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今週末はグアム島を通過した台風2号が記録的な高温海域で猛烈な台風に発達して沖縄県先島諸島に接近か

饒村曜気象予報士
グアム島に接近中の強い台風2号の雲(5月22日15時)

グアム島に台風2号が接近

 令和5年(2023年)5月20日15時にカロリン諸島で発生した台風2号がマリアナ諸島のグアム島に接近中です(タイトル画像参照)。

 日本から南へ飛行機で約3時間、そこに長さ52キロメートル、幅6~16キロメートルの細長い島、グアム島があります。世界一周の航海中のマゼランの発見以後スペイン領となり、アメリカ・スペイン戦争の結果、明治31年(1898年)からアメリカ領となっています。

 基地の島であると同時に、サンゴ礁で囲まれた美しい熱帯の島であり,多くの観光客が訪れています。

 筆者は、過去にグアム島から180カイリ(約300キロ)以内に接近した台風について調べたことがありますが、グアム島の台風シ-ズンは7月から11月です(図1)。

図1 グアム島に接近する台風
図1 グアム島に接近する台風

 5月に接近するとなると、季節的に少し早いかもしれません。

 ただ、グアム島に台風が接近する方向は、今回の台風2号の様に、ほとんどが東から南東です。

 昭和51年5月21日に台風6号が南東海上から直撃していますが、台風の移動速度が遅く、グアム島通過時には時速5~6キロくらいで、小さなグアム島を通過するのに3時間半もかかっています(図2)。

図2 昭和51年の台風6号の眼とグアム島(A地点で最低気圧931.7hPa、B地点で最大風速71m/s)
図2 昭和51年の台風6号の眼とグアム島(A地点で最低気圧931.7hPa、B地点で最大風速71m/s)

 このため、グアム島は長時間にわたって強い風が吹き荒れ、50メートルという猛烈な風が6時間、25メートルという暴風が30時間も続き、グアム島の建物は約半分が破壊されるなどの大きな被害を受けています。

 スーパー台風「Super Typhoon」という言葉が使われるようになったのは、この台風6号からですので、最初の「スーパー台風」はグアム島からということができます。

 また、平成9年12月16日にグアム島のすぐ北を通過した台風28号では、グアム島にある米軍のアンダーソン基地で、15時31分に最大瞬間風速205ノット(毎秒105メートル)を観測しています。このため、日本などで「世界で初めて毎秒105メートルの瞬間風速を観測した」という報道がなされました。

記録的に高い海面水温

 気象庁が発表した北西太平洋の海面水温の実況(5月中旬)によると、フィリピンの東海上は平年よりかなり高く、30度以上になっています(図3)。

図3 気象庁が発表した北西太平洋の海面水温の実況(5月中旬)
図3 気象庁が発表した北西太平洋の海面水温の実況(5月中旬)

 台風が発生・発達する目安の海面水温は27度ですが、台風2号は、これを上回る29度以上の海域を北上しています。

 そして、グアム島付近を通過した後、向きを西寄りに変え、海面水温が30度以上という海域を進む予報となっています(図4)。

図4 台風2号の進路予報(5月22日21時の予報)
図4 台風2号の進路予報(5月22日21時の予報)

 高い海面水温によって台風のエネルギー源である多量の水蒸気が取り込まれ、今週末の26日(金)、27日(土)には、中心気圧915ヘクトパスカル、最大風速55メートル、最大瞬間風速75メートルの猛烈な台風にまで発達する見込みです。

 猛烈に発達した台風は、地球の自転との相互作用で、北へ上がる可能性が高くなりますので、今週末以降、沖縄県先島諸島に接近する可能性があります。

今後の台風情報に注意してください

タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会

図3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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