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台風11号は12号になりかけた雲も取り込んで発達 沖縄近海で移動が遅くなって大きな予報円に

饒村曜気象予報士
台風11号の位置と衛星画像(8月30日0時)

台風11号の発達

 暴風域を伴った非常に強い台風11号が、小笠原諸島を通過し、沖縄地方に向かって進んでいます(図1)。

図1 台風11号の進路予報と海面水温(8月30日3時)
図1 台風11号の進路予報と海面水温(8月30日3時)

 台風に関する情報は、最新のものをお使いください

 気象庁では、台風11号が発生した8月28日15時の時点では、この台風は暴風域を持つほどには発達せず、西日本に接近する頃には、熱帯低気圧に衰えると見ていました。

 台風進路の海面水温は、台風が発達する目安とされる27度を上回る30度位でしたが、台風11号の南西側に積乱雲の塊があり、熱帯低気圧に発達、場合によっては台風12号になる可能性があったからです(タイトル画像参照)。

 このため、台風11号と、台風12号になるかもしれない雲の塊の間で、台風のエネルギー源である水蒸気を奪い合う形となり、どちらも、あまり発達しないと考えられたからと思います。

 しかし、ここへきて、台風12号になりかけた雲も取り込み、台風11号が発達してきました。

 予想天気図では、台風11号の等圧線が南側に大きく垂れ下がっています(図2)。

図2 予想天気図(8月30日9時の予想)
図2 予想天気図(8月30日9時の予想)

 この垂れ下がったところが、台風12号になりかけた残骸です。

 そして、西進して沖縄に向かっています。

沖縄近海での減速

 台風11号は、沖縄近海に達した頃から速度が遅くなる見込みです。

 このため予報円が大きくなり、重なって見にくくなります。

 この時に役立つのが、3時間毎に予報されている暴風域に入る確率です(図3)。

図3 大東島地方と沖縄本島南部が暴風域に入る確率(8月29日21時)
図3 大東島地方と沖縄本島南部が暴風域に入る確率(8月29日21時)

 大東島地方や沖縄本島南部で、暴風域に入る確率が一番高い時間帯が、おのおのの台風11号が再接近する時間帯です。

 また、沖縄本島南部で、再接近の時間帯か過ぎても、暴風域に入る可能性がなかなか小さくならないのは、台風がすぐには去らないことを示しています。

 那覇の16日先までの予報を見ると、暴風域マークが4日続きます(図4)。

図4 那覇の16日間先までの天気予報
図4 那覇の16日間先までの天気予報

 沖縄では、強い風や雨が続きますので、厳重な警戒が必要です。

 また、沖縄近海で停滞した台風が、いつ北上するかということは、非常に難しい予報です。

 西日本では、台風予報の誤差が非常に大きいことを考え、早めの対策をお願いします。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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