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彼岸の入り後に秋雨前線の南下 秋分の日(彼岸の中日)は秋の気配

饒村曜気象予報士
秋分の日のイラスト(提供:イメージマート)

厳しい残暑継続

 今年、令和5年(2023年)は厳しい残暑が続いています。

 9月18日に全国で一番気温が高かったのは岩手県・釜石で36.4度、次いで埼玉県・鳩山の35.8度と、関東から東北地方を中心に全国14地点(全国で気温を観測している915地点の約2パーセント)で最高気温が35度以上の猛暑日となりました。

 また、東京都心で最高気温が33.3度になるなど、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが630地点(約69パーセント)と7〜8月の最盛期に比べれば大きく減っていますが、厳しい残暑が続いています。

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係していることから、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表されます。

 9月18日に熱中症警戒アラートが発表されたのは、群馬県と沖縄本島の2地方で、これで今年の累計は1225地方となりました(図1)。

図1 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図1 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 熱中症が問題となった去年、令和4年(2022年)の889地域を、すでに336地域(約38パーセント)も上回っています。

 ただ、最近は熱中症警戒アラートの累計発表地域数の増え方が鈍ってきており、9月19日については、前日発表で対象地域なしでした。

 そろそろ、熱中症警戒アラートを発表する危険な暑さも終わりと思われます。

暑い彼岸の入り

 夏と秋の境目を象徴している秋雨前線は、北海道から対馬海峡にのびていますが、ほとんど停滞して南下してきません。

 前線に向かって暖気が入り続け、強い日射と相まって、記録的な暑さになっていますが、この状況は9月19日も続きます。

 そして、9月20日は秋雨前線が北日本だけ南下し、東日本から西日本は前線が消える見込みです(図2)。

図2 予想天気図(左は9月19日9時の予想、右は9月20日9時の予想)
図2 予想天気図(左は9月19日9時の予想、右は9月20日9時の予想)

 9月20日は「彼岸の入り」ですが、厳しい残暑で、「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句のようにはならない見込みです。

 ただ、東シナ海で発生した秋雨前線が東にのび、その秋雨前線が南下する9月22日は、全国的に雨で、気温も下がってくる見込みです。

図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月18日)
図3 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月18日)

 彼岸の入りの9月20日は、真夏日や夏日(最高気温が25度以上の日)を観測する地点数は、まだまだ多いのですが、9月21日以降、急激に減り、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)には「厳しい暑さは彼岸の中日(秋分の日)まで」といえそうです(図3)。

 秋分の日には秋の気配です。

 ただ、気温が下がるとはいっても、平年より気温が高く、暖かい秋になりそうです。

東京の暑さの記録

 東京の最高気温は、6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月10日に36.5度を観測し、今年初の猛暑日となり、猛暑日を観測したのは22日に及びました(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(9月19日〜9月25日は気象庁、9月26日〜10月4日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(9月19日〜9月25日は気象庁、9月26日〜10月4日はウェザーマップの予報)

 東京では、彼岸の入りの9月20日でも気温が高く、「暑さも彼岸まで」とはならない予報ですが、彼岸の入りの後に秋雨前線が南下して秋の空気に覆われますので、「暑さも彼岸の中日まで」ということにはなりそうです。

 これまでの東京の猛暑日の年間日数は、去年、令和4年(2022年)の16日が最多ですので、これを大幅に更新しました。

 最高気温の予報からみて、これ以上増えないと思われますので、これまでの記録より6日も多い22日という最多記録になりそうです(表)。

表 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は9月18日まで)
表 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は9月18日まで)

 また、今年の最高気温は7月26日の37.7度ですが、最高気温が平年値より高い状態は、台風13号が接近して雨となった9月8日に25.2度を観測するまで続きました。

 そして、今年の真夏日日数は、9月18日までで86日となり、これまでの記録を更新中ですが、最高気温の予報からみて、あと5日程度は増えると思われます。 

 さらに、熱帯夜日数(最低気温が25度以上の日を最低気温が25度以上の夜として、つまり熱帯夜の日として集計した日数)についても、平成22年(2010年)の56日に並んでの1位です。

 最低気温の予報からみて、1日程度は増え、単独1位になるかもしれません。

 夏の暑さをしめす、猛暑日、真夏日、熱帯夜の記録をみると、多くが平成12年(2000年)以降と、最近は記録的な暑さの年が多いことをしめしています。

 そして、今年は、この3つとも記録を更新するという、記録的な暑さでした。

秋雨前線通過による彼岸の雨

 各地の10日間予報をみると、9月20日の彼岸の入り後の22日に、秋雨前線の南下によって、ほぼ全国的に彼岸の雨が降る予報です(図5)。

図5 各地の予報(9月19日~25日は気象庁、26日~29日はウェザーマップの予報で、数字は最高気温)
図5 各地の予報(9月19日~25日は気象庁、26日~29日はウェザーマップの予報で、数字は最高気温)

 そして、この雨の後、秋の空気に覆われ、晴れても30度前後と、気温が少し下がると思われますので、それまでは、あと少し、熱中症対策の継続をお願いします。

 ただ、彼岸の中日(9月23日の秋分の日)までに記録的な暑さが終わっても、気温が平年より高い日が続きます。

図1の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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