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まだまだ台風シーズン 今週も小笠原近海で発生した台風17号が接近

饒村曜気象予報士
台風16号の雲と熱帯低気圧の雲(9月25日21時)

移動性高気圧

 台風15号から変わった温帯低気圧や前線の影響で、9月24日(土)は静岡県から北日本では大雨となりましたが、翌25日(日)になると移動性高気圧に覆われ、全国的に秋晴れが広がりました。

 大陸からの高気圧で、乾燥していますので、昼間はカラッとした暑さとなりました。

 9月26日(月)の週明けも、全国的に広く日ざしが届き、真夏日となる所もある見込みです(図1)。

図1 予想天気図(9月26日9時の予想)
図1 予想天気図(9月26日9時の予想)

 ただ、移動性高気圧が通過したあとは、気圧の谷や湿った空気の影響も受けて大気が不安定となり、九州から雲が厚くなり、午後からは九州を中心に雨となる見込みです。

 そして、秋雨前線が次第に顕在化し、9月27日(火)は東日本~西日本では雨の予報です(図2)。

図2 各地の週間天気予報(数字は最高気温の予報)
図2 各地の週間天気予報(数字は最高気温の予報)

 ただ、この雨の予報は不確実性の高い予報です。

 というのは、小笠原近海で台風17号が発生し、東日本に接近してくるからで、台風の進路によっては、天気が大きく変わるからです。

台風17号の発生

 気象衛星画像では、フィリピン近海に非常に強い台風16号の雲と、小笠原近海には熱帯低気圧の雲があります(タイトル画像参照)。

 非常に強い台風16号は、西進を続け、南シナ海を通ってインドシナ半島に上陸し、9月29日(木)にはタイで熱帯低気圧に変わる見込みですので、日本への影響はありません。

 しかし、小笠原近海の熱帯低気圧は、26日(月)には父島の南で台風に発達し、北西進を続けて小笠原諸島の西に達し、そこから向きを北東に変え、日本の東を北上する見込みです(図3)。

図3 台風16号と熱帯低気圧の進路予報と海面水温(9月25日21時)
図3 台風16号と熱帯低気圧の進路予報と海面水温(9月25日21時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください

 令和4年(2022年)は、6~8 月の日本近海の平均海面水温が記録的に高くなっています。このため、9月に入り、台風14号など、日本の近くで台風が発達したのですが、同時に、台風が海面をかき回して海面水温を少し低下させています。

 台風15号は、台風14号などによって海面水温が下げられたあとの海域を通過しましたので、台風とはなりましたが、暴風域を持つまでは発達しませんでした。

 しかし、台風15号は、北側に強い雨雲を伴って北上してきましたので、台風接近の前から東日本の太平洋側では所により大雨となっています。

 特に静岡県では、記録的短時間大雨情報が16回も発表されるなど、9月の平年1か月分の雨量の約1.5倍の400ミリ以上の雨が1日で降っています。

 台風14号や台風15号が海の水をかき回した後ですので、海面水温が低くなっていますが、それでも台風が発達する目安とされる海面水温27度は上回っていますので、台風に発達するという予想です。

 しかし、秋台風で多くあるように、日本列島上にある秋雨前線を刺激して大雨を降らせる可能性がありますので、気象情報に注意してください。

【追記(9月26日11時)】

 小笠原近海の熱帯低気圧は、9月26日9時に、父島の南南東約420キロで台風17号に発達しました。

令和4年(2022年)の台風

 フィリピンの東海上では、インド洋から南シナ海を通ってやってくる西風と、太平洋高気圧の南へりをまわる東風がぶつかり、モンスーントラフと呼ばれる気圧の低い領域ができています。

 ここで、熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するのですが、ラニーニャ現象が起きると、モンスーントラフの位置が平年より北西にずれます。

 このため、ラニーニャ現象のおきている今年、令和4年(2022年)8月から9月の台風の発生場所は、例年より北西、つまり、日本に近い海域にずれています(図4)。

図4 令和4年(2022年)の台風発生海域(丸数字は台風番号)
図4 令和4年(2022年)の台風発生海域(丸数字は台風番号)

 日本に近い海域での発生ですから、日本に影響する可能性は高くなります。事実、令和4年(2022年)の台風は日本の近くで発生し、日本に毎週のように影響しました。

 そして、台風17号も、小笠原近海という日本に近い海域で発生し、日本に影響する可能性があります。

10月も台風シーズン

 台風の統計がある昭和26年(1951年)から令和3年(2021年)までに209個の台風が上陸していますが、上陸数が一番多いのは8月で、9月、7月の順におおくなっています(図5)。

図5 台風の月別上陸数
図5 台風の月別上陸数

 しかし、平成13年(2001年)以降の台風上陸数をみると、少し様相が違います。

 9月に上陸した台風の数が、ほぼ8月に上陸した台風の数に近くなっていますし、10月に上陸した台風の数は、7月並みの上陸数となっています。

 つまり、秋に上陸する台風が増えているのです。

 9月から10月の台風は、日本の南の海上で十分に発達してから北上し、秋雨前線を刺激して大雨になることが多く、大災害が発生しやすいという危険性があります。

 このため、台風というと上陸数の多い8月ではなく、9月というイメージがあるのです。

 10月までは台風シーズンですので、台風17号だけでなく、それ以後の台風についても引き続き警戒が必要です。

タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図4、図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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