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発生した台風3号が北上して沖縄へ 再び梅雨前線と台風の危険な組み合わせに

饒村曜気象予報士
6時間後に台風3号に発達したフィリピンの東の熱帯低気圧の雲(6月6日15時)

台風3号の発生

 令和5年6月6日(火)21時、フィリピンの東の熱帯低気圧が台風3号に発達しました(タイトル画像)。

 台風3号は、台風が発達する目安となる海面水温27度を上回る29度以上という海域をゆっくり北上しながら発達する見込みです(図1)。

図1 台風3号の進路予報と海面水温(6月7日0時)
図1 台風3号の進路予報と海面水温(6月7日0時)

 そして、6月9日(金)には強い台風となり、6月11日(日)には強い台風のまま日本の南海上に進む見込みです。

 そして、6月11日には、沖縄県で暴風域に入る確率が少し大きな値となります(図2)。

図2 台風3号による暴風域に入る確率
図2 台風3号による暴風域に入る確率

 今の所、沖縄本島南部で一番大きいのは、6月11日の夜の初めころで5パーセント、大東島地方で一番大きいのは6月11日の夜の初めころで9パーセントです。

 暴風域に入る確率は、予報円の広がりを考慮して計算していますので、5日先の予報円が大きな予報では、小さな値の確率となります。

 今後、台風が接近するにつれ、暴風域に入る確率の値が大きく変化する可能性がありますので、沖縄県では、最新の予報でチェックが必要です。

6月の台風

 気象庁の台風進路予報は5日先までですが、筆者が昔調べた統計的調査では、6月の台風はグアム島付近から北西のち北東進して小笠原諸島に接近するものや、フィリピンの東海上から北西のち北東進して沖縄地方に接近するもの、南シナ海を西進して中国大陸に上陸するものがあります(図3)。

図3 6月の台風の平均経路
図3 6月の台風の平均経路

 また、表1から、6月に沖縄地方に接近する台風の平年値は0.6個、伊豆諸島と小笠原諸島に接近する台風(事実上小笠原諸島に接近する台風)の平年値は0.4個となっています。なお、月別の接近数は、一つの台風が2つの月にそれぞれカウントされることがあるので、月別の接近数の12ヶ月分の和は、年間接近数より多くなります。

表1 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値
表1 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値

 つまり、沖縄地方と小笠原諸島は、2年に1個の割合で台風が6月に接近しています。

 気象庁による台風進路予報は5日先までで、しかも予報円が大きいため、現時点では、沖縄地方や小笠原諸島に接近するかどうかは不詳です。

 ただ、現在の台風3号の動きは、統計的に多いフィリピンの東海上から北西のち北東進して沖縄地方に接近する台風に似ています。

令和5年(2023年)の梅雨入り

 令和5年(2023年)は、沖縄地方や鹿児島県奄美地方の梅雨入りが平年より遅かったものの、九州から東海の広い範囲で平年より早い梅雨入りとなりました(表2)。

表2 令和5年(2023年)の梅雨入り
表2 令和5年(2023年)の梅雨入り

 関東甲信地方は、現時点で梅雨入りしていませんが、九州北部から東海地方が梅雨入りした5月29日に梅雨入りしてもおかしくない天気でした(表3)。

表3 東京の日降水量と天気概況
表3 東京の日降水量と天気概況

 関東甲信地方も、今週の雨をみて梅雨入りしそうですので、台風3号の接近で、再び梅雨前線と台風の危険な組み合わせになりそうです。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図3の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

表1、表2、表3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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