し、この時季らしい気温に下がる見込みです。

 北日本は周期的に低気圧が通過し、秋が深まっていたのですが、東~西日本でも秋が深まりそうです。

東京(都心)の気温

 東京(都心)では、11月4日に最高気温26.3度を観測し、年間の夏日日数が141日と過去単独で最多となりました。

 これで最高気温35度以上の猛暑日、30度以上の真夏日、25度以上の夏日、最低気温25度以上の熱帯夜と、暑さに関する指標がすべて最多となりました(表1)。

表1 東京の猛暑日、真夏日、夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は11月4日まで)
表1 東京の猛暑日、真夏日、夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は11月4日まで)

 ただ、これらの暑さに関する指標の最早、最遅記録は更新していませんので、暑い期間が集中していた年といえます(表2)。

表2 東京の早い夏日と遅い夏日(明治8年(1875年)6月~令和5年(2023年)11月4日)
表2 東京の早い夏日と遅い夏日(明治8年(1875年)6月~令和5年(2023年)11月4日)

 11月4日の夏日は、遅い夏日の6位タイの記録でした。

 11月5日に夏日となっても、4位タイで、今後の気温予想から見ても遅い夏日の記録更新はなさそうです。

 その東京も、三連休明けの発達した低気圧の通過後に寒気が南下し、平年の晩冬並みの気温となる見込みです(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(11月5日〜11日は気象庁、11月12日〜20日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(11月5日〜11日は気象庁、11月12日〜20日はウェザーマップの予報)

 ただ、暖かい日の後ですので、平年並みといっても、体感的には寒く感じそうです。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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