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台風2号が沖縄地方にかなり接近、一時的に弱まった梅雨前線も活発化の見込み、梅雨末期並みの警戒を

饒村曜気象予報士
台風2号の雲と梅雨前線の雲(5月31日15時)

令和5年(2023年)の梅雨

 令和5年(2023年)は、5月18日に沖縄地方と鹿児島県奄美地方で平年より6~8日遅い梅雨入りとなりました。

 しかし、5月29日には九州北部地方から東海地方まで、平年より6日~8日早い梅雨入りとなっています(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨入り
表 令和5年(2023年)の梅雨入り

 翌、30日、九州南部が平年と同じ日に梅雨入りをし、これで、東海から西日本は全て梅雨入りとなっています。

 関東甲信地方は、30日に雨が降り、3日くらい雨の日が続く予報でしたが、梅雨入りとはなりませんでした。

 これは、関東甲信地方が来週の週明けに晴れ期間が予想されているからです。

 東京の16日先の天気予報をみると、6月4日まで傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)がありますが、4日から6日にはお日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)です(図1)。

図1 東京の16日先までの天気予報
図1 東京の16日先までの天気予報

 この4日から6日の晴れベースの予報があることから関東甲信地方の梅雨入りはなかったのですが、7日以降は再び黒雲マークや傘マークが多くなる予報です。

 降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEや、2番目に低いDが多い予報ですが、6月7日頃に梅雨入りの可能性があることを示している予報です。

 関東甲信地方が6月7日に梅雨入りしたとすると、平年並みの梅雨入りということになります(図2)。

図2 関東甲信の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和4年(2022年))
図2 関東甲信の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和4年(2022年))

 それより前、6月1日頃に梅雨入りとなると平年より早い梅雨入りとなりますが、そのカギを握っているのが台風2号の動向です。

台風2号の動向

 大型で強い台風2号は、沖縄にかなり接近して通過する見込みです(図3)。

図3 台風の進路予報(5月31日21時)
図3 台風の進路予報(5月31日21時)

 暴風域に入る3時間ごとの確率をみると、宮古島は6月1日朝(6時~9時)から100パーセントとなっています。つまり、暴風域に入っています。

 沖縄本島も6月2日未明(0時~3時)には99パーセントとなっていますので、2日の夜は台風の最接近に要警戒です(図4)。

図4 暴風域に入る確率(上から鹿児島県奄美地方南部、沖縄県沖縄本島南部、宮古島)
図4 暴風域に入る確率(上から鹿児島県奄美地方南部、沖縄県沖縄本島南部、宮古島)

 また、鹿児島県奄美大島は、2日の昼前(9時~12時)に一番大きな値、87パーセントとなっています。

 台風が発達する目安の海面水温は27度ですが、台風2号はこの温度より低い海域を進む見込みです。

 海面水温が29度以上の高い海域を通過していたフィリピンの東海上では、台風の中心気圧が905ヘクトパスカルの猛烈な台風となっていましたが、それに比べれば、少し衰えています。

 とはいえ、まだまだ強い勢力です。

 沖縄は暴風や高波に、奄美は高波に厳重な警戒が必要です(図5)。

図5 波浪分布予想(6月2日6時の予想)
図5 波浪分布予想(6月2日6時の予想)

梅雨前線による大雨

 台風2号の北上に伴い、いったん南海上に南下して一時的に弱まっていた梅雨前線が再び北上して活発化する見込みです(図6)。

図6 予想天気図(6月2日9時の予想)
図6 予想天気図(6月2日9時の予想)

 このため、沖縄は1日~2日、西・東日本では1~3日に大雨のおそれがあります。

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに警報を発表する可能性を、「高」「中」の2段階で示しています。

 これによると、6月2日は、岐阜県で「高」、福島県から東日本、西日本、沖縄の広い範囲で大雨警報を発表する可能性が「中」となっています(図7)。

図7 大雨に関する早期注意情報(6月1日~2日)
図7 大雨に関する早期注意情報(6月1日~2日)

 また、3日も近畿から東日本の広い範囲で「中」となっています。

 東海地方から西日本の太平洋側では総雨量が300ミリ以上の大雨が降ると予想されていますが、この予想は、台風の移動や梅雨前線の推移によって大きく変わります(図8)。

図8 48時間予想降水量(6月1日0時~2日24時)
図8 48時間予想降水量(6月1日0時~2日24時)

 場合によっては、もっと多くの雨が降るかもしれません。

 気温が高いと大気中に含むことができる水蒸気の量が増えることから、一般的には、梅雨初期より気温が高くなる梅雨後期に大雨が多く降ります。

 「梅雨末期の豪雨災害」が毎年のように発生しているのはこのためです。

 5月29日~30日に西日本から東海まで梅雨入りをしたばかりですが、気温が高めに推移しています。

 台風と前線は危険な組み合わせですが、気温が高いことから梅雨末期なみの大雨に警戒する必要があります。

タイトル画像、図1、図3、図5、図7、図8の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図4、図6、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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