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西日本で滅多にない低温と北陸の大雪 クリスマスのあとは強い年末寒波

饒村曜気象予報士
ソテツの葉っぱに積もる雪(写真:satoshi_0_0v/イメージマート)

今冬の寒気

 11月中旬以降、しばしば寒気が南下し、その度に冬日(日最低気温が氷点下)を観測する地点が増え、夏日(日最高気温が25度以上)の日はほとんどなくなっています(図1)。

図1 冬日と夏日の観測地点数の推移
図1 冬日と夏日の観測地点数の推移

 12月19日は、南下した寒気によって気温を観測している全国920か所のうち、約72パーセントにあたる662地点で冬日を観測しました。

 しかし、北日本を除いて寒気の南下が一時的で、寒さは長続きしませんでした。

 しかし、クリスマス後に南下してくる寒気は、これまでの寒気とは違い、長びく見込みです。

 気象庁では、「周りの空気に比べて低温な空気」を寒気、「広い地域に2~3日、またはそれ以上にわたって顕著な気温の低下をもたらすような寒気が到来すること」を寒波と定義していますので、まさに寒波襲来です。

少し特殊な西高東低の天気図

 寒波の南下に伴い日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となる見込みですが、冬型といっても、ちょっと特殊です(図2)。

図2 予想天気図(12月25日21時の予想)
図2 予想天気図(12月25日21時の予想)

 等圧線の間隔を見ると、混んでいるのは北海道の西海上から北日本と、日本海西部から九州にかけての2か所あります。

 この2か所では、強い風が吹いて、それだけ強い寒気が南下している場所です。

 さらに、日本海西部には、気圧が低くなっている所があります(図2の書き込み参照)。

 「日本海寒帯気団収束帯」と呼ばれる現象で、北朝鮮と中国の国境をまたぐ山脈で季節風が「北回りの風」と「南回りの風」に分かれ、それが日本海西部で合流することで生じます。

 ここでは、上昇流が発生するため、発達した帯状の雪雲が形成されます。

 日本海寒帯団収束帯が陸地にかかっている所では、次々と雪雲が流れ込み、短時間で多くの雪が降る見込みです。

 予報では、日本海寒帯団収束帯は、最初は山陰地方にかかりますが、上空の寒気の強まりと共に北陸地方に北上してくる見込みです。

 このため、北日本から西日本の日本海側を中心に荒れた天気や大雪となるおそれがあります。

 また、太平洋側でも山地を中心に大雪となり、平地でも積雪となる恐れもあります。

 国土交通省は、12月24日に「大雪に対する国土交通省緊急発表」を行い、大雪による大規模な車両の立ち往生を防ぐために、冬タイヤの装着やチェーンの携行と早めの装着、広域迂回の実施や通行ルートの見直し、タイヤの摩耗劣化に注意などを呼び掛けています。

 これは、国土交通省の水管理・国土保全局防災課、大臣官房参事官(運輸安全防災)、道路局環境安全・防災課、自動車局安全政策課、気象庁が連名で発表したもので、それだけ危機感を持っているのです。

大雪の予報

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までの警報級の現象がおきる可能性について、「高」「中」の2段階で発表しています。

 これによると、12月26日から27日は北日本から西日本の広い範囲で大雪警報を発表する可能性が「中」となっています(図3)。

図3 大雪に関する早期注意情報
図3 大雪に関する早期注意情報

 また、新潟、富山、福井、鳥取の各県では「高」となっています。

 現在の段階では正確に降雪量を見積もることは難しいですが、北日本から西日本の日本海側を中心に降雪量が増え、多くの人が移動する年末の各種交通機関に影響が出ることは十分に考えられます。

上空の寒気と九州の気温

 寒気の強さの目安として、上空約5500メートルの気温を使うことがあります。

 この高さでの気温が氷点下36度以下なら大雪の目安となりますが、今回の寒気は、この目安より低い、氷点下42度以下の寒気が北日本まで南下してきます(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温分布(12月26日の朝)
図4 上空約5500メートルの気温分布(12月26日の朝)

 北海道東部では氷点下45度以下で、真冬でもめったに見られない低い温度です。

 しかも、真冬とは違って地上付近の気温はまだ冷え切っていませんので、上下の温度差は真冬の時より大きくなり、激しい現象が起きる可能性があります。

 ただ、上空約5500メートルの気温分布でみると、氷点下30度以下は、東日本の日本海側までしか南下してきません。

 寒気の強さを見る目安には、上空約1500メートルの気温もあります。

 上空約1500メートルで氷点下6度なら、降水現象があれば平地でも雪が降る目安、氷点下12度なら大雪が降るというものです。

 上空1500メートルの気温で見ると、西日本の南海上から東日本の南海上まで氷点下6度以下となる予想です(図5)。

図5 上空約1500メートルの気温分布(12月26日の朝)
図5 上空約1500メートルの気温分布(12月26日の朝)

 このように、上空の寒気を2つの高さで見ているのは、南下してくる寒気が立体的なものであるからです

 例えば、九州を通る東経130度線にそって上空約1500メートルの気温を見ると、12月25日朝には中国東北部で氷点下30度以下という寒気が、26日の朝には氷点下24度位に下がると同時に、氷点下6度以下という寒気が南へ大きく南下してきます(図6)。

図6 東経130度線上における上空約1500メートルの気温の変化
図6 東経130度線上における上空約1500メートルの気温の変化

 地表に近い所で、冷たい空気が南下してきますので、12月26日は、鹿児島でも最高気温が4度で雪も降るという、九州では記録的に寒い一日となりそうです。

 厳しい寒さの週明けですが、その後、少し気温を戻して年末年始となる予報です。

 最新の気象情報の入手に努め、不要不急な外出を避け、外出が必要な場合は十分な時間的余裕を持つなど、年末年始の行動に反映させてください

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

図3、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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