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動きの遅い台風12号に厳重警戒 広い範囲に暖湿気を送り込みほぼ全国的に大気不安定・台風14号も発生

饒村曜気象予報士
沖縄県石垣島久保崎灯台(写真:イメージマート)

台風12号がゆっくり北上

 令和4年(2022年)9月12日12時頃、ゆっくり北上してきた強い台風12号が沖縄県先島諸島の石垣島付近を通過し、東シナ海に入っています(図1)。

図1 沖縄県の解析雨量(9月12日12時)
図1 沖縄県の解析雨量(9月12日12時)

 石垣島付近を通過後も、台風12号の動きは遅く、先島諸島では、暴風が吹き続け、強い雨が断続的に降って積算雨量がすでに400ミリを超えています(図2)。

図2 48時間降水量(9月13日までの48時間)
図2 48時間降水量(9月13日までの48時間)

 気象衛星でも、レーダーでも台風の眼がはっきり見えるほど発達している台風12号ですが、台風が存在する海域は、海面水温が発達の目安である27度より高い28度位ですので、急激には衰えにと考えられます。

 台風12号は今後も強い勢力を維持したまま石垣島近海を非常にゆっくりと北上する見込みです(図3)。

図3 台風12号の進路予報と海面水温(9月13日0時)
図3 台風12号の進路予報と海面水温(9月13日0時)

 台風に関する情報は最新のものをお使いください

 暴風域に入る確率を見ると、与那国島地方が50パーセント以下になるのは9月14日朝、石垣市では9月14日昼過ぎです(図4)。

図4 沖縄県石垣市と与那国島地方が暴風域に入る確率
図4 沖縄県石垣市と与那国島地方が暴風域に入る確率

 先島諸島では、14日(火)は午前中を中心に暴風に警戒が必要です。

 また、これまでの大雨に加え、150ミリ以上の大雨が降ると予想されていますので、風や雨に厳重な警戒が必要です。

 大気の状態も非常に不安定となっているため、雷を伴った非常に激しい雨や、竜巻などの突風にも注意が必要です。また高潮が発生するおそれもあります。

全国的に大気不安定

 台風12号の直接的な影響は南西諸島だけですが、台風周辺の暖かくて湿った空気が太平洋高気圧の縁辺を回るように西日本から東日本に流れ込んでいます。

 本州付近の上空約5500メートルには、氷点下6度以下の寒気が残っていますので、日中の気温上昇も加わると大気の状態が非常に不安定となって積乱雲が発達し、局地的な豪雨や落雷、竜巻などの突風が吹く恐れがあります(図5)。

図5 発雷確率(9月13日夕方)
図5 発雷確率(9月13日夕方)

 また、北海道では上空約5500メートルで氷点下12度の寒気が通過し、サハリン付近の低気圧に向かって暖かくて湿った空気が竜にしますので、ほぼ全国的に大気が不安定となります。

 台風12号に近い沖縄厳重警戒ですが、台風から離れている地方でも注意が必要です。

台風14号の可能性は?

 9月12日9時にウェーク島近海で発生した台風13号は、日本のはるか東を北上して、16日(金)にはアリューシャンの南で温帯低気圧に変わる予想です。

 日本への影響はないと考えられますが、問題は、台風12号と台風13号の間、日本の南にある熱帯低気圧です(図6)。

図6 台風12号と台風13号の間にある熱帯低気圧の雲(9月13日2時)
図6 台風12号と台風13号の間にある熱帯低気圧の雲(9月13日2時)

 台風になるかどうか、現時点でははっきりしていませんが、台風に発達したとなると、台風14号になり、台風が3個並ぶことになります。

 日本の南の熱帯低気圧は、今の所、南西に動いていますが、いずれ、台風12号や台風13号のように北上すると思われます。

 台風に変わって北上すると、すぐに西日本から東日本の太平洋側の地方に影響が出てきます。

 台風12号の動向だけでなく、その東にある熱帯低気圧の動向にも注意が必要です。

【追記(9月13日9時)】

 気象庁は、日本の南の熱帯低気圧に対し、24時間以内に台風になると発表しましたので、図7を追加し、タイトルを一部変更しました。

 台風14号が発生すると、日本列島に暖かくて湿った空気をより多く流入させますので、大気はより不安定となりますので、広い範囲で注意が必要です。また、沖縄と西日本では、今後、台風14号の接近にも注意が必要です。

図7 日本の南の熱帯低気圧の進路予報と気象衛星から見た雲(9月13日6時)
図7 日本の南の熱帯低気圧の進路予報と気象衛星から見た雲(9月13日6時)

図1、図2、図3、図4、図6、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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