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ほぼ全国的な晴天をもたらす北緯35度付近を東進する移動性高気圧

饒村曜気象予報士
小春日和の公園で(写真:イメージマート)

移動性高気圧の通過

 10月15日の日曜日は、本州の南岸を低気圧が発達しながら三陸沖に進み、上空に寒気を伴った日本海の低気圧が東進しました。

 このため、西日本太平洋側は概ね晴れるものの、西日本日本海側~東日本、東北の広い範囲でくもりや雨となり、雷を伴った非常に激しい雨の降る所がありました。

 週明けの10月16日は、大陸から高気圧が張り出し、北日本を中心に冬型の気圧配置となり、寒気が南下してきましたが、この寒気の南下は強いものではなく、しかも北日本中心であるため、ほぼ全国的に平年並みの最高気温となりました。

 全国で一番気温が高かったのは、小笠原諸島の父島の28.9度、次いで、沖縄県・仲筋の28.9度で、最高気温が30度以上という真夏日はありませんでした。

 また、最高気温が25度以上の夏日を観測したのは191地点(全国で気温を観測している914地点の約21パーセント)と、前日よりは増えたものの、厳しい暑さが続いていた9月末までとは様変わりです(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(6月1日~10月16日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(6月1日~10月16日)

 10月17日~18日は、大きな移動性高気圧が東進してくる見込みですが、北緯35度付近を東進するため、ほぼ全国的に晴れて気温が上昇する見込みです(図2)。

図2 予想天気図(左は10月17日9時、右は10月18日9時の予想)
図2 予想天気図(左は10月17日9時、右は10月18日9時の予想)

 旧暦の10月(神無月)のことを小春と呼びますが、今年は11月13日が旧暦の10月1日です。

 従って、今週の暖かさは小春日和ではありません。

移動性高気圧の進路と天気

 移動性高気圧に覆われると晴天のことが多いのですが、移動性高気圧がどのようなコースを進むかによって晴天の様子が変わります(図3)。

図3 移動性高気圧の代表的な経路
図3 移動性高気圧の代表的な経路

 10月16日~17日の移動性高気圧は、北緯35度線を西から東に進む予報(図3の丸数字の1)ですので、10月17日は北日本は雲が多く雨や雪の所がありますが、10月18日になると、ほぼ全国的に晴れて暖かくなる見込みです(図4)。

図4 天気の分布予報(上は10月17日昼過ぎ、下は18日昼過ぎ)
図4 天気の分布予報(上は10月17日昼過ぎ、下は18日昼過ぎ)

 もし、日本海北部から関東地方に進む場合は、全国的に晴天ですが気温は上がらず肌寒い日という予報になったでしょう(図3の丸数字の4)。

 また、今回より南を東進する場合の晴天は関東から西の地方だけ、今回より北を東進する場合は北日本だけが晴天という予報になったと思われます。

東京の最高気温・最低気温の推移

 今年の東京の最高気温の推移をみると、5月15日に最高気温31.6度を観測して今年初の真夏日となり、7月10日には36.5度を観測し今年初の猛暑日となりました(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(10月17日〜23日は気象庁、10月24日〜11月1日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(10月17日〜23日は気象庁、10月24日〜11月1日はウェザーマップの予報)

 東京は6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月26日には37.7度と今年の最高気温を記録しました。

 今後の最高気温の予報から、9月28日の最高気温33.2度をもって、今年最後の真夏日になりそうです。

 記録的な暑さとなった今年ですが、10月に入ると、平年より気温が低い日が多くなり、10月15日の最高気温は16.9度と、初冬の気温でした。

 しかし、10月16日の最高気温は25.8度と再び夏日となり、10月19日、20日も最高気温が26度と夏日の予想です。

 予報が発表されている期間では、10月20日が最後の夏日ですが、遅い記録10位までのランキングには入ってきません。

 東京は、明治8年(1875年)6月5日以降の気象観測がありますが、遅い夏日は、昭和50年(1975年)の11月16日で、11月の夏日はこれまでの147年間で13日もあるからです。

 ちなみに、一番早い夏日は平成25年(2013年)の3月10日で、今年は、3月24日で4位でした(表)。

表 東京の早い夏日と遅い夏日(明治8年(1875年)6月~令和5年(2023年)10月)
表 東京の早い夏日と遅い夏日(明治8年(1875年)6月~令和5年(2023年)10月)

 多くの記録を更新した今年の暑さですが、それもそろそろ終わりです。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。

図4の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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