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「暑さ寒さも彼岸まで」ではなく「記録的な暑さも彼岸の中日(秋分の日)まで」

饒村曜気象予報士
秋の公園を散歩する日本人家族(写真:アフロ)

厳しい残暑

 今年7月以降続いていた記録的な暑さは、9月に入っても続いています。

 台風13号の北上により雨が降った9月8日頃には、一時的に気温が下がりましたが、厳しい残暑が続いています。

 9月13日に全国で気温が一番高かったのは、群馬県・桐生の34.9度で、最高気温が35度以上という猛暑日はありませんでした。

 また、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが518地点(気温を観測している全国915地点の約57パーセント)と7〜8月の最盛期に比べれば大きく減っていますが、最高気温25度以上の夏日を観測したのが893地点(約98パーセント)もあります(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月13日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月13日)

 真夏日は、9月14日は480地点程度、15日は460地点程度、16日は535地点程度と見積もられていますので、しばらくは、全国の約半分の地点で厳しい残暑の見込みです。

 一方、夏日は、9月14日は735地点程度、15日は765地点程度、16日は855地点程度と見積もられていますので、しばらくは、全国の大半で夏の暑さになりそうです。

南下してこない秋雨前線

 9月14日は、津軽海峡から対馬海峡にかけて秋雨前線が顕在化してくる見込みです(図2)。

図2 予想天気図(9月14日9時の予想)
図2 予想天気図(9月14日9時の予想)

 このため、北海道~東北北部や中国・四国~九州では雨が降りやすく、雷を伴って激しく降る所もあるでしょう。

 その他の地域では晴れ間もありますが、暖かくて湿った空気の北上によって雲が広がりやすく、所によりにわか雨や雷雨がある見込みです。

 秋雨前線を挟んで北に位置する北海道では秋が訪れ、秋雨前線の南に位置する関東から西日本はまだ夏の様相ということができそうです。

 この秋雨前線は東北南部くらいまでしか南下せず、しかも衰弱する見込みですので、関東から西日本の夏の様相は続きそうです。

日本の南の海上

 今年は、9月14日までの台風発生数は13個と平年より少なく(平年であれば9月末まで18.5個)、毎年5個は発生している9月でも1個しか発生していません。

 地上天気図では、日本の南海上では等圧線の間隔が広く、熱帯低気圧が発生・消滅を繰り返していますので、しばらくは熱帯低気圧が発達して台風になりそうもありません(図3)。

図3 日本の南の雲の渦(一番左は熱帯低気圧に対応、9月13日15時)
図3 日本の南の雲の渦(一番左は熱帯低気圧に対応、9月13日15時)

 記録的な夏の暑さに引導をわたす可能性がある台風発生はしばらくなく、厳しい暑さは一週間程度は続く見込みです。

暑さ寒さも彼岸の中日まで

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 冬の寒さ(余寒)は春の彼岸の入りの頃(3月20日前後)まで、夏の暑さ(残暑)は秋の彼岸の入りの頃(9月20日前後)までには和らぐという意味です。

 今年の春の彼岸の期間は、3月18日から24日までですので、彼岸の入りが3月18日、彼岸の中日(ちゅうにち)が3月21日で(春分の日)ということになります。

 また、秋の彼岸の期間は、9月20日から26日までですので、彼岸の入りが9月20日、彼岸の中日(ちゅうにち)が9月23日で(秋分の日)ということになります。

 日本列島は、9月になっても、日本の東海上の太平洋高気圧におおわれることが多く、寒気が南下して秋雨前線がなかなかできませんでした。

 そして、敬老の日(9月18日)を含む3連休のときも、秋雨前線が南下してきませんので、北日本を除いて、彼岸の入り(9月20日)までは、暑さが和らぐということはなさそうです(図4)。

図4 各地の天気予報(9月14日~20日は気象庁、9月21日~23日はウェザーマップの予報で数値はいずれも最高気温)
図4 各地の天気予報(9月14日~20日は気象庁、9月21日~23日はウェザーマップの予報で数値はいずれも最高気温)

 ただ、9月22日は各地で最高気温が30度を下回り、彼岸の中日(9月23日)までには暑さが和らぎそうです。

 記録的な暑さの今年は、「暑さは彼岸まで」にはならなそうですが、「暑さは彼岸の中日まで」にはなりそうです。

東京の暑さの記録

 東京の最高気温は、6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月10日に36.5度を観測し、今年初の猛暑日となりました(今年最高は7月26日の37.7度)。

 最高気温が平年値より高い状態は、台風13号が接近して雨となった9月8日に25.2度を観測するまで続きました(図5)。

図5 東京の最高気温と最低気温の推移(9月14日〜9月20日は気象庁、9月21日〜29日はウェザーマップの予報)
図5 東京の最高気温と最低気温の推移(9月14日〜9月20日は気象庁、9月21日〜29日はウェザーマップの予報)

 今年の猛暑日日数は、9月13日までで22日となっていますが、最高気温の予報からみて、これ以上増えないと思われ、それでも、これまでの記録を大幅に更新です(表)。

表 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数
表 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数

 また、今年の真夏日日数は、9月13日までで81日となり、これまでの記録を更新中ですが、最高気温の予報からみて7日程度は増えると思われます。

 熱帯夜日数(最低気温が25度以上の日を熱帯夜の日として集計した日数)については、平成22年(2010年)の56日に次ぐ2位の51日となっています。最低気温の予報からみて、1日程度は増えるものの、記録更新にはならず、2位の記録になりそうです。

 夏の暑さをしめす、猛暑日、真夏日、熱帯夜の記録をみると、いずれも平成12年(2000年)以降と、最近は記録的な暑さの年が多いことをしめしています。

 そして、今年は、このうち2つの記録を更新するという記録的な暑さでした。

 東京でも、「暑さは彼岸まで」ではなく、「暑さは彼岸の中日まで」にはなりそうです。

 あと少し、熱中症対策の継続をお願いします。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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