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群馬県伊勢崎で40.2度・東京で最速の猛暑日 全国的に「記録的に早い梅雨明け」か「長い梅雨の中休み」

饒村曜気象予報士
冷房がついているのに暑い女性のイラスト(提供:イメージマート)

伊勢崎で40度超えと東京で最速の猛暑日

 令和4年(2022年)6月25日は、本州上にあった梅雨前線は消え、日本海から南下してきた寒冷前線も次第に弱まって停滞前線に変わっています(図1)。

図1 地上天気図(6月25日15時)
図1 地上天気図(6月25日15時)

 日本列島は、高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が流入したため、東海から西日本は、所によって雷を伴った豪雨が降りました。

 しかし、東北南部から東日本にかけては、晴れて強い日射があったことから、関東地方を中心に、全国64地点で最高気温が35度以上の猛暑日を観測しました。

 気象庁で気温を観測しているには914地点ですので、全国の約7パーセントが猛暑日で、これは、今年最多です(図2)。

図2 全国の夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~6月)
図2 全国の夏日と真夏日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)5月~6月)

 最高気温が30度以上の真夏日は472地点(約52パーセント)、25度以上の夏日は852地点(93パーセント)と、これらも今年最多でした。

 また、関東地方では山越えの気流となったこともあって、より一層気温が高くなり、群馬県伊勢崎市では最高気温が40度を超えましたが、6月に40度を超したのは初めてです。

 これまでは、平成23年(2011年)6月24日に埼玉県の熊谷で観測した39.8度が6月の記録でした(表1)。

表1 全国の6月の最高気温の記録
表1 全国の6月の最高気温の記録

 さらに、東京では、最高気温35.4度を観測し、気象観測を始めた明治8年(1875年)以降、一年で最も早い猛暑日となりました(表2)。

表2 東京の早い猛暑日
表2 東京の早い猛暑日

 「三八豪雪」と呼ばれる日本海側の大雪など、各地で異常気象が頻発した昭和38年(1963年)を除くと、一年で最も早い猛暑日の記録は、最近観測されています。

 梅雨期間は、太陽高度が一年で一番高いこともあり、梅雨の間の晴天時には真夏のような気温になることは珍しくありませんが、令和4年(2022年)6月25日の暑さは記録的な暑さでした。

太平洋高気圧とチベット高気圧

 本州を南下している前線は、次第に消滅し、太平洋高気圧が日本付近をおおうようになるため、6月26日以降も記録的な暑さが続く見込みです。

 これは、日本付近の上空は、夏の主役の太平洋高気圧に広く覆われ、その上をチベット付近にあるチベット高気圧が東の方に張り出しているからです(図3)。

図3 予想地上天気図(右)と予想高層天気図(左下は上空約6000メートル・左上は上空約10000メートルの天気図)
図3 予想地上天気図(右)と予想高層天気図(左下は上空約6000メートル・左上は上空約10000メートルの天気図)

 真夏の晴天が続いている時の天気図となっており、例えると、日本付近は二つの高気圧によって布団の二枚重ね状態となっていますので、しばらくは雨が降りそうもありません。

 各地の10日先までの天気予報によると、東日本から西日本、沖縄・奄美地方は、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性がほとんどない曇り)が続きます(図4)。

図4 各地の10日先までの天気予報
図4 各地の10日先までの天気予報

 梅雨明けしているのは、沖縄・奄美地方だけですが、天気図からみると、梅雨明け後の真夏の様相ですので、気象庁は「記録的に早い梅雨明け」を発表するかもしれません。

 ウェザーマップの16日先までの東京の天気予報では、6月26日から7月11日まで連続してお日様マークがあり、黒雲マークは6月26日と27日しかなく、6月28日以降は白雲マークです(図5)。

図5 東京の16日先までの天気予報(ウェザーマップによる)
図5 東京の16日先までの天気予報(ウェザーマップによる)

 降水の有無の信頼度が、5段階で一番低いEや、二番目に低いDが多い予報ですが、晴れの日が続くという予報です。

 それも、気温が高い晴れの日です。

 関東甲信地方が梅雨入りした6月6日以降は、最高気温、最低気温ともに平年を下回ることがあったのですが、ここへきて、ともに平年をかなり上回るようになってきました(図6)。

図6 東京の最高気温と最低気温の推移(6月26日以降はウェザーマップの予報)
図6 東京の最高気温と最低気温の推移(6月26日以降はウェザーマップの予報)

 6月25日に雨がほとんど降らなかった関東甲信地方は、「記録的に早い梅雨明けです」ではなく、「梅雨が明けていました」と過去形で発表する可能性さえあります。

 梅雨明けを発表しない場合は、「長い梅雨の中休み」ということになりますが、いずれにしても、気象庁の予報官は難しい判断を迫られています。 これに対し、東北地方は、お日様マークが多いものの、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)も多い予報です。

 空梅雨のような天気予報です。

 また、北海道は傘マーク(雨)や黒雲マークの日が続くという梅雨のような予報です。

 気象庁は、現在は、北海道に対しては、梅雨がないとして梅雨入りや梅雨明けを発表していませんが、昔は北海道も梅雨入り、梅雨明けを発表していました

 北海道も梅雨を考える時代に戻ってきたのかもしれません。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図6の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表1,表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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