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北~西日本では広い範囲で晴天も、猛烈に発達した台風15号が小笠原へ

饒村曜気象予報士
マリアナ諸島近海の台風15号の眼(図の一番下の島がグアム島、10月11日12時)

移動性高気圧が通過

 北日本を中心に移動性高気圧が次々に通過しています。

 このため、10月11日の北~西日本では広い範囲で晴れとなりました。また、高気圧の南の縁に位置する南西諸島は雲の多い天気となり、所によりにわか雨がありました。

 10月11日に気温が一番高かったのは小笠原諸島・父島の30.7度で、奄美大島の名瀬、沖縄県の北大東島、南大東島の4地点(気温を観測している全国914地点の約2パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日となりました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~10月13日、ただし10月12日と13日は予想)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~10月13日、ただし10月12日と13日は予想)

 記録的な暑さとなった今年ですが、9月21日の彼岸の中日(秋分の日)頃を境に、最高気温が30度以上の真夏日、最高気温が25度以上の夏日が大きく減っていますが、減って、平年並みです。

 今年、令和5年(2023年)は、9月末まで夏日が半数を超えており、慣用句の「暑さ寒さも彼岸まで」というより、「暑さも彼岸過ぎまで」とはなりました。

 しかし、10月11日の夏日は147地点(約16パーセント)であり、12日~13日も似たような気圧配置となりますので、夏日は15%程度の日が続く見込みです(図2)。

図2 予想天気図(左は10月12日9時、右は10月13日9時の予想)
図2 予想天気図(左は10月12日9時、右は10月13日9時の予想)

東京の最高気温と最低気温の推移

 令和5年(2023年)は、9月まで記録的な暑さが続き、各地で暑さに関する記録更新が相次ぎました。

 東京の最高気温は、6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月10日に36.5度を観測し、今年初の猛暑日となり、猛暑日を観測したのは22日に及びました(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(10月12〜18日は気象庁、10月19〜27日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(10月12〜18日は気象庁、10月19〜27日はウェザーマップの予報)

 また、今年の最高気温は7月26日の37.7度ですが、最高気温が平年値より高い状態は、台風13号が接近して雨となった9月8日に25.2度を観測するまで続きました。

 そして、彼岸の中日(秋分の日)である9月23日には最高気温が24.3度と平年を下回りましたが、その後は再び平年より高くなり、今年の真夏日日数は、90日となり、これまでの記録である平成22年(2010年)の71日を大幅に更新しました。

 また、熱帯夜も新記録となり、暑さに関する主要な3つの指標(猛暑日、真夏日、熱帯夜)のすべてで新記録となりました(表)。

表 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は10月11日まで、年が終わっていないのでプラス0を付加)
表 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は10月11日まで、年が終わっていないのでプラス0を付加)

台風15号が小笠原へ

 日本付近は、ようやく秋の気配となりましたが、日本の南の海はまだ夏の暑さが残っています。

 台風が発達する目安となる海面水温は27度ですが、日本の南海上は27度以上あり、マリアナ諸島を北上中の台風15号は、海面水温が29度以上の海域を進んでいます。

 このため、台風15号は、大型で猛烈な台風にまで発達し、小さな眼がはっきりと見えるようになりました(タイトル画像)。

 そして、台風15号は勢力を急激に落とすことなく北上し、小笠原諸島の東海上を北上する見込みです(図4)。

図4 台風の進路予報と海面水温(10月11日21時)
図4 台風の進路予報と海面水温(10月11日21時)

 小笠原諸島では、うねりを伴った高波に警戒が必要で、強風にも注意が必要です。

令和5年(2023)の台風

 平年値から見ると9月末までの台風発生数は、18個から19個ですので、現時点の台風発生数15個というのは、かなり少ない発生数です(表)。

表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)
表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)

 特に9月の発生数が少なく、9月の2個発生は、昭和26年(1951)、昭和48年(1973)、昭和58年(1983)と並ぶ、最少タイ記録でした。

 エルニーニョ現象の年は、台風の発生数が少なく、台風発生海域が南東側に移動するといわれていますが、春からエルニーニョ現象となった今年も、その傾向はありそうです(図5)。

図5 エルニーニョ現象時の令和5年(2023)の台風発生海域(丸数字は台風番号、台風8号は日付変更線を越えて北太平洋西部に入ったことによる発生)
図5 エルニーニョ現象時の令和5年(2023)の台風発生海域(丸数字は台風番号、台風8号は日付変更線を越えて北太平洋西部に入ったことによる発生)

 なお、ラニーニャ現象が発生していた昨年、令和4年(2022年)は、台風の発生数が比較的多く、台風発生海域が北西側に移動していました(図6)。

図6 ラニーニャ現象時の台風発生海域(令和4年(2022年))
図6 ラニーニャ現象時の台風発生海域(令和4年(2022年))

 台風15号は上陸しないと考えられますが、10月はまだまだ日本の台風シーズンです。

 昭和26年(1951)から昨年までの72年間では、台風が212個上陸しており、月別にみると、8月が一番多く75個(平均1.04個)で、次いで9月、7月となっています(図7)。

図7 台風の月別上陸数(昭和26年(1951)~令和4年(2022))
図7 台風の月別上陸数(昭和26年(1951)~令和4年(2022))

 10月の上陸台風は18個(0.25個)と、4年に1回は上陸ということになりますが、図7の赤線で示したように、平成13年(2001)以降は、台風の上陸が遅くなり、9月や10月に上陸する台風が増えています。

 今年は、記録的な暑さの夏となるなど異常な年ですので、まだまだ台風に対して油断はできません。

タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5、図6、図7、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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