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台風6号により沖縄で線状降水帯発生 週半ばに九州にかなり接近し、速度が遅いため記録的な大雨に

饒村曜気象予報士
南西諸島の台風6号の雲とその東側の2つの雲の塊(8月6日12時)

台風6号の動き

 台風6号は、鹿児島県奄美大島近海をゆっくり東に進んでいます。

 東シナ海で勢力が少し衰えたとはいえ、8月6日(日)21時現在で、中心気圧は970ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は30メートル、最大瞬間風速は40メートルと油断できない強さです。

 この台風は、奄美大島の東をゆっくり東へ進み、8月7日(月)は進路を次第に北よりに変えて、やや発達して8日(火)には屋久島の南を北上する見込みです。その後、9日(水)には九州にかなり接近するおそれがあります(図1)。

図1 台風6号の進路予報と海面水温(8月6日21時)
図1 台風6号の進路予報と海面水温(8月6日21時)

 台風6号は、東シナ海で速度を落としていた8月3日頃に、長時間にわたって海面をかき混ぜた結果、深海から冷たい海水を湧昇させたため、台風周辺の海面水温は、台風が発達する目安とされる海面水温27度を下回っています。

 このため、少し衰えたのですが、現在は海面水温が28度以上の海域を進む予報となっていますので、これ以上衰えることなく、むしろ発達しながら北上してくる予報となっています。

 台風6号による暴風域に入る3時間ごとの確率を見ると、暴風域に入っている奄美大島で確率が50パーセント以下になるのは、8月9日早朝(気象用語では朝)です(図2)。

図2 台風6号による暴風域に入る3時間ごとの確率
図2 台風6号による暴風域に入る3時間ごとの確率

 つまり、奄美大島では、今後の二日間は暴風域の中に入っている可能性が高いということができます。

 また、鹿児島では8月8日昼過ぎから暴風域に入る可能性が高くなり、確率の値が一番高くなるのは8月9日朝で、この頃に最接近と考えられます。

 そして、福岡では8月9日夜遅くに確率の値が一番高くなり、この頃に最接近と考えられます。

線状降水帯

 気象庁では、8月6日5時30分に沖縄本島地方では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているとする「顕著な大雨に関する気象情報」を発表しました(図3)。

図3 台風6号によって沖縄本島に発生した線状降水帯(8月6日5時20分)
図3 台風6号によって沖縄本島に発生した線状降水帯(8月6日5時20分)

 沖縄地方ではすでに300ミリ以上の雨が降っており、土砂災害に厳重に警戒し、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、暴風や高波に警戒してください(図4)。

図4 48時間降水量(8月5日0時〜6日24時)
図4 48時間降水量(8月5日0時〜6日24時)

 今後の降水量は、台風の動きが遅いために、8月9日24時までの72時間で、奄美で800ミリ以上、九州南部で1000ミリ以上というコンピュータの計算もあります(図5)。

図5 72時間予想降水量(8月7日0時~9日24時)
図5 72時間予想降水量(8月7日0時~9日24時)

 記録的な大雨となる可能性があり、奄美地方や九州南部では、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、高波に厳重に警戒し、暴風に警戒してください。

 また、引き続き、奄美地方や九州南部では8月7日夜にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります。

 さらに、四国南部で800ミリ以上、紀伊半島で400ミリ以上というコンピュータによる計算は、台風6号の東側で暖かくて湿った空気が北上し、活発な積乱雲の塊が北上してくることによります(タイトル画像)。

 台風本体の雨だけでなく、台風周辺の雨についても注意が必要です。

 今後の情報に注意してください。

今から12年前の動きが遅い台風12号

 今から12年前、平成23年(2011年)の台風12号は、9月3日10時ころに高知県東部に上陸しています(図6)。

図6 平成23年(2011年)の台風12号経路図
図6 平成23年(2011年)の台風12号経路図

 台風の北上速度が遅かったため、台風進路の東側にあたる紀伊半島では、長時間にわたって台風周辺の非常に湿った空気が流入し、地形効果が加わって記録的な大雨となっています(図7)。

図7 期間降水量分布図(平成23年(2011年)8月30日~9月4日)
図7 期間降水量分布図(平成23年(2011年)8月30日~9月4日)

 奈良県の上北山村では1914.5ミリ、三重県の大台町では1630ミリという、100年に1回の大雨が降っています。

 このため、土砂災害、浸水、河川の氾濫等が相次ぎ、全国で死者 78 名、行方不明者 16 名などの大きな被害が発生しました(消防庁の情報による)。

 平成23年(2011年)の台風12号の被害は、同年3月11日に発生した東日本大震災、平成24年(2012年)7月の九州北部豪雨の被害とともに、特別警報ができるきっかけとなっています。

 今回の台風6号の場合、予報通りに北上速度が遅く、しかも予報円の真ん中を通過した場合は、長時間にわたって台風周辺の非常に湿った空気が流入し、地形効果が加わるのは台風進路の東側に位置する宮崎県になります。

 台風は、動きが遅いというだけで危険です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図6、図7の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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