台風2号が発達してマリアナ諸島を北上 梅雨入りした沖繩は台風と前線の危険な組み合わせの可能性も
記録的な猛暑一服
令和5年(2023年)5月17日は、日本は南の高気圧に覆われ、南高北低という真夏に多い気圧配置となりました。
このため、高気圧の縁に沿って暖かくて湿った空気が流入し、九州~東北では広い範囲で晴れ、日射によって各地で気温が上昇し、今年一番の暑さとなりました。
最高気温が25度以上の夏日となったのが、712地点(気温を観測している全国の915地点の約78パーセント)、30度以上の真夏日は299地点(約33パーセント)もありました(図1)。
そして、岐阜県の揖斐川では最高気温35.1度を観測し、全国で今年初めて35度以上の猛暑日となりました。
5月18日も、日本の南海にある高気圧の移動はゆっくりであったため、東日本から北日本では厳しい暑さとなり、夏日や真夏日の観測地点数は前日に及ばなかったものの、最高気温が35度以上という猛暑日は、6地点もありました。
5月17日の猛暑日 岐阜県の揖斐川最高気温35.1度(以下数字は日最高気温)
5月18日の猛暑日 福島県の梁川36.2度、福島35.4度
群馬県の伊勢崎35.1度、館林35.0度
埼玉県の熊谷35.0度、鳩山35.0度
5月としては季節外れの猛暑も、本州の南海上を低気圧が通過した影響で雨が降り、5月19日には平年並みの気温となっています。
そして、5月20日以降は、記録的な猛暑ではありませんが、気温は高めに推移し、夏日を観測した地点数が増えています。
5月22日は、低気圧の影響で北日本は雲が広がり、北海道を中心に雨や雷雨となるでしょう(図2)。
西~東日本は概ね晴れますが、低気圧が南岸を通過する影響で、午後は所によりにわか雨や雷雨となり、関東では雷を伴った激しい雨の降る所もありそうです。
一方、5月18日に梅雨入りした沖縄地方と鹿児島県奄美地方には前線(梅雨前線)があるため、くもりや雨となるでしょう(表)。
台風2号が発達しながら北上
令和5年(2023年)は、台風発生のペースが遅れていましたが、5月20日15時にカロリン諸島で台風2号が発生しました(表2)。
カロリン諸島近海は、台風が発達する目安となる海面水温27度を大きく上回る29度です。
このため、強い勢力に発達してマリアナ諸島のグアム島に接近し、その後、非常に強い勢力でフィリピンの東海上に進む見込みです(図3)。
気象庁の台風進路予報は5日先までですが、筆者が昔調べた統計的調査では、5月の台風の中には東経140度線付近を北上して小笠原諸島に接近するものと、フィリピンの東海上から北上して沖縄地方に接近するもの、南シナ海を西進して中国大陸に上陸するものがあります(図4)。
また、表2から、5月に沖縄地方に接近する台風の平年値は0.4個、伊豆諸島と小笠原諸島に接近する台風(事実上小笠原諸島に接近する台風)の平年値も0.4個となっています。
つまり、沖縄地方と小笠原諸島は、2~3年に1個の割合で台風が5月に台風が接近しています。
気象庁による台風進路予報は5日先までで、しかも予報円が大きいのですが、現時点で、台風2号がフィリピンの東海上へ向かって進む予報であることから、沖縄地方に接近する可能性があります。
もし、沖縄地方に台風が接近するとなると、沖縄地方では台風と前線という危険な組み合わせになります。
平成23年(2011年)の台風2号
平成23年(2011年)は各地の梅雨入りが早かった年で、沖縄地方と奄美地方は4月30日に梅雨入りをしています。
そして、5月21日から27日にかけて、北陸地方と東北地方を除く各地で梅雨入りとなっています。
関東甲信地方は南岸低気圧が通過した5月27日に梅雨入りをしましたが、統計を開始した昭和26年(1951年)以降では、昭和38年(1963年)の5月6日に次ぐ、2番目の早い記録です。
台風と前線は危険な組み合わせと良く言われます。
前線に向かって台風から湿った空気が流入することで、記録的な大雨となることがあるからですが、平成23年(2011年)は、まさに、台風と前線の組み合わせでした(図5)。
台風2号は5月28日に非常に強い勢力で先島諸島を通過し、沖縄本島に接近しています。このため、那覇では最大瞬間風速55.3メートルを観測し、沖縄県内では28万世帯で停電があり、海や空の便の欠航が相次ぎました(図6)。
暴風半径が狭くコンパクトな台風でしたが、中心付近の勢力は猛烈で、近づくと急激に波や風が強まるという油断させがちな台風でした。
また、普段であれば台風シーズンに入る前に収穫が終わっている沖縄地方のマンゴーや葉たばこなどが、早く襲来した台風による暴風で壊滅的は被害が発生しています。
さらに、台風2号が5月29日15時に四国沖で温帯低気圧に変わりました(温低化しました)が、梅雨前線を刺激したため、四国各県で日降水量が200ミリを超えるという、5月としては記録的な雨が降っています。
加えて、台風2号は、温帯低気圧に変わった後も、発達したままであり、四国から東北の広い範囲で5月としては記録的な大雨をもたらしています。
この年の3月11日に東日本大震災が発生していますが、2か月後の5月11日でも宮城県の死者数8839人に対して行方不明者5892人、避難所に3万2854人がいるというように、復興とは程遠い状況の所に、台風2号から変わった低気圧が襲ったのです。
被災地では、大雨に加え、宮城県石巻で最大風速23.8メートルなど暴風も吹き荒れました。
なお、この台風2号がフィリピンの東にあった5月25日21時の台風予報が図7です。
5月28日21時に大きな暴風警戒域で、先島諸島の南海上に進んでくるのですが、29日以降には暴風警戒域がついていません。
これは、弱まったという予報ではなく、当時は進路予報は5日先まで行っていたものの、暴風警戒域など強度に関する予報は3日先までしか予報していなかったためです。
令和元年(2019年)の台風3号以降は、強度に関する予報も5日先まで行っていますので、このような誤解されやすい予報ではありません。
台風予報は、着実に進歩しています
タイトル画像、図3、図7の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図2、図5の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」に筆者加筆。
図6、表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。