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大陸の高気圧の西側に発生する1024ヘクトパスカルの低気圧と断続的に強まる冬型の気圧配置

饒村曜気象予報士
1024ヘクトパスカルの低気圧がある予想天気図(12月8日21時の予想)

冬型の気圧配置が継続

 北日本を中心に西高東低の冬型の気圧配置となって上空に強い寒気が流れ込んでいます。

 令和4~5年(2022~23年)の冬は、10月25~27日の寒気南下で始まったといえます。最低気温が氷点下となる冬日が、全国の約20パーセントで観測されました。

 その後、しばらくは冷え込まなかったのですが、立冬の少し前から冬日の観測地点数が増えていますが、冬日の観測地点数は、全国で気温を観測している915地点のうち200地点(約22パーセント)前後から大きく増えていません(図1)。

図1 夏日と冬日と真冬日の観測地点数の推移(10月16日~12月7日)
図1 夏日と冬日と真冬日の観測地点数の推移(10月16日~12月7日)

 冬への歩みが止まったのですが、12月に入ると強い寒気が南下し、季節が大きく冬へと進み、12月3日の冬日の観測地点数は、518地点(全体の約57パーセント)と、過半数となり、その後も300地点(約33パーセント)以上が冬日です。

 なお、最高気温が0度未満の真冬日は、12月1日に北海道を中心に165地点(約18パーセント)で観測しています。

 3日から4日は日中に気温が上昇したため100地点を下回りましたが、5日は159地点(約17パーセント)に増えています。

 札幌も、12月1日と2日は真冬日でしたが、3日の最高気温は3.0度、4日の最高気温が1.4度と、真冬日ではありませんでした。

 きのう7日(水)は、二十四節気で。雪が大いに降り積もる頃ともいわれる「大雪(たいせつ)」ですが、北日本の日本海側では断続的に雪が降り続き、積雪が増えていますので、こよみ通りとなっています。

 この冬型の気圧配置は、あす9日には緩みますが、天気分布に大きな変化はなく、日本海側は雨や雪が降りやすい見込みです。積雪や路面の凍結などによる交通障害などに注意が必要です。

 一方、太平洋側は広く晴れて、昼間は気温が平年並みまで上昇しているところが多いのですが朝晩は冷え込みます。大きな寒暖差に注意が必要です。

1024ヘクトパスカルの低気圧

 日本に寒気を南下させている原因の一つとなっている中国大陸の高気圧ですが、シベリア大陸にある大きな高気圧との間に、1024ヘクトパスカルの低気圧が発生する見込みです(タイトル画像参照)。

 真冬になれば、シベリア大陸の大きな高気圧が発達し、日本付近に張り出して西高東低の冬型の気圧配置が続きますが、シベリア大陸にある大きな高気圧は、まだ強くないのです。

 このため、冬型の気圧配置が断続的に強まるという、初冬の天気となっています。

 ただ、今年、令和4年(2022年)は、秋の日本の平均気温が過去最高を更新しています(図2)。

図2 日本の秋平均気温偏差(黒の線は各年の平均気温の基準値からの偏差、青の太線は偏差の5年移動平均値、赤の直線は長期変化傾向)
図2 日本の秋平均気温偏差(黒の線は各年の平均気温の基準値からの偏差、青の太線は偏差の5年移動平均値、赤の直線は長期変化傾向)

 今年は秋(9〜11月)の日本の平均気温の基準値(平成3年(1991年)〜令和2年(2020年)の30年平均値)からの偏差は+0.90度で、明治31年(1898年)の統計開始以降、2019年を上回り最も高い値となりました。

 このため、初冬が平年並みの寒さであっても、非常に寒く感じられるのです。

 なお、1024ヘクトパスカルというと高気圧と思う人が多いのですが、低気圧は周囲より気圧が低い場合をさします。

 気圧によって決めているのではありません。

 逆に、周囲より気圧が高ければ高気圧で、最近では、12月5日15時に996ヘクトパスカルの高気圧がありました(図3)。

図3 カムチャッカ半島の北の北極圏にある996ヘクトパスカルの高気圧(12月5日15時)
図3 カムチャッカ半島の北の北極圏にある996ヘクトパスカルの高気圧(12月5日15時)

 カムチャッカ半島の北の北極圏には、996ヘクトパスカルの高気圧がありますが、この高気圧の周囲は、すべて、996ヘクトパスカルより低い気圧です。

各地の16日予報

 東京では、9月は最高気温が30度前後の日が多く、厳しい残暑が続いていましたが、10月に入ると最高気温が25度に届かなくなり、10月下旬は20度位で推移しました。

 そして、12月に入ると最高気温が15度に届かなくなっています(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温の推移(12月8日~14日は気象庁、12月15日~23日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温の推移(12月8日~14日は気象庁、12月15日~23日はウェザーマップの予報)

 そして、12月6日に最高気温が8.6度と、真冬並みに下がりましたが、その後は、平年並みか平年より高い気温が続くという予報です。

 東京は長かった夏から短めの秋を挟んで、平年並みの冬となっています。

 太平洋側の東京の16日先までの予報をみると、13日と18日に雨の予報ですが、それ以外の日は概ね晴れる見込みです(図5)。

図5 東京と新潟の16日先までの天気予報
図5 東京と新潟の16日先までの天気予報

 降水の有無の信頼度が、5段階で一番低いEや、二番目に低いDが16日間のうち半分もある予報ですが、最高気温は15度前後から13度前後に低くなるという、季節が順調に進むという予報です。

 これに対し、日本海側の新潟では、12日と21日以外の日に傘マーク(雨)か、雪ダルママーク(雪)がつきます。

 また、12日と21日も黒雲マーク(降水の可能性がある曇り)です。

 最高気温は、来週末までは10度を超える日が多いのですが、再来週は10度以下となり、東京と同じく、季節は順調に進みそうです。

 ただ、新潟の予報も、降水の有無の信頼度が、5段階で一番低いEや、二番目に低いDが16日間のうち7日もある予報です。

 札幌の16日先までの天気予報では、気温が低く、雨ではなく雪で降りますが、傾向は新潟の予報と似ています(図6)。

図6 札幌と那覇の16日先までの天気予報
図6 札幌と那覇の16日先までの天気予報

 那覇の16日先までの天気予報では、全ての日に黒雲マークがあり、16日のうち10日も傘マークがついています。

 冬の常として、南西諸島は高気圧の南縁に位置しますので、海上で発生した雲がかかり続け、曇りや雨の日が多くなっているのです。

 日本の天気分布は、例年の冬のように、晴れることが多い太平洋側の地方と、雨や雪が降ることが多い北日本と日本海側の地方、曇りや雨の日が多い南西諸島の3つに分けられる季節になりました。

タイトル画像、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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