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記録的な暑さの終焉か 台風13号が発生して北上、週末にかけて関東接近の見込み

饒村曜気象予報士
台風災害のイメージ(提供:イメージマート)

西日本を中心とした猛暑

 9月4日は、小笠原近海で台風12号から変わった熱帯低気圧が西進し、この熱帯低気圧周辺の雨雲が北上して関東地方などで局地的な大雨となりました。

 しかし、高気圧の勢力圏で晴れ間が出ている九州や中国・四国地方を中心に気温が高くなりました。

 全国で一番気温が高かったのは、広島の37.4度、次いで京都と高知県・江川崎の37.3度で、最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのは79地点(気温を観測している915地点の約9パーセント)でした(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月4日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~9月4日)

 一番多くの猛暑日を観測した8月3日の290地点(約32パーセント)に比べれば、観測した地点数はかなり減っています。

 しかし、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが539地点(約59パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが871地点(約95パーセント)と、真夏日、夏日ともに高い数値であることには変わりがありません。

 南から暖気が北上している9月5日は、東京でも最高気温の予想が35度と、1週間ぶりに猛暑日が予報されているなど、80地点くらいで猛暑日になる見込みです。

 また、真夏日が580地点くらい、夏日が870地点くらいと見積もられていますので、厳しい残暑は9月5日も続く見込みです。

熱中症警戒アラート

 熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。

 このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。

 「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。

 「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上33未満:危険、28以上31未満:厳重警戒、25以上28未満:警戒、25未満:注意となっています。

 熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります。

 9月5日に対する前日予報では、東日本の太平洋側を中心に9地域に発表となっています。

 熱中症警戒アラートの発表地域(9月5日に対する前日予報)

【関東甲信】茨城、埼玉、千葉、神奈川

【東海】静岡、三重

【中国】広島、鳥取

【九州北部】長崎

 令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表回数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月の前半までは前年、令和4年(2022年)より少ない発表回数で推移していました。

 しかし、7月後半から急増し、8月24日に初めて北海道の全地位に熱中症警戒アラートが発表となるなど、すでに昨年度の889地域を3割5分も上回る1201地域に発表となっています(図2)。

図2 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))
図2 熱中症警戒アラートの発表回数の累計(令和4年(2022年)と令和5年(2023年))

 熱中症が問題となった昨年、令和4年(2022年)以上のペースで熱中症警戒アラートが発表となっています。

東京の真夏日と熱帯夜

 令和5年(2023年)の東京の猛暑日は、8月29日の日最高気温35度を観測したことで22日となり、すでに昨年、令和4年(2022年)の年間最高記録である16日を大きく上回っています。

 そして、9月5日の最高気温の予報が35度ですので、猛暑日の日数は23日となって記録を更新しそうです。

 東京の気温予報を見ると、その後は猛暑日はしばらく観測することはなく、年間猛暑日の記録は23日となりそうです(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(9月5日〜9月11日は気象庁、9月12日〜20日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(9月5日〜9月11日は気象庁、9月12日〜20日はウェザーマップの予報)

 また、東京の真夏日は、9月4日に30.3度を観測したことで年間74日となり、平成22年(2010年)に記録した71日を上回る記録を更新中です。

 9月5日は猛暑日の予報ですから、当然、真夏日の予報でもあります。その後も、予報されている9月20日までに13日が真夏日の予報であり、予報通りなら87日と大幅に記録更新となりそうです。

 ただ、9月4日に最低気温が24.5度と、25度を下回り、熱帯夜ではなくなっています。

 8月3日から続いていた熱帯夜の記録は31日連続でストップしていますし、9月7日以降は熱帯夜の予報とはなっていません。

 厳しい残暑が続き、各地で暑さの記録が続いていますが、そろそろ峠も見えてきました。

 そして、沖縄の南海上の熱帯低気圧が台風13号に発達し、北上してきますので、これによって、全国的な記録的な暑さは終焉となるかもしれません。

台風13号の発生

 台湾海峡には台風11号があって北西に進んでおり、9月5日には華南で熱帯低気圧に変わる見込みです。

 台風11号の南東側にあたる日本の南では、広い範囲で積乱雲が発生し、その中から熱帯低気圧が発生しています(図4)。

図4 台風11号と熱帯低気圧の雲(9月4日21時)
図4 台風11号と熱帯低気圧の雲(9月4日21時)

 この熱帯低気圧は、北側には発達した積乱雲が少なく、渦もはっきりしていませんので、台風に発達したとしても、大きく発達することはないと思われます。

 しかし、広い範囲で多量の雨を降らせる可能性がありますので、油断できない台風です。

 日本の南の熱帯低気圧が台風に発達すれば、台風13号となります(表)。

表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは一致しない)
表 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは一致しない)

 現在は、エルニーニョ現象が発生し、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなっています。

 エルニーニョ現象が発生すると、赤道域で積乱雲の発生場所が変わり、台風の性質などが変わり、地球規模で異常気象が発生するとされています。

 エルニーニョ現象の今年、これまで台風が12個発生していますが、平年であれば8月末までに14個発生していますので、台風13号が発生したとしても、やや少ない発生ということができます。

 今のところ、エルニーニョ現象発生時には、台風発生数が少なくなるという傾向が出ています。

 また、台風の発生海域は日本から離れた海域で発生するため、日本付近には発達した台風が襲来しやすいという、エルニーニョ現象の年の台風の特徴もでています。

 そして、すでに、2号、6号、7号で大きな被害が発生しています。

 日本の南の熱帯低気圧がある海域の海面水温は、台風が発達する目安の27度よりも高くなっています(図5)。

図5 台風13号の進路予報と海面水温(9月4日21時)
図5 台風13号の進路予報と海面水温(9月4日21時)

 このため、台風に発達するのですが、上空の風の場が台風を大きく発達させる状態ではないことから、暴風域を伴うところまで発達することなく北上してくる見込みです。

 とはいえ、台風は台風です。

 最大風速が17.2メートル以上あって、風による大きな被害が発生する可能性があります。

 加えて今回は、熱帯域の多量の水蒸気を持って北上してきます。

 台風の中心付近だけでなく、台風から離れたところでも大雨の可能性がありますので、最新の情報入手に努め、警戒してください。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:環境省のホームページをもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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